新感覚宿泊施設を得意とする企業がクラシカルなホテルを開業

新感覚宿泊施設を得意とする企業がクラシカルなホテルを開業

2019.04.26

インバウンドの取り込みをねらって小樽で開業

築90年以上の建築物をホテルにリノベーション

北海道の北西にある街、小樽に新しいホテル「アンワインド ホテル&バー小樽」がオープンした。このホテルをプロデュースしたのは、「未来が見える宿泊体験」というメッセージを掲げたホテル「The Millennials(ザ・ミレニアルズ)」などを運営するグローバルエージェンツという企業だ。

アンワインド ホテル&バー小樽

同社はこれまで、京都・渋谷でホテル事業を展開してきた。そんな中、あえて小樽でホテルをオープンした狙いはどこにあるのだろうか。

ホテルオープンの背景に、インバウンド需要の変化

2018年、訪日外客数は3,000万人を突破した。この数字は今後もさらなる伸長が見込まれており、政府はオリンピックを迎える2020年には訪日外客数を4,000万人にまで増加させる考えだ。インバウンド市場はかつてない程の盛り上がりを見せている。

訪日外客が急増したことで、ここ数年では新たな傾向が強まっている。それは、東京や大阪、京都といったメジャーな観光スポットを巡るルート(いわゆる「ゴールデンルート」)から外れた地におけるインバウンド需要の増加である。

しかし、ここに観光業の悩みが生まれている。宿泊施設の不足だ。特に地方都市に訪日外客が散り始めてからはこの問題が顕著になっているという。グローバルエージェンツはそこに目を付けた。

今回、同社が新たにオープンしたホテルのある小樽も、外国人が押し寄せている観光地の1つだ。小樽は札幌や函館のように、宿泊施設が潤沢ではないものの、北海道で屈指の古い街並みが魅力で、訪日外客が集まり始めている。新千歳空港から直通のJR快速エアポートに乗車すれば1時間半ほどで到着するという気軽さも、人気を集める理由と言えるだろう。

築90年以上の建築物は外から眺めるだけでも圧巻

先述した、同社が運営する「ザ・ミレニアルズ」というホテルは、「スマートポッド」と呼ばれる小分けにしたベッドに宿泊する新感覚のホテル。渋谷・京都にあるこのホテルの特徴は、キッチンをほかの宿泊者と共有でき、かつオープンスペースも用意されているため、宿泊者の交流が生まれること。基本的にオープンスペースで過ごし、夜はスマートポッドに就寝するという、若い層を狙ったホテルだ。

小分けにしたベッドに宿泊できる「スマートポッド」

一方、小樽にオープンしたアンワインド ホテル&バー小樽は、ザ・ミレニアルズとは趣を異にする。築90年以上の洋館をリノベーションしてできたこのホテルは、もともと洋館だったこともあり、格式を感じる外観だ。そしてロビーに入ると、レッドカーペットが敷かれた階段が目に入ってくる。ザ・ミレニアルズとは正反対のクラシカルな雰囲気であった。

赤いカーペットもさることながら、手すりも風格がある
広さ15平方メートルのダブルルーム
各部屋に用意してある端末。フロントへの問い合わせや電話が可能だ
グローバルエージェンツの山崎社長

この外観を残した理由について、グローバルエージェンツの山崎剛 代表取締役社長は「小樽という歴史的な景観に馴染ませたかった」と話す。馴染むも何も、90年以上前からある建築物だ。もう街の一部といってもいいくらいだろう。小樽市からも「景観を崩さないでほしい」という要請があったそうだ。

筆者が試泊したのはダブルだったが、15平方メートルとビジネスホテルよりも広くくつろげるという印象を持った。

そして何より「おもしろい」と思ったのは、テレビが用意されていなかったことだ。各部屋にはプロジェクターが設置され、それで思い思いのコンテンツを再生できるようになっている。

たとえば、日中に小樽の街を散策してビデオに収め、それを部屋のプロジェクターで再生という使い方もできる。仮にテレビを置いてしまったら、番組に夢中になり、小樽の夜が東京の夜と変わらなくなってしまう。幻想的な夜の小樽を散策する時間もなくなってしまうことだろう。

「ガラスの街 小樽」の魅力を損なわない宿泊体験

さて、チェックアウトしたら昼間にも小樽散策をしてほしい。

小樽の街は、昼と夜とで異なった表情を見せる。聞くと小樽は「ガラスの街」であるそうで、あちこちにガラス工房があった。考えてみればホテルの食堂の窓もステンドガラスだった。

昼と夜でまったく異なる様相の小樽
ホテル食堂のステンドガラス(左)。ツタの絡まった建物は大正硝子館本店(右)

小樽はまだ、札幌や函館ほどにインバウンドに対する知名度はないが、早晩、外国人観光客が押し寄せてくることだろう。前出の山崎社長も、そうした需要を見越して、この地にホテルを開業したという。実際、このホテルのオープン当初には予約が殺到したそうだ。訪日客数が増加していく中、あえて小樽の観光を選択するような“目の肥えた”人にとっては、観光地の風土に則したこのようなホテルは魅力的に映ることだろう。

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2019.06.17

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カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu