教育環境変革の大きな“うねり”になるか!? インテルと内田洋行が協業

教育環境変革の大きな“うねり”になるか!? インテルと内田洋行が協業

2016.07.08

教育プラットフォームの変革をにらみ、IT関連企業の動きが慌ただしくなってきた。というのも、2011年より進められていた文科省による「学校における情報端末1人1台」などの実証研究の報告書がまとめられ、2019年までには全国の学校で情報端末1人1台の環境が整えられる方向にあるからだ。日本には小学校・中学校で約3万2,000校、高校まで含めると、4万校近くあり、これらが情報端末の整備を行うとなれば、巨大なマーケットが生まれることになる。

そんな情勢の中、インテルと内田洋行は、新たな教育プラットフォームの構築について協業すると発表した。ご存じのとおり、インテルはICT機器に使用される半導体最大手、内田洋行はオフィス環境・教育環境の整備を得意としている。

以前から教育面で協力した両社

インテル 代表取締役社長 江田麻希子氏

以前から両社は、教育プラットフォームの変革について協力関係にあった。2008~2009年に千葉県柏市立小学校など2校で、“PC1人1台”の共同実証実験を実施。2010年にも東京都の中央区立小学校で同様の実験を行った。また、内田洋行教育研究所が主催する「New Education Expo」においても、富士通などとともにインテルが特別協賛を行った。

インテル 代表取締役社長 江田麻希子氏は、情報端末1人1台は当然のこととして「IoTを活用した新たな教育プラットフォームを構築していく」と、“モノのインターネット”による教育環境について強調した。たとえば校内の電力管理、空調・CO2管理、体調・健康管理、監視カメラ・見守り支援といった、総合的な校内環境をIoTにより最適化、さらに収集したデータを活用することで校務の負荷軽減に期待できるという。

内田洋行 代表取締役社長 大久保昇氏

一方、内田洋行 代表取締役社長 大久保昇氏は、インテル製モジュールを内蔵した「百葉箱」のデモを披露。また、授業中に発生する、教員が話す時間や生徒が文字を書く時間を記録し、そのデータを分析して授業改善に活用する事例を紹介した。

さて、このようにICT設備が教育に導入されることで、生徒たちが能動的・主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」や、個々のレベルごとに最適な学習内容を提供する「アダプティブ・ラーニング」への活用が期待できる。

ICT機器をアクティブ・ラーニングに生かせるのか?

だが、問題が山積している。まずクリアしなくてはならないのが、教員が本当にICTを活用してこれらの教育を提供できるかだ。

ある教育関係者は「学校によってはICT設備を整えただけで、アクティブ・ラーニングへの対応は済んだと勘違いする場合がある」と指摘する。また、ある教員は「IT関連企業からハードウェアを導入するのはいいのだが、それを授業に生かすノウハウがこうした企業にはあまりない。そのため、アクティブ・ラーニングなどで機器を生かし切れない場合がある」と、問題提起する。

たとえば内田洋行が提供する「Future Class Room」。これは、産官学の実証実験を通じて得られた知見をもとに、ICTを活用したアクティブ・ラーニングなどに最適化された教室だ。筑波大学附属小学校がこのFuture Class Roomを採択し、「未来の教室」として活用している。この小学校の場合、教育方法における先進的な研究開発モデル校なので、アクティブ・ラーニングのノウハウが豊富だ。先進的な教室を導入しても、十分に機能を生かし切れる。

筑波大学附属小学校の未来の教室

教育格差を生みかねない問題

ところが、そうしたノウハウがない学校の場合、先進的な教室を設けても“宝の持ち腐れ”となりかねない。この問題が次の問題を生む。それは“教育の格差”だ。

2020年度からの大学入試改革により、現在のセンター試験は廃止され新たな試験方法が導入される。この新たな試験では、詰め込み型の知識ではなく、“知の応用力”が試される。ここ最近、さまざまな教育現場、企業からアクティブ・ラーニングという言葉をよく聞くようになったのは、この大学入試改革で試される能力を育てるといわれているためだ。アクティブ・ラーニングに慣れていない学校で教わった生徒と、熟知した学校で教わった生徒では、大学入試時に差がつく可能性がある。

内田洋行の大久保社長は「単に機器を納入しているだけではだめ。教員に対する研修もシッカリと対応していかなくてはならない」と念を押す。

文科省が目指す1人1台体制への移行、大学入試改革まであまり時間がない点も頭の痛いところだ。前述のとおり、3万以上の小中学校があり、新しい教育プラットフォームの導入が早い学校、遅い学校が生じてしまうだろう。この場合も教育の格差となりかねない。

いずれにせよ、教育改革には巨大なエネルギーが必要となる。たとえは悪いが、楽曲鑑賞がCDから音楽ファイルに移行したように、テレビ放送がアナログからデジタルに移ったように、“教育のフォーマットが変わる”ともいえそうだ。大久保社長は「今回2社の協業を発表したが、我々だけではなく他社を巻き込んだ強力なエコシステム構築が必要。この発表が、その“うねり”になれば……」と語った。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。