50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

2019.05.10

日産スポーツカーの2枚看板は誕生から半世紀が経過

「GT-R」は高性能に、「Z」は名作をオマージュ?

なかなか登場しない新型モデル…次は電動化の可能性も

日産自動車は先頃、スポーツカーの2枚看板である「GT-R」と「フェアレディZ」の生誕50周年記念モデルを発表した。近年は電気自動車(EV)と運転支援システムに注力している印象の日産だが、同社にとって重要なヘリテージでもあるスポーツカーを今後、どのように取り扱っていくのか。これを機に考えてみたい。

日産は4月17日、同社の情報発信拠点である東京・銀座の「NISSAN CROSSING」(ニッサン クロッシング)にて、「GT-R」「GT-R NISMO」の2020年モデルと「GT-R」「フェアレディZ」の50周年記念モデルを報道陣にお披露目した(手前が「GT-R」、奥が「フェアレディZ」の50周年記念モデル、撮影:原アキラ)

レースの知見で高性能化を果たした「GT-R NISMO」

発表会場でアンベールされたのは、ホワイトカラーに身を包んだ高性能な「GT-R NISMO」。最新モデルで日産は、レースの現場からのフィードバックを反映し、ターボの改良、カーボンパーツの拡大、カーボンブレーキの導入という3点の改良を行った。

レースで磨いた技術を応用した「GT-R NISMO」の2020年モデル

新型のターボチャージャーは、日産がGT3のレースカーで使用しているもの。どんな車速でも、より素早く加速できるエンジンレスポンスを実現することを目指して採用した。具体的には、タービンの羽根の枚数を11枚から10枚に減らして慣性重量を抑えるとともに、流体力学のシミュレーションにより羽の形状を変更することで、流量の減少を防ぐことにも成功したそうだ。

ターボチャージャーはレースカーと共用する

また、エンジンフードとフェンダー、ルーフはカーボン製とし、車両の重心位置から遠い位置にあるパーツを軽くすることで、ハンドルの動きに対する車体の反応を向上させた。この改良により、コーナーでのスピードが向上。合計で10.5キロの軽量化も達成した。

新開発のカーボンセラミックブレーキは、世界最大級の直径410mmを誇る。1,000度の高温にも耐えられるイエローカラーの高剛性キャリパーも新たに採用した。エクステリアでは、フロントフェンダー左右にエアアウトレット(空気の排出口)を設けることで、時速250~300キロという超高速域でのダウンフォース(車体を下向きに押さえる力)を増やし、タイヤのグリップと接地感を向上させている。

フェンダーにあるサメのエラのようなものがエアアウトレット。イエローのブレーキキャリパーがアクセントになっている

このように、さらなる高性能化を果たした「GT-R NISMO」の2020年モデル。先行予約は2019年5月に始まる。価格は未発表だ。

新色「ワンガンブルー」をまとう「GT-R」

一方の基準車(NISMOではないGT-R)は、匠が1台ずつ手で組み上げる排気量3.8リッターのV型6気筒ツインターボエンジンに、NISMOモデルで使用してきた「アブレダブルシール」を採用したターボチャージャーを搭載。吸入した空気の漏れを最小限にすることで、ドライバーの加速意図に即座に応えるレスポンスを実現した。また、コーナリング中のシフトスケジュールをさらにアグレッシブに設定したほか、確かなブレーキの効きを感じるよう、ブースターの特性をチューニングしたという。

「GT-R」の2020年モデル(画像提供:日産自動車)

青く輝くチタン製のエキゾーストフィニッシャー(マフラー)は、職人が1つずつ手作りで加工する。ホイールには新デザインを採用。ボディカラーには青色の透明ベースに光干渉顔料を追加し、ベイエリアでの日没の余韻を感じさせる新しいボディカラー「ワンガンブルー」を設定した。

職人が1つずつ手作りで加工するエキゾーストフィニッシャー

「GT-R」の2020年モデルは2019年6月に発売となる。価格は1,063万1,520円~1,253万9,880円だ。

「GT-R」のルーツとなった“伝説のクルマ”

GT-Rのルーツといえば、プリンス自動車が日産と合併する前にデビューさせた、あの“伝説”のモデルから話を始めないといけない。それは、1964年の第2回「日本グランプリ」に登場した「スカイラインGT」だ。

プリンスは、「S50型」という1.5リッターの4気筒エンジンを搭載していた標準モデルのボンネットを約20センチ延長し、そこに上級モデル「グロリア」の2.0リッター直列6気筒エンジンを無理やり押し込み、レース用モデルとして「スカイラインGT」を生み出した。グランプリでのライバルは、絶対性能に優れる独ポルシェのスポーツカー「904」。結果的にレースでは敗れたものの、その周回中に1周だけ、生沢徹がドライブするスカイラインGTが先頭を奪い、ポルシェを従えて走った姿は、鈴鹿サーキットに詰め掛けた大観衆を沸かせた。それが、“スカG”伝説の始まりというわけだ。

スカイラインは1969年にフルモデルチェンジし、そのトップモデルとしてデビューしたのが初代「スカイラインGT-R」(PGC10型)だった。このクルマは、日産が純レーシングカー「R380」用のGR8型エンジンを市販車向けに改良したS20型2.0リッター直列6気筒エンジン(最大出力:210ps)を搭載し、数々のレースに参戦。わずか2年10カ月のうちに50勝という“GT-R”伝説を作り上げた。雨中のレースとなった1972年の「富士300キロスピードレース」では、白×青、白×赤ボディのGT-Rが水煙を上げながら、富士スピードウェイの第1コーナー「30度バンク」を時速200キロで駆け抜けたが、このシーンは発表会場のスクリーンにも映し出されていた。

「スカイラインGT-R」のPGC10型(画像提供:日産自動車)

GT-Rの生誕50周年を記念した今回の「GT-R 50th Anniversary」は、そのレーシングカーをモチーフとしたツートンカラーが特徴だ。ベースとなっているのは、「GT-R」2020年モデルのプレミアムエディション。新色のワンガンブルーに高品質ホワイトステッカーを組み合わせたモデルは、ボディカラーとコーディネートしたブルースポークホイールを標準装備し、走行中は全体が青く見えるという。ボディカラーはこのほか、ブリリアントホワイトパール×レッドステッカー、アルティメットシルバー×ホワイトステッカーの組み合わせを用意する。

ワンガンブルーにホワイトステッカーを組み合わせた「GT-R 50th Anniversary」

リアには「GT-R 50th Anniversary」の文字をあしらったバッジとステッカーを装着。インテリアは上品なミディアムグレーの専用内装色とし、センターコンソールやメーター、シートなどに50周年を記念するロゴが入る。

「GT-R 50th Anniversary」の発売は2019年6月。2020年3月末までの期間限定モデルとなる。価格は1,319万2,200円~1,351万6,200円だ。

リアには50周年記念モデルであることを表すバッジとステッカーを装着

「フェアレディZ 50th Anniversary」は、伝説のレースカーデザイナーである米国のピート・ブロック率いるBRE(ブロック レーシング エンタープライズ)が製造した1970年の「Datsun 240Z BRE」を彷彿させるモデルだ。

エクステリアはブリリアントホワイト×バイブラントレッド、ブリリアントシルバー×ダイヤモンドブラックの組み合わせとし、50周年を記念するフロントフェンダーのステッカー、リアのバッジ、ホイールリムにレッドラインが加えられた19インチアルミホイールなどを装備する。

ブリリアントホワイト×バイブラントレッドの「フェアレディZ 50th Anniversary」

インテリアを見ると、センターストライプ入りアルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーをイメージさせる。このほか、専用カラーのシフトノブ、キッキングプレート、ステッチが配されたシートやドアトリムを採用。シートやシフトノブ周り、メーター内には50周年のロゴが入る。

「フェアレディZ 50th Anniversary」の発売は2019年夏頃。こちらも2020年3月末までの期間限定モデルだ。価格は未定となっている。

アルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーを想起させる

モデルチェンジから10年超、待たれる次世代モデル

発表会で車両の概要を説明したGT-R 2020年モデルの田沼謹一開発主管は、「GT-RもフェアレディZも、日産自動車のブランドシンボルであり、技術の日産の証です。半世紀もの長い間、多くの皆様にご支持いただいているこのブランドの、新たな歴史を積み上げたいと考えています」とコメント。また、あいさつのため登壇した日産の星野朝子専務執行役員は、「若い頃、GT-R(R32モデル)が買いたくて買いたくて、貯金通帳を散々にらんだ結果、残念ながら買えなかったんです」というエピソードを披露しつつ、GT-RとフェアレディZの2台は日産の情熱の極みであり、世界が憧れる存在だと胸を張った。

日産の星野専務(左)と「GT-R」2020モデルの田沼開発主管

ただし、現行のGT-Rは登場からすでに12年、フェアレディZは11年が経過している。インテリアのデザインなどを見ると、ひと時代前のモデルであることは明白な事実で、次世代モデルの登場が待たれることはいうまでもない。会場から質問のあったGT-Rの電動化について、田沼氏が「あらゆる可能性を探っている」と答えたのに対し、星野氏は「大いにありうる」と答えていたのは印象的だった。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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