うんこミュージアムで一躍話題に、「アソビル」は横浜の新名所となるか

うんこミュージアムで一躍話題に、「アソビル」は横浜の新名所となるか

2019.03.15

「うんこミュージアム」で話題になった横浜の新スポット「アソビル」

体験型コンテンツ、飲食店、クラフト教室など多種多様な内容を展開

目指すは年間200万人来場、コンテンツの試金石として運営

“うんこミュージアム”という強烈なインパクトを持つキーワードが一時SNSを騒がしたが、これは横浜駅東口に3月15日より開業する複合施設「アソビル」の一角にある期間限定コンテンツ「うんこミュージアム YOKOHAMA」のことだ。

内覧会でも一番の賑わいを見せていた「うんこミュージアム YOKOHAMA」

実はこのインパクト大な催し以外にも、「アソビル」では数多くの店舗・エンタメコンテンツに触れることができる。百貨店やショッピングモールが目立つ横浜駅東口エリアには、これまでなかったタイプの施設だ。その開業の狙いについて、施設内の様子を交えてお伝えしたい。

「アソビル」外観

「うんこ」だけではない、エンタメ複合施設

「(うんこミュージアムに関して)ここまでの反響があるとは予想外でした」

「アソビル」を運営するアカツキライブエンタテインメント(ALE) 代表取締役 CEO 香田哲朗氏は、SNSでの盛り上がりについてそう語った。強烈なインパクトの「うんこミュージアム」に注目が集まっているが、「アソビル」は複合型エンターテインメントビルを謳っており、さまざまなコンテンツを提供しているため、そちらも楽しんでほしいともコメントした。

古い歴史を持つ日本郵便別館ビルをリノベーションして作られた「アソビル」。B1F~屋上(5F)の6フロア構成だが、3月15日の開業段階では、以下の4フロアを中心とした営業となる。

■1F:横浜の有名店や都内の人気店が集結

1Fの名称は「横浜駅東口 POST STREET」、飲食店と常設アートのフロアだ。

1店舗ごとのスペースは小ぶりで、軒を連ねる屋台のようなレイアウト

出店ラインアップはシウマイで知られる「崎陽軒」のバル業態をはじめ、「横浜らーめん 壱六家」、「丿貫(へちかん)」といった人気ラーメン店、 「野毛焼きそばセンターまるき」、ピンチョス専門店「Spinx」など、横浜にゆかりを持つ店が集う。

蒸したての崎陽軒のシウマイ盛り合わせが食べられる
ひとつ150円~のピンチョスとワインなどをペアリングして楽しむ「Spinx」

一方で、横浜初出店となる都内の人気店も。麻布十番の人気ドーナツ店「DUMBO Doughnuts and Coffee(ダンボ ドーナツ&コーヒー)」や新宿はじめ都内中心に展開している「もうやんカレー」のほか、青山のチーズ専門店の別業態「DAIGOMI BURGER」など、合計18店舗がオープンする(※一部店舗は3月下旬~4月以降に開業)。

「DUMBO Doughnuts and Coffee」は、シドニー発の「テラボールシェイク」風にドリンクの上にドーナツを載せてInstagramに投稿されることでも知られる人気店。ドーナツは大きさに反して軽い食べ応え
チーズのシズル感が目をひく「DAIGOMI BURGER」

■2F:「うんこミュージアム」ほか体験型コンテンツを提供

2Fは「ALE-BOX」、映画館のシアターのような扉が複数立ち並ぶフロアで、各部屋で異なる体験型コンテンツを楽しむことができる。「うんこミュージアム」があるのもこの階だ。コンテンツは定期的に入れ替わる。

「ALE-BOX」フロアは体験型コンテンツの集合シアターのような趣
インスタ映えならぬ「うんスタジェニック」を狙う一角。このコンテンツは面白法人カヤックがALEと共同で企画。会期は7月15日まで

話題の「うんこミュージアム」、“ミュージアム”と銘打っているが、内覧した感触としては、スタッフのアテンドの仕方や設置内容などが、池袋のナンジャタウンなどの施設に近い雰囲気。「インスタ映え」するスポットも多く、グループや親子連れでの来館向きとなっていた。

オープン時は、SCRAPが提供する脱出ゲームや、キングコング・西野亮廣氏の絵本「えんとつ町のプペル」の世界を表現したVRコンテンツ、体験型ショートフィルム「THE STORY HOTEL」が展開される。

「リアル脱出ゲーム」を提供する「横浜ヒミツキチオブスクラップ」。オープン時には2つのコンテンツが展開される
「えんとつ町のプペル」VRコンテンツは、VRが得意な「奥行き」と「浮遊感」が活かされた構成。脅かす要素はないのでVR初心者でも安心して楽しめる

■3F:作家からレクチャーを受けハンドメイドを体験

3Fは「MONOTORY」、「ものづくりワークショップ」のためのハンドメイド体験フロアだ。

他のフロアと比べゆったりとしたレイアウトとなっており、多数の講師が一度にレクチャーを行える
アクセサリーや彫金加工、陶芸、レザークラフト、食品サンプルなどさまざまなジャンルの手仕事を体験できる

手仕事のレクチャーのほか、3DプリンタやUVプリンタ、レーザーカッターなどの機材も設置。20ジャンル、200種類以上の「ものづくりワークショップ」を展開予定となっている。

UVプリンタなどの機器も設置されており、ハンドクラフトのみならず、デジタルファブリケーションにも触れられる
内覧会当日は、好みの施設のマスコットキャラと枠を選び、名入れをしてUVプリンタでオリジナルキーホルダーを作るコーナーが展開されていた

■RF:元プロ選手に教わるスポーツ教室を実施

屋上は「マルチスポーツコート」として、フットサル・バスケットのコートを1面ずつとれる広さのコートを用意し、3月1日より運営をすでに開始している。この2競技に限らず野球から最新アクティビティなどの実施も予定する。

駅至近にありながらスポーツを楽しめる

このほか、B1Fにバーラウンジ「PITCH CLUB」(3月15日はプレオープン、グランドオープンは4月5日)、4Fに子供向け施設「Puchu!」(5月初旬オープン)がある。

バーラウンジ「PITCH CLUB」

東口のあらたな目的地となれるか

1つのビルにこれだけ多数の要素の「アソビ」を盛り込んだこの施設だが、横浜東口の開発想定エリア内に位置しており、期間限定の運営を前提として開業する。説明会では「最低3年は営業する」と明言されたが、再開発の動向を見て営業期間を判断するという。

駅出口からアプローチした場合アソビルそのものは見えないため、横浜中央郵便局を目印に、向かって右手にある「みなみ東口通路」を進むことになる

横浜駅東口エリアに隣接するみなとみらいエリアには、資生堂など大企業の本社機能が移転される。そういった意味でも今後、同エリアの人の流れは増加することが予想される。

同施設の各コンテンツに対する予約動向も明かされた。年齢は30代を中心に前後10歳がボリュームゾーンとなっており、男女比率はやや女性が多くなっていたという。予約者の住所は、7割の人が神奈川県、次いで都内が2割、そのほかは日本各地、海外の合計で1割となる。まずは地元民の心をどれだけつかめるかということになりそうだが、ALE香田社長はそのフェーズを越えて「今後はインバウンド含め、旅行の目的地としてより多くの人に来てほしい」と展望を語っていた。

こうした背景を受けてか、初年度の目標は「200万人来館」と大きな数字を掲げる。今後5年以内に日本では主要都市を中心に展開、海外展開も意欲的に行う。「アソビル」は館全体でもフロア単位でも横展開が可能であるとし、この施設での反応を見て、多店舗展開の内容を決めていくという。各コンテンツの反響を見る試金石としての役割を重要視しているようだ。

その一方で、横浜観光という視点でみれば、横浜駅東口エリアはショッピング目的の来訪であれば利便性に長けているものの、観光面での魅力は多いとは言えなかった。

また、同施設ほど近くに大きなレストランを運営している崎陽軒を例にとっても、価格帯が高めであったり、混雑するため予約なしに立ち寄るのは難しかったりと、横浜ならではの飲食店を気軽に利用するのは意外に難しい。そのため、アソビル内の多様な体験コンテンツや飲食店は、観光客にとっても見どころのあるものになっていると感じた。

「アソビル」は「うんこミュージアム」を起爆剤に横浜駅東口の新しいにぎわいを創出できるか、オープン以降の動きに注目していきたい。

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先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

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ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出展:M&A online データベース

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