苦手のズームも克服、なぜスマートフォンカメラの進化に力が入れられるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第38回

苦手のズームも克服、なぜスマートフォンカメラの進化に力が入れられるのか

2019.05.08

スマホのカメラ機能、急速な進化の背景に何が?

販売低迷のなか、差別化しやすい要素としてメーカーが注力

今後はゲーミングスマホが潮流になる可能性も

ここ最近、スマートフォンのカメラは目覚ましい進化を遂げている。最新機種では画像が崩れることなく10倍ズームを実現するなど、最大の弱点だったズームを克服する製品も出てきている。なぜ、スマートフォンメーカーはそこまでしてカメラに力を注ぐのだろうか。

デジカメ不要と感じさせる程の機能進化

カメラはスマートフォンの中でも人気機能の1つであり、現在は、スマートフォンで写真を撮り、SNSなどにアップするのは日常的なこととなっている。スマートフォンメーカーが以前よりもカメラ機能に力を注ぐようになった要因の1つだ。

中でも大きく進化してきたのが、暗い場所での撮影だ。スマートフォンはあまり明るいとはいえない室内で撮影することも多く、被写体が暗く写ってしまったり、ブレてしまったりすることが多かった。そうしたことからスマートフォンメーカーは、明るく撮影できるレンズを搭載し、さらに、素子が大きく光を多く取り込めるイメージセンサーを採用するなど、明るく撮影するための技術を次々と投入して弱点を克服してきたのである。

2018年発売の「Xperia XZ2 Premium」を使って暗い場所で動画撮影している所。2つのカメラを活用することで、静止画だけでなく動画撮影時も明るく撮影できるのが特徴だ

そしてもう1つ、大きな進化となったのがカメラの複眼化だ。特に2016年頃から、2つのカメラを搭載した「2眼化」が急速に進行した。2つのうち一方のカメラに被写体との距離を測る役割を担当させることで、一眼レフのようなボケ味のある写真を撮影できるようにするなど、カメラの表現力を大幅にアップすることに成功したのだ。

ボケ味のある写真の撮影ができる2眼カメラは、今やiPhoneをはじめ多くの機種に採用されている

さらに2018年半ば頃から増えつつあるのが、3つのカメラを活用した「3眼化」である。画角などが異なる3つのカメラを切り替えることで、等倍、0.5~0.6倍の超広角撮影、2~3倍の望遠撮影と、幅広いシーンでの撮影を可能にしている訳だ。

2019年に登場したファーウェイの「HUAWEI P30 Pro」や、OPPOの「Reno」などは、3眼カメラの1つに潜望鏡のような「ペリスコープ構造」のカメラを採用し、光学5倍相当の望遠カメラを実現している。それに加えて画素数の高いイメージセンサーを搭載し、撮影した写真の一部を切り取る「ハイブリッドズーム」によって、実質的に画質が落ちることなく10倍相当のズーム撮影もできるようになっている。

ペリスコープ構造で薄型ボディに光学5倍相当のカメラを搭載した、「HUAWEI P30 Pro」3つのカメラに、さらに深度測定用のカメラも搭載した4眼カメラを搭載している

スマートフォンのカメラがここまで来れば、もはやデジタルカメラは必要ないと感じる人も多いことだろう。だが人気の機能とはいえ、スマートフォンメーカーのカメラ強化へのこだわり具合は、ただ「人気の機能だから」というだけでは説明しきれない部分がある。

厳しい市況で高付加価値を重視した結果

スマートフォンメーカーのカメラ強化へこだわる理由として、これまで拡大一辺倒だったスマートフォンの販売が、落ち込みつつある背景があると見る。実際、ここ最近主要スマートフォンメーカーの業績を見ると、スマートフォン出荷台数の減少による業績の落ち込みが目立つ。

例えばアップルは2019年4月30日に発表した2019年第1四半期の決算で、iPhoneの売上高が前年同期比17%減となった。また同日に発表されたサムスン電子の2019年第1四半期決算でも、モバイル関連事業の営業利益は40%減となっている。ソニーやLGエレクトロニクスなどより下位のメーカーは一層厳しい状況となっており、市場縮小と競争激化で苦しんでいる会社が多い様子を見て取ることができる。

そのため既存の有力スマートフォンメーカーは、数を売らなければ利益が出ない低価格モデルよりも、付加価値を高め、高価格で利益が見込みやすいハイエンドモデルに力を入れる傾向にある。2018年の新機種の価格が全て10万円を上回ったアップルの施策などが、そうした動きを象徴しているといえよう。

そしてスマートフォンの付加価値を高める上で、多くの企業が目を付けているのがカメラだ。コモディティ化によって工夫できる余地がなく差異化が難しくなってきたスマートフォンだが、カメラ機能は人気が高いというだけでなく、複眼化などでまだ差別化できる余地がある。そうしたことから多くのスマートフォンメーカーは、カメラ機能の強化に活路を見出している訳だ。

もっとも、高付加価値化の追求はカメラだけに限らない。最近注目された、ディスプレイを直接折り曲げられる折り畳みスマートフォンもそうした施策の1つといえるが、より増えているのが「ゲーミングスマートフォン」。大幅に向上したスマートフォンの性能を生かし、カメラ同様に人気のゲームをプレイしやすい機種だ。

実際2018年には、エイスーステック・コンピューターがゲーミングスマートフォン「ROG Phone」を日本国内に投入して注目を集めた。また2019年に入ってからも、自動翻訳機などを手掛けるTAKUMI JAPANが、中国シャオミが出資しているBlack Sharkのゲーミングスマートフォン「Black Shark2」の国内販売を発表。日本でも徐々にその数が増え、認知が高まっているようだ。

TAKUMI JAPANが国内で販売する、シャオミ系企業が開発したゲーミングスマートフォン「Black Shark2」。高性能のチップセットの搭載だけでなく、タッチ操作時の反応速度なども強化されている

スマートフォンメーカーを取り巻く状況は今後も一層厳しさを増すことが予想されるだけに、高付加価値を追求する流れは今後も続くだろう。そうした中から新たな変革をもたらし、再びスマートフォン市場を活性化させる端末が登場することに、期待したい所だ。

関連記事
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu