電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】

電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】

2016.01.15

J:COMが電気サービスの料金プランを発表した翌日、1月7日に東京電力が自由化以降の新料金プランについてリリースした。こちらの戦略も、東京ガスやジュピターテレコムと基本的には同じで“電力以外のサービス”とのセット割引を目玉としている。加えてポイント付与にも注力しているのが特徴といえる。

東京電力本社

ポイント付与は東京ガスのサービスでも適用されるが、東京電力のほうがポイント利用に積極的な印象を受ける。

まず、月々の支払い1,000円につき5ポイントが加算される(税などをのぞく)。たまったポイントは「T-POINT」や「PONTA」に変換できるうえ、以降の電気料金にも適用できるようになる(電気料金などへの適用は2017年春をめどに実施予定)。また、Webから申し込んだ場合、500ポイントが付与されるので、新しくリリースされた「スタンダードプラン」に加入した場合、月々の支払いで生じたポイントを足すと年間約1,000円お得になるという計算だ(40A、月平均使用量400kWhを想定)。また、月401kWh以上の電気使用量がある家庭に向けた「プレミアムプラン」では、3月31日までに2年契約をすると12,000ポイント付与もしくは10,000円のギフト券がもらえるキャンペーンも実施する。

ただ、こうしたポイント付与は新たに発表されたプランに加入した場合のみ。従来のプランをそのまま継続する場合は適用されない。

リテールの販売店を提携で手に入れる

セット割引については、多様な企業との提携で実現させている。例を挙げるとニチガスやレモンガス、川島プロパン、TOKAIグループ、USENなどだ。

ソフトバンク 代表取締役社長 宮内謙氏

なかでも注目したいのがソフトバンクとの提携だろう。というのも、自由化当初は中部電力管内、関西電力管内で東京電力は営業するが、ゆくゆくは全国展開を視野に入れている。全国に顧客基盤を持つソフトバンクとの提携は、将来を見据えた戦略といえる。また、ソフトバンクショップの存在も大きく、顧客にダイレクトにリーチできるチャネルを手に入れたことになる。

一方のソフトバンクにしても、人口の多い首都圏の大多数を顧客にしている東京電力との提携にメリットを見いだしているはずだ。さらに、ソフトバンクは以前から「FIT」(“再生可能エネルギーの”固定価格買取制度)に取り組んでいるが、再生可能エネルギーだけではどうしても電力供給量が少なく、大きな事業には発展しにくい。東京電力と組むことで、潤沢な電力仕入れ先を確保したことになる。

「ソフトバンクでんき」の発表会にはタレントのトレンディエンジェルやキャスターの内田恭子さん、“お父さん”“お兄ちゃん”も駆けつけた

ソフトバンク 代表取締役社長の宮内謙氏は、1月12日に行われた「ソフトバンクでんき」の発表会で「(再生可能エネルギーの)FITの展開は進めるが、(原発事故を起こした)東電と組むのに矛盾はない」と話したことをみても、東京電力との提携に価値を感じているはずだ。

さて、数多くの電力小売事業者が首都圏の電力需要を取り込もうとしている。そうした事業者に市場を蚕食されるのは、ある程度予想できる。また、東京電力は原発事故を起こしたため、それを嫌忌しているユーザーが離れていくことも考えられるだろう。

川崎発電所に展示してあるLNGタンカーの模型。

ただ、東京電力にも大きな突破口が2点ある。ひとつは、前述したように首都圏だけでなく、全国をターゲットにできること。そうしてもうひとつが2017年に実施される都市ガス小売自由化だ。特に後者は東京電力にとって大きな転機といえる。というのも、東京電力は都市ガスの原料となる液化天然ガス(LNG)の輸入量が日本でトップだからだ。正確には東京電力と中部電力の合弁企業「JERA」が輸入しているが、その量は年間約4,000万トンで世界最大規模。実に日本の総輸入量の半分にあたる。となればスケールメリットを生かして調達価格を抑えることができ、国内での都市ガス事業を有利に展開できる。

東京電力 常務執行役 カスタマーサービス・カンパニー プレジデント 小早川智明氏

東京電力 常務執行役 カスタマーサービス・カンパニー プレジデントの小早川智明氏は「電力自由化により激しい競争になることは覚悟しているが、来年の都市ガス自由化を含め、われわれにとって好機。電力供給会社から総合エネルギー企業へ進化したい。そして福島復興の責任を果たしたい」とした。

そもそも、これほどLNGの輸入量が増したきっかけは2011年の大震災だ。原子力による電力調達が行えなくなった東京電力は、LNGによる火力発電に切り換えてきた。そして少しでも調達価格を抑え、収益を上げることで福島復興の責任を果たしたいという考えが根本にある。電力・都市ガスの小売自由化を転機に総合エネルギー企業となり、ぜひとも責任を果たしていただきたい。

全面自由化前夜……夜明けを待つ電力会社の動静

●電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】
電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【前編】
東京電力が高効率LNG火力発電への切り換えを急ぐ理由
“守り”ではなく“攻め”へ! 電力小売自由化に向けた東京電力の戦略
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu