事前予想よりもクールだった新元号「令和」発表

カレー沢薫の時流漂流 第36回

事前予想よりもクールだった新元号「令和」発表

2019.04.01

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

緊急更新回は、「新元号『令和』」について

皆がこれを読んでいるころには、もう新元号が発表されていることだろう。

遺書のような書き出しになったが、私は明日以降も誰に頼まれたわけでもなく、生きているに決まっている。

これを書いているのが3月31日、明日ついに新元号が発表される。新元号と言えば、発表が押しに押し、カレンダー業者にすら「勝手にしやがれ」と匙を投げられていた。

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そうは言っても、さすがに発表間近になると話題に出す人も増え、私の大好きなツイッターでは「新元号大喜利」が盛んに行われている。だが、この大喜利は早々に終了してしまった。何故なら「正解」が出てしまったからだ。

その名も「タピオカ」。そして今年は、「タピオカ元年」だ。

そのあまりの語呂の良さに、私のタイムラインではすでに「これしかない」と言う空気になっている。こんな「本物より本物」が出された後で、明日発表される新元号が可哀想なぐらいだ。

この「正解」を叩き出したのは、渋谷のJKである。渋谷のJK300人に「新元号は何だと思いますか」という謎アンケートが行われたのだ。

まず、このアンケートの意図はなんなのか。こうしたアンケートの中には、「最近の馬鹿で無知な若者をみんなさんで叱ってあげましょう」という、「お年寄りのために作りました!」という意図がおばあちゃんちのカーテンぐらい透けているものがあるが、ここまでくるとそれとは違う「期待」を感じる。

そして、その期待に見事答えて出て来たのが「タピオカ」である。

この答えには、若者や年寄りどころか「人類に厳しい」ことで有名なネットの民も、「ナイセンッ!ナイセンッ!(ナイスセンス)」と大喝采である。

そもそも、渋谷に遊びに来ているJKに、「新元号は?」などというつまらない質問をする時点で、世が世ならタピオカを吸うあの太めのストローで無礼打ちである。まず答えてくれたJKに感謝だ。

しかしタピオカが堂々第一位というわけではなく、1位は「安久」である。これに対しては「果たして渋谷に来るようなJK様が、こんな『僕、他の子より成長早いんです」という顔をした小学5年生のような、つまらない事を言うだろうか」と、逆に情報操作を疑われている。タピオカは11位だが、それでも3人がそう答えたというから、日本の未来は明るい。

他にも特筆すべきは3位に「嵐」同じく11位に「卍」などがある。JKからしたらすでに、嵐のメンバーはお父さんに近い年代である。それでも名前が出てくるのだから、改めて嵐のすごさを感じる。

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さらに「卍」、これも良い。画数が少ない所が特に良い。私のような悪筆で誤字が多い者にとって、タピオカや卍はすごく助かる。

それに、世界に誇る日本の画家・葛飾北斎も「画狂老人卍」と名乗った時期があるのだ。元号になっても何ら不思議ではないし、JKもそこを意識して答えたに違いない

こんな「すでに出そろった」状態で明日新元号が発表されるわけだが、もはや何が出て来ても「普通」という言葉しか出てこないだろう。この続きは、明日、新元号が発表された後に書きたいと思う。

🐈🐈🐈🐈🐈🐈🐈

現在、4月1日の12時30分だ。このように、今起こったことをすぐ書けるのが無職の強み「無職力(ムショクリキ)」だ。

既報の通り、新元号は「令和」に決定した。

率直な感想を言うと「思ったより良いじゃないか?」である。これは件のJKアンケートの1位で、「安久」なる、聞いた瞬間忘れる元号を見てしまったせいもある。これに比べれば「カッコいい」とさえ思える。

「何故、渋谷のJKがこんなつまらない答えを」と訝しんだが、その意味が分かった。「ハードルを下げて、何が出て来ても盛り上がれるようにする」という前フリだったのだ。さすが渋谷のJK、場をグルーヴさせたら右に出る者はいない。

そんなワケで新元号は「令和」となった。世界に誇るキラキラネーム大国日本なので、「令」と書いてまず「クール」と読ませる可能性も考えたが、そのまんま「れいわ」である。出典は「万葉集」からで、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味が込められているそうだ。

今日は新年度でありエイプリルフールでもあるのだが、現在ツイッター含むネットは新元号のことで持ち切りである。何だかんだで、みな楽しみにしていた感があり、見る限りは新元号への反応も悪くないように思える。

これからシステム改修、印刷物の刷新など、死ぬほど面倒なことになるのはわかり切っているが、それでも発表された瞬間は、みな新時代の幕開けに爽やかな気分になっているという感じだ。

ちなみに私は無職なので、そういう事務的な面倒臭さにあまり関わらなくて済むため、会社員の3億倍爽やかな気持ちだ。

新元号になる前に、無職になってよかった。そんな気持ちでいっぱいである。

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NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

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