トヨタとパナソニックが合弁、国内最大のハウスメーカーをつくる理由

トヨタとパナソニックが合弁、国内最大のハウスメーカーをつくる理由

2019.05.09

トヨタ自動車とパナソニックが住宅事業の統合を発表

本業は自動車と家電、なぜ住宅で組むことになったのか

世界中の誰も真似できない、新時代の住宅会社を目指す

トヨタ自動車とパナソニックは、街づくり事業に関する合弁会社「プライムライフテクノロジーズ」を2020年1月7日に設立する。トヨタグループとパナソニックグループの住宅事業を統合した新会社で、ハウスメーカーとして国内最大手に躍り出る。

出資比率はトヨタ自動車とパナソニックが対等の持分とするほか、三井物産の出資も予定されている。新会社の社長には、パナソニックの北野亮専務執行役員が就任する。

トヨタ自動車とパナソニックが住宅事業を統合する

今回の会社設立に伴い、パナソニックの100%出資会社であるパナソニックホームズは、2019年度第4四半期にパナソニックの連結子会社から外れることになる。また、ミサワホームは、トヨタホームの完全子会社となり、新会社は、ミサワホームの株式を買い取る。

新会社では、トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックホームズ、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の5社の事業を統合し、住宅、建設、街づくり事業を推進する。トヨタ自動車が進めるモビリティサービスへの取り組みと、パナソニックが進める「くらしのアップデート」の取り組みを融合させて、街全体での新たな価値の創出を目指すという。

両社では、車載用角形電池事業に関する合弁会社を2020年末までに設立することも発表しており、この会社では車載用角形リチウムイオン電池や全固体電池に関する事業のほか、次世代電池に関する研究、開発、生産などを行う。今回はこれに続く新会社の設立だ。両社の提携範囲が住宅、街づくり分野にまで広がり、新たなビジネスの創出を模索していくことになる。

自動車メーカーと電機メーカーが「街づくり」で組む意味

パナソニック 北野亮専務執行役員

社長に就任するパナソニックの北野氏は、新会社の狙いを「トヨタとパナソニックのノウハウを活用しながら、街全体でのくらしの新たな価値を創出することにある」と話す。提携により「新たなモビリティサービスカンパニーを目指すトヨタと、くらしアップデート業を目指すパナソニックのテクノロジーやノウハウを最大限に活用することで、他に類をみない、街全体での新たな価値を創出する」とし、不動産開発や建物の建設、リアルな空間を構成する製品やシステムなどのデバイス、それらを支えるデータ、サービスなどのテクノロジーを融合して、街全体に対し住宅、建設、街づくりの3つの事業を推進する。また、新会社では「両社の新たなビジネスの実証の場、ショーケースにする」ことにチャレンジするという。

新会社は「街全体でのくらしの新たな価値創出」を目指す

北野氏は新会社の目指す街づくりを「スマートライフタウン」と表現し、「最先端の技術で、高度に最適化され、いつまでも安心、快適、便利なくらしを提供するとともに、日々、アップデートし、住む人に満足を提供し続けることができる街づくりを目指す。戦闘力をあげ、生産性を高めることを両立していくことが大切である」などと述べる。

トヨタ自動車 白柳正義執行役員

トヨタ自動車の白柳正義執行役員は、新会社について「昨日(5月8日)発表した2018年度連結決算の席において、社長の豊田(=豊田章男社長)から、これからは人々のくらしを支えるすべてのモノやサービスが、情報でつながるコネクティッドシティの発想でビジネスを考えていくことになると話した。街づくり事業に関する(今回の)合弁会社の設立は、コネクテッドシティをパナソニックと共同で実現するためのもの。不動産開発や住宅開発、建設に関するデベロップメントとテクノロジーの融合を進めことになる」と語る。その上で、「トヨタは自由で、安心、快適なモビリティ社会を目指し、新たなモビリティサービスの創出に取り組んでいく。パナソニックは、住宅や街などのくらし空間に関するテクノロジーを数多く持つ。トヨタとパナソニックから、モデリティやくらし空間に関するテクノロジーを提供し、街全体で新たなくらし価値を創出できるはずである」と、合弁会社設立の目的を説明した。

新会社の住宅、建設、街づくりという3つの事業の基本方針についても言及した。

住宅事業では、トヨタのトヨタホーム、ミサワホームに、パナソニックのパナソニックホームズという、あわせて3つのハウスメーカーそれぞれのブランドが持つ個性を光らせるとともに、調達、製造、物流、CS、施工、設計、営業支援といったバックヤード部分は共通化することで、戦闘力の強化と、業界トップクラスの競争力を実現するという。

建設事業では、それぞれがメーカーとして培ってきたノウハウを結集、活用し、省人化、自動化による競争力強化を図る。

街づくり事業では、マネジメントサービスの高度化により、不動産価値の既成概念を超えた取り組みを開始する。例えば住宅には不向きとされていた土地や、競争力の低い土地の高付加価値化を実現していく。そして長期的、永続的な街づくりを進め、このノウハウをもとに、将来は海外にも展開していくことになるという。

今でも競争力が低いままになっていた土地の高付加価値化

また北野氏は合弁会社の事業方針について、「街づくりの規模が大きくなるに従って、(今後さらに)ほかの企業との連携も必要になってくるだろう。個別の案件ごとに最適なパートナーと組むなど、エコシステムについては、弾力的に考えるべきである」と話す。

異例のタッグ、実は両社の創業者の意志も影響?

パナソニックとトヨタの住宅事業での組み合わせは、同じ製造業である両社が、長年に渡り、もともとの本業ではない住宅事業を展開してきたことと、近年、その住宅事業で本業との連動が進んでいる中で、両社の住宅事業が同じ方向性を持ち始めていたことが背景にある。

パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、「家づくり、街づくりほど大事な仕事をない」と発言していたという。またトヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏は遺訓で、「日本の住まいをよくしたい」としており、こうした2人の創業者の住宅に対する共通的な思いが、今回の新会社設立につながっているともいえる。

パナソニックの北野氏は、「トヨタとパナソニックは、同じ製造業であるが、違う経営スタイルを持っている。だが、トヨタは新たなモビリティ社会を築き、パナソニックは、くらしアップデート業を目指す上で、家や街を重要な要素であると考えている。経営の仕方が異なる企業だが、目指す立地は同じ。合弁会社設立に向けては、極めてスムーズな話し合いができた」とし、対するトヨタ自動車の白柳氏も、「トヨタのトップが、パナソニックと組みたいと思ったことが大きい。パナソニックとは長いつきあいがあり、信頼感がある。モノづくりの会社のなかで、住宅事業を持っている会社同士であり、同じ悩み、同じ方向性の事業戦略を持ち、共感できるものがあった」と語る。

100年に一度の改革が、住宅の世界にも

注目されるのは、新会社の取り組みのポイントが、これまでの「住宅」の価値観を変える挑戦になっているという点だ。

トヨタ自動車では、2020年代前半には、特定地域において自動運転レベル4の実用化を視野に入れた取り組みを行っている。そして2020年代半ばまでには、移動、物流、物販など多目的に利用できるモビリティサービス専用電気自動車、「e-Palette」を活用したMaaS事業を開始する予定である。

自動運転などのテクノロジーの高度化により、人々の移動手段に大きな変化が訪れ、それによって、街そのものが変化しようとしている。トヨタの白柳氏は、「これまでの住宅は、駅や都市には近いが家が狭い、あるいは駅から遠いが、家は広いといったように、快適さと便利のどちらかを犠牲にしなくてはならなかった。だが、テクノロジーと高度化が、快適と便利の両立を可能にする」と展望する。「通信技術の発達によりオフィスに行く必要がなくなり、モビリティサービスの発達で移動が快適になり、近くに店がなくても買い物ができるようになる」などと、大きな変革期が訪れていることを指摘。「自動運転と街づくりを連携することで、新たな価値を創出できる」とした。

また、パナソニックの北野氏は、「パナソニックが持つくらしの接点を、街づくりにフィットさせていくことという手法は、世界中の不動産会社や、住宅会社にはできないこと」と強みを強調する。そして、これからの新たな街は鉄道軸ではなく、クルマの進化に応じたものになるとし、「これはトヨタの領域であり、これも世界中のどの不動産会社、住宅会社にもできないやり方である」とする。

自動車メーカーと家電メーカーが住宅で大改革を目指す

自動車メーカーと家電メーカーとの連携によって、これまでにはない新たな住宅の価値を創出するという異例の挑戦だ。理想の実現には長期的な視野が必要となるだろう。その一歩を、具体的な「街づくり」という形にして踏み出すことができるかが、新会社の最初の成果になるといえそうだ。

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NewsInsight 更新終了のお知らせ

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2019.06.17

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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu