電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【前編】

電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【前編】

2016.01.14

2016年4月に開始される“電力小売自由化”に向け、市場へ参入表明している各企業の動きが慌ただしくなってきた。

今回自由化されるのは、一般家庭や小規模事業者、商店といった“低圧”に分類される部分。ちなみにオフィスビルや百貨店、大規模工場などの大口需要家向けの“特別高圧”、中規模ビルやマンション、スーパー、一般的な工場などに向けた“高圧”はすでに自由化されている。つまり、4月に自由化されるのは残された最後の領域で、今回の施策が電力“全面”自由化と呼ばれるのはそうした意味合いからだ。

低圧とはいってもこの市場の価値は大きい。経済産業省によると、一般家庭と小規模店舗で約8,400万件にのぼり、金額ベースでは約7.5兆円に達する巨大市場。2015年12月28日現在、119社にものぼる小売電気事業者が名乗りをあげているのもうなずける。とくに参入事業者がねらいを定めているのが、もっとも電力需要が大きく、これまで東京電力が寡占してきた首都圏の市場だろう。

ジュピターテレコムが入居する丸の内トラストタワーN館

そんななか、以前から市場参入を表明していた東京ガスが、2015年12月24日に電力料金プランをリリースした。東京ガスはその名のとおり東京とその周辺県で自社導管し営業しているガス事業者。その東京ガスが電力事業に乗り出すということは、提供してきたエネルギーは異なるが広域で営業区域が重なる東京電力と、真っ向から勝負することになる。

また年が明けた1月6日、ケーブルテレビを主事業にしているジュピターテレコムが「J:COM電力」の先行申し込み受付をスタートさせた。J:COMは日本全国で約500万世帯の契約者を抱えるケーブルテレビ最大手サービス。ただ、日本全国で営業しているとはいっても、約315万世帯が関東圏の契約者。こちらも電力市場に乗り出すとなると、6割以上の契約者が占める首都圏を最初の足がかりにするのは間違いない。

“東京電力包囲網”ともいえる一角に連なる両社だが、その戦略はわかりやすい。東京ガスは「ガス+電力」、ジュピターテレコムは「J:COMサービス(CATV・インターネット・固定電話)+電力」(※)といったように、ともにこれまで手がけていた主事業と新たに提供する電力を“セット販売”することで割引し、東京電力に対し価格競争力を生み出すのがねらいだ。ちなみに、東京ガスは年間約4,000~5,000円(40A、年間使用量4,700kWhを想定)、J:COMは6,804円(関東地域、40A、年間5,820kWhを想定)が東京電力のプランに比べお得になるとアナウンスしている。

※ CATV・インターネット・固定電話のいずれかのうち、2種以上のサービスを受けている契約者が「J:COM電力」を利用した場合、割引価格が受けられる。

ジュピターテレコム 執行役員 ケーブルTV事業部門 副部門長 堀田和志氏

ただし、これらの試算は電力自由化前の東京電力と比べたもの。両社とも、発表の時点では東京電力の自由化以降の価格を知らず、本当に価格競争力があるかどうか確信は持てていない。また、このセット販売の施策がどこまで“首都圏電力のガリバー”である東京電力に通用するのか“手探り”といった印象だ。

事実、ジュピターテレコム 執行役員 ケーブルTV事業部門 副部門長 堀田和志氏は、「中期的にエリア内加入率の20%にあたる、100万世帯を獲得したい」とするが、実際どのくらいの年数で達成できるのかは明言を避けた。また、4月の電力自由化開始までに「価格の見直しも考えられる」(堀田氏)と、逡巡している様子もうかがえる。「中期的」と断言していることを捉えれば“3~5年で100万世帯”と考えているといえそうだ。

ジュピターテレコム ケーブルTV 事業部門 ケーブルTV事業統括本部長 高橋邦昌氏

ただ、J:COMの場合、強みがある。それは、訪問販売スタッフやサービスエンジニアリング、ジェイコムショップ、専門チャンネル用番組表冊子の送付、J:COMポータルサイトなど、契約者にダイレクトにアプローチできる“接点”が整っていること。実際、今回の電力サービス開始にあたり「ヒューマンリソースの強化や営業所の拡充といった施策は考えていない」(ケーブルTV 事業部門 ケーブルTV事業統括本部長 高橋邦昌氏)という。これらの接点を効果的に活用して電気サービスを訴求すれば、数年で100万世帯は難しい数字ではないといえる。

1月1日より放映されている東京ガスのCM(東京ガスのプレスリリースより)

むしろ、東京ガスのほうが消費者とのダイレクトな接点探しで苦労しそうだ。自由化までまだ数カ月残しているのに、年末から大規模にテレビCMを打っているのは、その表れといえなくもない。

一方、こうした事業者を迎え撃つ東京電力の戦略はどうか。後編にてお伝えしたい。


全面自由化前夜……夜明けを待つ電力会社の動静

電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】
●電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【前編】
東京電力が高効率LNG火力発電への切り換えを急ぐ理由
“守り”ではなく“攻め”へ! 電力小売自由化に向けた東京電力の戦略
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu