ラジオを始める楽天、見えてくる2つの狙い

ラジオを始める楽天、見えてくる2つの狙い

2016.07.11

楽天がインターネットラジオ配信プラットフォーム「Rakuten.FM」を立ち上げた。コンテンツプロバイダーを広く募って音楽番組やトーク番組などを配信し、将来的には広告を入れることで収益化を図るという。ネットの音声広告市場が成熟していない日本で、同サービスはビジネスとして成立するのだろうか。

楽天がネットラジオ配信プラットフォーマーになる狙いとは

20局のネットラジオステーションが集結

Rakuten.FMはPCやスマートフォンなどのウェブブラウザで聴くことができるネットラジオ配信サービス。楽天が用意したスマホ用アプリでも聴取可能だ。開始時のコンテンツプロバイダー(ネットラジオ局)は計20局だが、順次拡大していく予定だという。放送している内容は幅広く、音楽のジャンルだけでもダンスミュージック、ポップス、ロック、ハワイアン、クラシックと多彩だ。

楽天は自身もネットラジオ局「クリムゾンエフエム(Crimson FM)」を立ち上げ、放送を始めている。同局の運営では、エフエム東京グループのTOKYO SMARTCAST、ジャパンエフエムネットワーク、VVJ(ライツ管理会社)と協力する。クリムゾンエフエムはエフエム東京が立ち上げたデジタル放送「i-dio」でも同時放送している。

Rakuten.FMには計20局のステーションが参加。ちなみに、米国のネットラジオ配信プラットフォーム「Tunein」は、10万局のラジオ局と6,000万人のユーザーを抱える巨大なサービスに成長している。Rakuten.FMがどこまで大規模化するかにも注目だ

日本に残された音声広告市場というフロンティア

Rakuten.FMに参画するネットラジオ局は、このプラットフォームを通じて自らが制作した音声コンテンツを配信できる。楽天は参画するネットラジオ局に対し、将来的に広告配信などによる収益獲得の機会を提供する予定。広告収入をネットラジオ局と分け合うことで楽天は同サービスをマネタイズする。

ネットラジオの収益化を図るには、聴取を有料とするか、音声広告を挿入するのが一般的。Rakuten.FMは無料放送であるため、マネタイズするには広告が不可欠となる。海外ではネット上の音声広告が一般化しており、米国ではネットラジオを含めたラジオ広告市場が1兆円を超える規模に成長しているというが、日本ではこのような市場がほとんど育っていない。楽天が挑戦しようとしているのは、日本のネット上に残された未開拓市場だということができる。

Rakuten.FMを広告収入だけで収益化するのが理想だろうが、日本では前例のない取り組みであるため、成功の確率は未知数というほかない。海外のネットラジオは、リスナーの属性に合わせたコマーシャルを配信できる「ターゲティング広告」の技術を活用しているが、日本では同技術に取り組む企業が出始めたばかり。この技術を使う予定があるかどうか楽天に問い合わせてみたが、回答は得られなかった。

ネットラジオが楽天の玄関に?

ネットラジオの配信プラットフォーマーになろうとする楽天は、同社の他の事業とネットラジオを結びつけるような将来像を思い描いていないのだろうか。楽天が手掛ける幅広いビジネスのなかには、ネットラジオと親和性の高そうなものも存在する。例えば音楽を流しているネットラジオと「楽天チケット」を連携させることができれば、Rakuten.FMを聴いて興味を持ったアーティストのライブに足を運ぶリスナーを獲得できそうだ。CDやDVDなどの販売につなげることも可能だろう。

広告による収益化をうたうネットラジオ配信プラットフォームは日本で初めての試みかもしれない

ネットラジオ配信プラットフォーマーとして広告収入で稼ぐ方法と、同サービスを玄関口としてCD・DVDの販売・レンタルやチケット販売などに結び付ける方法。Rakuten.FMでは2通りのビジネスモデルが考えられる。楽天の広報は「本サービスは、広告ビジネスです」と明確に答えているが、同サービスに大勢のリスナーが集まれば、広告以外にも収益化の道が開けることは間違いない。まずは楽天が広告収入による収益化に成功できるかどうかに注目したいが、将来的なビジネスの広がりにも目を配っておく必要があるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu