学生と企業を結ぶ! 活発化する大学を舞台にしたCSR活動

学生と企業を結ぶ! 活発化する大学を舞台にしたCSR活動

2016.07.11

恵比寿ガーデンプレイスに立地するサッポロホールディングスの本社。その1Fホールに50名以上の学生たちが集まった。この学生たちは國學院大學経済学部の2年生がほとんどを占める。彼らは「サッポロのCSR部門に配属された社員」という想定で、同社のCSV(会社の利益につながる社会貢献)を約2カ月間、考えてきた。そしてこの日、各チームが長期間にわたり練ってきたCSVについて最終報告会が行われ、グランプリが選出された。

以前より協力関係を築く

この取り組みはサッポロホールディングスのCSR活動の一環だ。サッポロと國學院は、同じ東京・渋谷区に本拠を置き、距離的にも近い。過去にも「渋谷の大学生に聞くアルコール意識調査」を國學院大學とサッポロビールが共同で調査したり、「アルハラを防げ」と題した学生・教員向けのセミナーを共同で開催したりといった経緯がある。

そして今回、CSR活動で國學院とサッポロが手を組んだ。サッポロはこの活動を通じ社会貢献につなげられ、國學院は実際の企業と学生が触れる機会を創出することで、より実践的な“学びの場”を提供できる。両者の思惑が合致してスタートした取り組みといえよう。

サッポロホールディングス本社に集まった学生たちとサッポロ社員

では、具体的にどのような学習が行われたのだろうか。ズバリ、アクティブ・ラーニングだ。そもそも國學院はアクティブ・ラーニングに2014年から本格的に取り組み始めた。昨年はぐるなびと同様の取り組みを行ったという。

最終予選でプレゼンする学生たち。ここまでは國學院校内で進められた

今回行われたのは、学生たちがチームに分かれ、“サッポロのCSV”をテーマにディスカッション、ディベートし、そしてその成果を発表するという、アクティブ・ラーニングではもっとも基本的といえる学習方法だ。こうした教育の場合、教授が研究すべき企業名を指定し、大学内でアクティブ・ラーニングを完結させることもできる。

だが、今回の取り組みでは実際にサッポロの社員がアクティブ・ラーニングの現場に入りレクチャー授業を行う。実際のサッポロの企業理念や事業内容、課題などに触れることで、より実践的な“思考”が求められる。5月9日にはサッポロインターナショナル 代表取締役社長 小松達也氏が、5月23日にはサッポロホールディングス 取締役 征矢真一氏が学生たちに説明を行うなど、熱のいれようが伝わってくる。

ちなみに課題は「食を通じて世界に『潤い』を – もっと日本をもっと世界へ“KANPAI PROJECT”への取り組みを考える」というもの。そのため、サッポロ製品を海外で展開する事業を手がけるサッポロインターナショナルの代表が出張った、というワケだ。

学生側にもメリットがあったようだ。学生の一人は「机上の空論ではなく、実際の事業として考えなくてはならないのが難しかったです」と前置きしながらも、「将来、企業に勤めた際、必ずこの経験が役立ちそう」と、目を輝かせた。國學院の経済学部は一学年600人規模というが、その中から100人以上が参加したというから、学生たちにこの取り組みが魅力的に映ったにちがいない。

講評を行うサッポロホールディングス グループCSR部長 八木啓太氏。右の人物がサッポロインターナショナル 小松社長
2組のグランプリ受賞チームのうちの1組。トルコでのサッポロのCSVをプレゼンした

さて、参加した学生のほとんどが2年生と前述した。つまり、来年に誕生日を迎えた学生からお酒が順次解禁されるということになる。近年、若者のお酒離れ、特にビール離れが指摘されている。だが、この取り組みに参加した学生ならば、お酒が解禁になった際、自然とサッポロの商品を手につかむのではないか。ある意味、この取り組み自体がサッポロのCSVになっているといえよう。

最終報告会でプレゼンする学生(写真提供:武蔵大学)

一方、早い段階から企業CSRをゼミに採り入れてきたのが武蔵大学だ。山嵜哲哉学長は「確認はしていないので正確ではないが、おそらく本校が最初に企業CSRをゼミに組み入れたのではないか」と語る。企業CSRをゼミに活用する取り組みは今年で10回目となり、現在、ほかの多くの大学が武蔵大学の取り組みに注目している。

武蔵大学の場合、大きな特徴がある。それは、経済学部、人文学部、社会学部の3学部を横断したプロジェクトになっていること。「それぞれの学部が同じキャンパスにあるからこそできる取り組み」(山嵜学長)だという。

どういうことかというと、まず各学部で同じ企業を研究するが、経済・人文・社会でそれぞれ視点が異なってくる。この段階を「第1フェーズ」とする。続いて中間報告が行われ、その後、各学部がチームを組み改めて研究し直すのが「第2フェーズ」だ。それぞれ見識が異なっているので、この第2フェーズでのすり合わせが重要になってくる。

今年は日本アイ・ビー・エム、水上印刷、岡村製作所、ロート製薬がこの学部横断型プロジェクトに協力した。種村聡子 経済学部助教によると、「これまで50社以上の協力を得た。なるべく学生と接点がないB to Bの企業・事業を選択している」と、“ビジネスの視点”を養いやすいようにしている。

冊子としてまとめられたCSR報告書

注目したいのは企業とのコミュニケーションの接点が多いこと。企業側のプレゼンや事業所見学のほかに専用SNSを用意。学生からの意見や質問に答える体制となっている。日本アイ・ビー・エム マーケティング&コミュニケーション 部長 小川愛氏によると「ほぼ毎日、何かしら学生からのリクエストがあり、それに応えてきた」と、学生の熱意を感じたそうだ。

徹底しているのが「CSR報告書」という形にまでまとめあげること。企業研究やプレゼンだけではなく、文章、レイアウト、キャッチコピー、章立てといった構成なども工夫しなくてはならない。

最終報告会でプレゼンを終了した学生の一人が感想を求められると、感極まってなかなか言葉にならない様子が強く印象に残った。「昨年このゼミを見学して“私も挑戦したい”という気持ちになり、やりきった」という言葉に“達成感”がこちらにも伝わってくるようだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事