トヨタの新型「RAV4」が“ゴツく”なった理由

森口将之のカーデザイン解体新書 第15回

トヨタの新型「RAV4」が“ゴツく”なった理由

2019.04.10

トヨタ「RAV4」が日本に復帰、デザインは大きく変貌

都市型SUVが増える世の中に新型「RAV4」がもたらす新鮮味

オフロード試乗で体感! 見た目に負けない乗り味

トヨタ自動車のSUV「RAV4」が3年ぶりに日本市場に復活した。昔のRAV4を知っている人は「ずいぶんゴツくなったな」と感じているかもしれない。実はデザインの変貌には明確な理由がある。走りの印象を含めて報告しよう。

トヨタの新型「RAV4」

RAV4が日本市場に復活した経緯とは

前輪駆動乗用車のエンジンやサスペンションを活用してSUVを作る。今日では当たり前になっている手法をいち早く実現したのが、1994年にデビューしたトヨタ「RAV4」だった。CMキャラクターには、当時はデビューして間もなかったSMAPの木村拓哉を起用。ポップなデザインとともに、新たなジャンルのクルマであることを多くの人に印象付けた。

初代RAV4は、翌年に登場するホンダ「CR-V」をはじめ、スバル「フォレスター」、日産自動車「エクストレイル」など多くのライバルを生み出し、欧州からもフォルクスワーゲン「ティグアン」、プジョー「3008」などの競合車種が登場する要因となった。まさに、エポックメーカーだ。

ところが、生まれ故郷の日本では、初代では5ナンバー枠内に収まっていたボディ全幅が3代目で1.8mを超え、2Lだった直列4気筒エンジンが2.4Lになったこともあり、販売台数が落ち込んでいった。新型RAV4にとって先代モデルとなる4代目は、日本では販売すらされなかった。

ボディとエンジンの大型化は、主として米国市場での人気を受けたものだった。米国では、4代目の販売中にハイブリッド車を追加したことで、販売台数を大いに伸ばした。その結果、4代目RAV4はセダンの「カムリ」を抜き、トヨタのベストセラーカーになるほどの人気を獲得。この勢いを受けてトヨタは、2018年にニューヨークモーターショーで新型RAV4を発表した。

この間、日本では、レクサス「RX」の日本版として登場したSUV「ハリアー」が国内専用車として独立。現行「プリウス」と同じく新世代の「TNGAプラットフォーム」を採用するSUV「C-HR」も誕生した。他のブランドなら、SUVラインアップはこれで十分と思うだろう。

にもかかわらず、トヨタがRAV4を日本市場で復活させるのは、RAV4そのもののコンセプト転換によるところが大きかったのではないかと考えている。

コンセプトを転換し、日本市場に復帰する新型「RAV4」

新型RAV4のテレビCMを見た人は、オフロードシーンが多いことに気づいたかもしれない。最近のSUVでは珍しい演出だ。山梨県で行われた試乗会のプレゼンテーションでは、この点についての説明があった。

デザインのベースは2つの8角形

近年、さまざまなブランドから多くのSUVが登場しており、オンロード重視で快適性を重視したクルマ作りがトレンドとなっている。この流れの中で、SUVならではの「ワクドキ感」が薄れていると感じたトヨタは、新型RAV4を作るにあたり、ロバスト(robust、逞しい)であることとアキュレート(accurate、きめ細かい)であることの両立を目指したという。この造形により、ユーザー層の若返りも狙っているそうだ。

ロバストな印象になった新型「RAV4」

それを象徴するのがスタイリングだ。2つの8角形を90度ずらして組み合わせた「クロスオクタゴン」と呼ばれる手法を取り入れ、力強い造形と視界の良さを両立した。多くのクルマは真上から見ると四角形に見えるが、新型RAV4は機動性を向上させる意味もあり、四隅をカットしている。キャビン後端はオフロードの走破性を考慮してリアバンパーを斜めにせり上げた。

新型「RAV4」は2つの8角形を組み合わせた「クロスオクタゴン」というスタイリングを採用している

この方向性を明確にしているグレードが「アドベンチャー」だ。フロントのグリルとバンパー、スキッドプレート、ヘッドランプを専用とすることで、同じトヨタのピックアップや大型SUVに似た、力強い顔つきになっている。セダンやクーペに近いエモーショナルなSUVが増えつつある中では、かなり個性的に映る。

力強い顔つきの「アドベンチャー」

室内も多角形イメージをドアハンドルやエアコンのルーバーなどに取り入れており、デザインとしての統一感がある。滑り止めのゴムを施したエアコンやドライブモードセレクターなどのダイヤルを含め、独自の空間を作り上げようという気持ちが伝わってくる。

「アドベンチャー」の室内。デザインにはエクステリアとの統一感がある

しかも、スクエアなキャビンは室内が広い。新型RAV4のボディサイズは全長4,610mm、全幅1,865mm、全高1,690mm(アドベンチャーの数値)と、幅は広いものの長さはこのクラスの平均値である。ところが、後席は身長170cmの筆者が座ると足が組めるほど広い。荷室も580Lという数字を実感する。機能に裏付けられた造形である。

「アドベンチャー」のシート。全長は同クラスで平均的な数値だが、乗ってみると室内は広い

ここまで広いと、ライバルにはある3列シートを選べてもよいのではないかと思ったのだが、トヨタは北米向けに「ハイランダー」というひとまわり大柄な3列シートSUVを販売しているので、RAV4では2列シートにこだわったそうだ。

3列シートを設定する予定はないようだ

インテリアカラーは全グレードにブラックを用意したうえで、アドベンチャーにはライトブラウン、それ以外のグレードにはライトグレーを設定している。印象的なのはインパネやセンターコンソールに配されるアクセントカラーで、アドベンチャーはオレンジ、別のグレードではブラウンとしており、細部のコーディネートにまで気を配っていた。

ハイブリッド車の室内

トヨタが試乗会でオフロードを用意した意味

メカニズムでは、日本向けのRAV4では初となるハイブリッド車の投入がニュースだ。2.5L直列4気筒とモーターの組み合わせで、2Lのガソリン車と排気量が異なる。メインマーケットの北米ではガソリン車も同じ2.5Lだが、日本および欧州市場向けは税制などを考えて2Lを搭載したという。

どちらも2WD(前輪駆動)と4WDが用意されるが、ハイブリッド車は後輪を専用モーターで回す「E-Four」という仕組みであるのに対し、ガソリン車はプロペラシャフトで駆動するタイプになる。試乗会ではハイブリッド車「G」グレードの4WDと、ガソリン車の4WDのみとなる「アドベンチャー」に乗った。

「アドベンチャー」(画像)とハイブリッド車の「G」グレードに試乗

加速はもちろん、排気量で上回るうえにモーターのアシストもあるハイブリッド車の方が上だ。ガソリンエンジンのアドベンチャーは、3,000回転あたりまでエンジンを回すことが多く、エンジン音がそれなりにキャビンに響く。ただ、その音はハイブリッド車の2.5Lより滑らかで、回すことが気持ちいいと感じた。

新世代プラットフォームの剛性感、しっとりと動くサスペンション、移動距離の長い北米市場を見据えたような厚みのあるシートなどのおかげで、乗り心地は快適だった。ホイール/タイヤをインチアップしたアドベンチャーのほうが、しゃきっとした乗り味で好感を抱いた。ハンドリングも、パワートレインが軽いアドベンチャーの自然な身のこなしが好印象だった。

実は、新型RAV4のTNGAプラットフォームは、C-HRではなく、ひとクラス上のカムリと同じものを使っている。クルマ作りの過程では、オフロード走行を想定し、あの「ランドクルーザー」の開発スタッフからアドバイスを受けたそうだ。懐の深さを感じた乗り味はこうした理由によるものだった。

試乗会ではフラットなダートとモーグルなどからなるオフロードコースも用意されていた。こういった環境をトヨタが用意したのは、新型RAV4のキャラクターを強く印象付けるためだったのだろう。

試乗会ではオフロードコースも試すことができた

フラットなダートでは、E-Fourの進化にまず驚いた。これまでのE-Fourは、滑りやすい路面の発進時などに限り後輪を駆動する、エマージェンシー的な性格だった。新型RAV4のE-Fourはリアモーターが強力になり、後輪の駆動を感じながらのコーナリングを味わえるようになっていた。

一方、アドベンチャーを含む一部のガソリン車には、リアのトルクベクタリングが備わっていた。コーナーでは積極的に外輪のトルクを増やし、旋回を強めていく。また、ガソリン車は「マッド&サンド」「ノーマル」「ロック&ダート」の3モードの切り替えが可能で、200mmの最低地上高と合わせてかなりの凹凸を余裕でクリアできた。

初代RAV4を知っている人は新型の激変ぶりに驚くだろうが、初代RAV4が確立した乗用車テイストのSUVがあふれるほど増えた今だからこそ、逞しさにこだわった新型のデザインと走りが新鮮に感じた。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

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