ルノー・日産・三菱連合は新時代へ、「ポスト・ゴーン」をリードするのは誰か

ルノー・日産・三菱連合は新時代へ、「ポスト・ゴーン」をリードするのは誰か

2019.03.13

ルノー、日産、三菱自動車のトップが会見

複雑かつ微妙な資本構成、実力では日産がリード?

アライアンスは「ポスト・ゴーン」へ、リーダーは誰か

3月12日、ルノーのジャンドミニク・スナール会長、ティエリー・ボロレCEO、日産自動車の西川廣人社長、三菱自動車工業の益子修会長CEOは、そろって日産の横浜本社で記者会見し、4人で新合議体「アライアンス・オペレーティング・ボード」を設置して、3社連合の維持・発展を目指していくと発表した。

「ポスト・ゴーン」は合議制、アライアンスが再出発

ルノー、日産、三菱自の日仏3社連合を圧倒的なリーダーシップで引っ張ってきたカルロス・ゴーン元会長が逮捕されてから4カ月。ゴーン元会長が保釈されたばかりというこの時期に、ルノーでゴーン氏の後任を務めるスナール会長とボロレCEOが来日し、西川・益子両首脳と会見に臨んだ。この動きは、3社トップによる合議制に移行することで連合を継続・発展させていく姿勢を世間に知らしめたもので、「ポスト・ゴーン」に舵を切ったことを強く印象づけた。

しかし、資本構成で日産がルノーの子会社という位置づけにあることは変わらず、かつ、ルノーのバックにはフランス政府がいる。フランス側は両社の経営統合を望んでいるとも言われている。

そんな状況の中、フランス政府から送り込まれた形のスナール新会長は今回、3社の新合議体の議長には就くものの、「日産の会長になろうとは思っていない」と明言。資本関係の見直しに関しても「今回のポイントではない。フランス政府は株主として尊重するが、3社の将来に向けた検討に集中したい」とし、フランス側の圧力を当面は避けると強調した。

左からルノーのスナール会長、日産の西川取締役社長兼CEO、三菱自動車の益子取締役会長CEO

その背景には、世界の自動車産業が次世代をにらんで激しく揺れ動いているという現状がある。ルノー、日産、三菱自の3社は、国際連合の維持が各社の生き残り策として上策であると判断したのだろう。

3社連合の関係性は微妙かつ複雑だ。資本構成からいくとルノーの子会社が日産、日産の子会社が三菱自という構図だが、売上規模や技術力では日産が優位に立っていて、三菱自は日産主導による再建下にある。ルノーでは、日産の持ち分法利益が全体の業績に大きく寄与している。スナール会長は「力を結束し、3社連合の競争力を高めること」が最優先であるとし、資本構成や主導権などの課題は後回しにしてでも、連合を維持することが大切との考えを示したわけだ。

3社トップ会見の裏で「ゴーン会見」の情報も

日産横浜本社での記者会見は、スナール会長の「今日は、3社連合にとって特別な日だ」という言葉から始まった。明らかに、カルロス・ゴーン前会長の3社連合支配からの脱却を意識した発言という感じである。3社の会長を兼務し、なおかつ連合統括会社の会長にも就任することで、強いリーダーシップを発揮してきたゴーン会長の運営には、功罪相半ばするところがあった。強権・独断のゴーン流は、今回の逮捕につながる“私物化”の容認(?)ともなっていたのだ。

実は、この3社トップ会見と同じ12日に、ゴーン元会長が会見を“ぶつけて”くるとの情報が業界を駆け巡っていた。その日、弁護士事務所で弁護団と協議したゴーン氏は、夕刻にも会見を開き、一連の容疑に対する反論などを提示するのではないかと注目された。だが、結果としてゴーン氏の会見は日延べされた。

スナール会長のいう「特別な日」とは、そのゴーン氏による支配体制に別れを告げた日ということである。スナール会長が議長となり、ボロレ、西川、益子の各社CEOが参加する合議体を立ち上げ、3社連合を4トップによる集団指導体制に移行すると宣言したのだ。これにより、「アライアンスの効率化を進めて体制を再構築し、個々の力を高める。これはいわば、アライアンス発足当初の精神を取り戻すことでもある」とスナール会長は強調した。

会見ではゴーン氏について多くの質問を受けたスナール氏だったが、「推定無罪が私の信念」とし、多くは語らなかった

ちょうど20年前の1999年3月27日に、日産とルノーは資本提携を発表した。『日産とルノー、力強い成長のために』と書かれたボードを背景に行われた両トップの提携会見では、ルノーが日産の自主性を尊重し、両社の相乗効果(シナジー)創出を図る国際連合企業体とすることが強調された。

マスコミは「日産、ルノーに身売り」の見出しで本件を報道したものだが、当時の日産社長でルノーとの提携を決断した塙義一氏は、「日産、ルノーの基本認識は、日産のアイデンティティを従来のまま保つとともに、将来のために互いに利用し合うということ。だから、従来の合併とは異なる、新たな国際企業連合体なんです」と筆者の取材に答えてくれた。

「身売り」と報じられたルノー・日産連合だったが、20年を経過した今では、統合・合併とは異なる国際連合の成功例となり、そこに三菱自も加わった。ゴーン元会長は「世界覇権をとれる3社連合に躍進した」と豪語していたが、個別に見ると、日産565万台、ルノー388万台、三菱自122万台を足し合わせた販売台数(2018年実績)は、世界第2位の規模となっている。ただ、単なる台数の合計では、この激動のモビリティ新時代を生き抜いてはいけないという実態もある。

日産がリーダーに? ガバナンス刷新と業績回復がカギ

ルノーと日産、そして日産と三菱自。この3社連合は、資本構成でそれぞれ複雑に絡み合う。ルノーは日産に43%、対して日産はルノーに15%を出資しており、ルノーは1999年の資本提携以来、日産の筆頭大株主であり続けている。一方、日産はルノーの議決権を持たない。その日産は2016年10月、三菱自に34%を出資して傘下に収め、三菱自は日産主導による再生の途上にある。

その資本関係をベースとする3社連合は、プラットフォームの共用化や部品の購買・物流、研究開発、生産などの協業で相乗効果を追求している。3社のトップは「今の自動車業界ではスピードが重要。権限委譲と責任の明確化、アライアンスの効率化で競争力を高める」と口をそろえた。ポスト・ゴーンの3社連合は、自動車業界の大変革を生き抜くため、スピード感を持って事に当たり、各社の得意分野を活用して相乗効果を高めていくことで一致したということだ。

だが一方で、「ねじれ現象」とも言えるルノーと日産の“宿命的な資本関係”については手を触れず、先送りにした格好だ。今回の会見では、ゴーン元会長に代わり、ルノーから新しい会長が日産に送り込まれることはないということが分かった。西川社長は「従来のように、ルノーの会長が日産の会長になることを求められないのは大変ありがたい」とした。

日産としては、ゴーン長期体制による取締役会の機能不全など、ガバナンスの立て直しが急務であり、本業の業績が低下していることも大きな課題となっている。「今、私が抱えている課題は、アライアンスの安定、ガバナンスの刷新、業績安定の3つだ」というのが西川社長の現状認識だ。4月8日の臨時株主総会では、ゴーン元会長の取締役解任など経営陣の刷新を行う。

日産と三菱自の関係を見ると、日産主導による三菱自の再生は順調に進んでいる。3月14日には、両社トップ臨席のもと、三菱自・水島工場(岡山県倉敷市)で共同開発の新型軽自動車のラインオフ式を実施するとのこと。同28日には、日産の新型「デイズ」と三菱自の新型「ekワゴン」が発表される予定となっている。

ルノーと日産の提携から数えると、20周年を迎えるアライアンスは今、大きな転換点を迎えている。強力なリーダーシップを発揮してきたトップは退場したが、ポスト・ゴーンの3社連合をリードするのは日産であるべきだ。経営統合の道を進めば、日産はルノーに吸収合併されたという印象を拭えないだろう。自立して連合をリードする日産の姿を見たい。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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