料金引き下げの切り札「プリペイド携帯」に政府もキャリアも消極的な理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第35回

料金引き下げの切り札「プリペイド携帯」に政府もキャリアも消極的な理由

2019.04.02

携帯料金の節約に、海外ではメジャーな「プリペイド方式」

日本でプリペイド方式のサービスが流行らない理由は?

値下げ議論の目的が建前でないなら、プリペイドも再検討すべき

ここ最近、行政主導による携帯電話の料金引き下げがモバイル業界で注目の的となっているが、諸外国では、携帯料金を節約するならプリペイド(前払い)方式のサービスを利用するのが一般的だ。にもかかわらず、日本では料金引き下げのためにプリペイド携帯電話を積極的に利用しようという機運は全く見られない。なぜだろうか。

海外ではとてもメジャーなプリペイド携帯

2018年に菅義偉官房長官が「携帯電話の料金は4割引き下げる余地がある」と発言して以降、携帯電話の料金に関する話題が世間を大きくにぎわせている。最近もNTTドコモが、ユーザーの利用状況に合わせて2~4割値下げになる料金プランを2019年第1四半期に提供すると発表したことから同社の動向に非常に大きな関心が寄せられているし、楽天が2019年10月に参入することによる競争激化も、注目されるところだ。

だが諸外国の動向を見ると、料金を節約しようとした場合、料金を後からクレジットカードや銀行口座などから引き落とす日本で一般的な「ポストペイド」方式より、利用料を先に支払う「プリペイド」方式が一般的だ。

プリペイド方式のサービスは、例えば「1,000円支払うと200分通話できる」といったように、利用する分量の料金だけをあらかじめ支払う仕組みだ。そのためポストペイド方式のように「20GBのプランを契約しているが、毎月2GBしか使っていない」といった無駄が発生しづらく料金を抑えやすいことから、海外では主として低所得者層や若者など、所得が少ないけれど携帯電話を利用したい人達からの支持を集めている。

プリペイド方式の携帯電話サービスは、欧米やアジアなど多くの国や地域で提供されている。写真は欧州を中心にプリペイド方式の低価格サービスを提供している「LEBARA」のSIMを扱うフランスのショップ

また長期間の契約が必要ないことから、海外旅行者や留学生などの一時滞在者などにとってもプリペイド方式のサービスは人気が高い。実際日本でも、インバウンド需要を見越し訪日外国人向けに日本でのデータ通信を安く利用できるプリペイド方式のSIMカードがここ数年で急増している。最近では空港などでプリペイドSIMカードを販売するケースも珍しくなくなってきたようだ。

訪日外国人向けのデータ通信用SIMに関しては、日本でもMVNOを中心として多くの企業が提供している。写真はインターネットイニシアティブの「JAPAN TRAVEL SIM」

そしてもう1つ、プリペイド方式はその仕組み上、囲い込みが難しく乗り換えがしやすいことから、キャリア間の競争を促すという面がある。携帯電話料金を巡るここ最近の議論では、キャリア間の競争停滞が問題視されていただけに、プリペイド方式の積極利用が競争に大きな効果をもたらす可能性は高い。

だがそのプリペイド方式のサービスを、料金引き下げの切り札として日本の消費者向けに積極的に導入しようという機運は全く見られない。料金引き下げに力を入れる行政側も、諸外国では一般的なはずのプリペイド方式の利活用に関しては、議論の俎上にさえ載せようとしていないのが現状だ。

犯罪対策の影響で活用の道が断たれる

なぜ、行政もキャリアもプリペイド方式に消極的なのか。キャリア側の理由として挙げられるのは、ビジネス上のうまみが少ないということだ。

ここ最近、月額制のサブスクリプション方式のビジネスが大きな注目を集めているように、ユーザーが契約している限り毎月確実に料金が支払われるポストペイド方式は、安定した収入が得られるという大きなメリットがある。一方でプリペイド方式は安定した収入につながらないことから、キャリアにとってはあまり提供したくないサービスでもあるのだ。

しかも日本では、多くの人がクレジットカードや銀行口座を持っている。銀行口座を持たない人が多くを占める新興国などの場合、プリペイド方式でないとビジネス自体が難しいが、環境が整っている日本で、キャリアがあえてプリペイド方式のサービスに力を入れる動機づけが弱いのである。

一方、行政側の理由として挙げられるのは、プリペイド方式がもたらす匿名性の問題だ。プリペイド方式は先に料金を支払ってしまえばサービスを利用できてしまうことから匿名性が高く、事前の本人確認を徹底しなければ誰が使っているのか分からないため、犯罪などに悪用されやすい弱点もある。

日本でも、かつてプリペイド方式の携帯電話は本人の身元確認が甘かったことから、2000年初頭にプリペイド方式の携帯電話を特殊詐欺などの犯罪に使うケースが頻発し、社会問題として注目されるに至った。そうした背景から総務省は2005年に、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等および携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」(携帯電話不正利用防止法)を施行、プリペイド方式の契約者の本人確認が大幅に強化されている。

それを受ける形で各社がプリペイド方式の本人確認を強化したのはもちろんだが、NTTドコモなどは安全性重視の観点から、2005年にプリペイド方式サービスの新規契約自体を終了してしまっている。こうした動きによってプリペイド方式のサービスを提供しないことが安全で正しい、という印象を与えてしまったことが、日本でのプリペイド方式の有効活用という道を実質的に断ち切ってしまう要因になったといえるだろう。

もちろん現在も、ソフトバンクの「プリモバイル」のようにプリペイド方式のサービス自体は存在している。だがその知名度の低さからも分かるように、ポストペイド方式と比べ力の入れ具合は極めて弱いというのが正直なところである。今後も日本でプリペイド方式を積極活用しようという動きが起きる可能性は低いだろうが、真に消費者に多様な選択肢を与えて諸外国並みの料金低廉化を目指すというならば、諸外国に並んでプリペイド方式の選択肢を広げることも必要ではないかと筆者は考えている。

給食「完食指導」は適者生存の虐待か? 子どもへの悪影響に賛否

カレー沢薫の時流漂流 第44回

給食「完食指導」は適者生存の虐待か? 子どもへの悪影響に賛否

2019.05.27

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第44回は、子供のトラウマ「完食指導」問題について

給食の完食指導が問題になっている。

「お残しは許しまへんで!」

アニメ『忍たま乱太郎』に出てくる食堂のおばちゃんの有名な決めセリフである。

彼女はそのセリフの通り、それを破る者には烈火の如く怒り、時には一週間食事抜き、掃除をさせる等の罰も辞さないという、「食事を残す者を地獄の業火で焼く人物」として描かれている。

あくまでフィクションであるし、何せ彼女が飯を与えているのは忍者の卵である、今後おそらく山田風太郎の世界で活躍しなければいけない面々だ。適切に調理された食堂の飯が食えないようではやっていけるはずがない。

しかし、忍たま乱太郎の世界ではあれが適切としても、将来、忍にならない子ども相手にそれをやるのは問題なのではという声が挙がっている。

令和になっても残ってしまったトラウマ給食

石でも甘辛くしてもらえれば食える、という偏食のない人間には無縁な話だろうが、そうでない者には「給食のトラウマ」の一つや二つあるのではないだろうか。

一番多いのは「完食するまで帰れま10」だ。これが表題にもなっている「完食指導」である。食べきるまで昼休みに入らせなかったり、居残りをさせたりというものだが、中には「食べ物を無理やり口に詰め込まれて嘔吐」というストロングスタイルの指導を受けた者もいる。

ここまでなら、まだ個の問題だが「みんなが食べきるまで全員昼休みに入らせない」という、齢10にもいかない内から連座制の厳しさを叩きこむ学校もあるようだ。

これらは全て、トラウマとして残る。私でさえ、保育園の時、とりあえず口には入れたが長考したのち「やはり無理」と吐いたほうれん草の白和えのポップなビジュアルを未だ覚えているぐらいなので、無理やり口に入れられた人が忘れるわけがない。

漫画家の清野とおる先生も保育園の時、カワイイ女の子が無理やり嫌いなものを食べさせられ嘔吐したのがトラウマになっていると書いていたので、当事者でなくても同胞が目の前で嘔吐するというのは恐怖なのである。

その結果、傷を負い、登校拒否になったり体調不良を起こしたりする児童がおり、またこの経験から大人になっても「人と食事をするのが怖い」と感じる人もいるという。

そういった強制的完食指導に意味があるかというと、私はないと思う。なぜなら、未だにほうれん草の白和えが嫌いだし、義実家での食卓で姑が「今日の推し」と言わない限りは食わない気がするからだ。無理やり食わされても、大人なのでさすがに嘔吐はしないと思うが、代わりに耳あたりから出てくると思う。

このようにアレルギーでなくても「生理的に無理」な食べ物は存在する。生理的に無理な人の指が口の中に入ってくるところを想像して欲しい。「無理」としか言いようがないだろう。そのレベルでダメなものを飲みこませることが、人間にとってプラスになるとは思えない。

しかし、そこを慮りすぎて「好きな物しか食べない人間」になるのも問題である。「大して好きじゃない物」や「苦手な物」程度なら「感情を無にして食える」練習をしておいた方が、社会に出た時や義実家などでトラブルが起こりづらいのも確かである。

食育に力を入れている小学校では、生徒個人に合わせて最初から食べる量を増減させたり、または無理やり食べさせるのではなく、生徒自身が「今日俺ニンジン食っちゃうよ?」という気になるような給食環境づくりに取り組んだりしているという。

食事は「楽しい」ことが一番

昭和のトラウマランチタイムをサバイヴしてきた人間からすると、これらのやり方は「スイート」に感じられるかもしれない。

しかし、上記の食育に力を入れている学校の校長曰く「食事が楽しくなくなるのが一番ダメ」だそうだ。確かに、食事以外に楽しいことが一つもない、という人間は私含め大勢いるし、今の子どもの65%ぐらいはそういう大人になるはずである。(当社調べ)

そんな65%の唯一の楽しみを子どものころから奪うというのは、虐待と言っても過言ではないし、何のために生まれて来たのかさえわからなくなってしまう。

ちなみに私には90歳になる祖母がいるのだが、そのババア殿は一時期、シュークリームのクリームとジュースしか飲まないという、妖精みたいな生活を送っていたが、普通に生きている。何故なら、そのジュースが妖精になった老人用に作られたメチャクチャ栄養があるジュースだからである。このように、昔だと食事=適切な栄養を取る行為であったが、最近では食事からじゃなくても栄養はとれるようになってしまった。

ならば、食事をただの生命維持活動ではなく、「楽しみ」として重視していくのも自然の流れなのかもしれない。

もちろん、作ってくれた人への感謝など、倫理的なことを言えばやはり、偏食なく、出された物は何でも食えた方が良い。

よって、偏食が多い人も「これだけ嫌いなものがあるから出すな」「嫌いなものを食べさせようとするのはハラスメント」と己の権利を主張するだけでは、協調性がないと取られてしまう。

自分で作る、1人で食う、食事会でも自分が幹事をやって店を選ぶ、など嫌いな物を食べず、なおかつ周りにも不快感を与えない方法を考えていくべきだろう。この方法で、私は1年中300日ペペロソチーノだけを食い続けたが、特にトラブルはなかった。

と言いたいが夫に「くさい」と言われたので、自分の食を楽しみつつ、周りに迷惑をかけないのは、なかなか大変ことなのである。

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2019.05.24

米国政府がファーウェイを輸出規制リストに追加した

ファーウェイ製品の発売延期を決定する事業者が続出

輸出規制は世界経済の混乱を招く事態に……

米国政府がファーウェイを輸出規制リストに追加したことで、米中の貿易摩擦が加速している。5月21日には国内向けにスマホ新製品の発表会を開催したものの、発売を延期する事業者が相次ぐ事態となっている。

ファーウェイはスマホ新製品を発表したが、販路の多くで発売延期に

スマホ世界シェア2位に躍り出るなど、破竹の勢いで成長してきたファーウェイだが、果たして打開策はあるのだろうか。

世界シェアは再び2位に、国内でも攻勢に

ファーウェイはスマホ世界シェアでアップルと2位争いを繰り広げている。年末商戦シーズンにはアップルが2位に返り咲いたものの、2019年第1四半期にはファーウェイが前年比50%増となる5900万台を出荷したことで、再び2位に戻る形になった。

新製品発表会に登壇したファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏

スマホ市場が伸び悩む中で、なぜファーウェイは劇的な成長を遂げたのだろうか。2018年後半から米中貿易摩擦が報じられる中、買い控える動きもある一方で、世界的な露出の増加によって、製品を手に取ってみる人が増えたことが背景にあるとファーウェイは見ている。

国内でも順調に伸びてきた。依然としてiPhoneはシェアの半数近くを占めるものの、直近1年間で最も売れたAndroidスマホはファーウェイの「P20 lite」だという(BCN調べ)。コスパの良さが高く評価されているのが特徴だ。

2019年夏モデルでは、NTTドコモがフラグシップ「P30 Pro」を、KDDIは「P30 lite PREMIUM」の取り扱いを発表。MVNOやオープン市場には「P30」と「P30 lite」を投入するなど、あらゆるセグメントに向けて最新ラインアップを一挙投入する予定だった。

ベストセラーの後継モデルとして期待される「HUAWEI P30 lite」

だが、こうしたファーウェイの快進撃に待ったをかけたのが、米商務省が発表した輸出規制リストへの追加だ。

複数の企業が取引を停止、国内で発売延期も相次ぐ

米商務省が5月15日にファーウェイを輸出規制リストに追加したことで、米国の製品やサービスをファーウェイに対して輸出することが同日より規制された。米国製の半導体やソフトウェアなどを利用できないのは大きな痛手だ。

その後、重要なサービスにファーウェイ製品を用いる企業向けに90日の猶予期間が設けられたものの、これからどうなるかは不透明な状況だ。グーグルやクアルコムなど米国企業をはじめ、米国技術に大きく依存している英Armもファーウェイとの取引を停止すると報じられている。

国内では早いものでは5月24日からP30シリーズのスマホが販売される予定だったが、大手キャリアやMVNO、量販店などが相次いで発売延期や予約停止を発表。既存のファーウェイ製品については販売が続いている状況だ。

NTTドコモが今夏発売予定の「HUAWEI P30 Pro」は予約受付を停止
KDDIの「HUAWEI P30 lite PREMIUM」の発売を延期した

ファーウェイは米国に頼らず必要な部品を調達する構えも見せているが、ファーウェイ包囲網は世界的に広がりつつある。OSであるAndroidはオープンソース版を自由に利用できるものの、グーグルのサービスがなければ海外展開は困難だ。

独自のKirinプロセッサーを有しているとはいえ、Armのライセンスがなければ開発継続は不可能とみられる。スマホ以外にも基地局などの通信インフラでファーウェイのシェアは高く、輸出規制が長引けば世界的に混乱を招きそうだ。

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