PMS(月経前症候群)記録デバイス「Monicia」が、600万円超の支持を集めた理由

PMS(月経前症候群)記録デバイス「Monicia」が、600万円超の支持を集めた理由

2019.03.05

PMS(月経前症候群)のモニタリングツール「Monicia」

クラウドファンディングで目標達成、今も支援が集まっている

コニカミノルタの新規事業に寄せられた声は

女性を悩ませるPMSこと「月経前症候群(Premenstrual Syndrome)」。近年、その認知度はじわじわと上がってきているものの、症状の内容や強度は個人差が著しく、月経の俗称「生理」からの連想もあってか、治療対象としてのイメージが向上しているとは言えない。そのため、当事者である女性達にとっても、いまだ自分事とされていない部分が多いのが現状だ。

PMSの症状例(Monicia CFページより)

しかしながら、働く女性を対象にした調査では、女性の半数以上がPMSの症状を抱えているという結果(日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」より)も出ている。勤労人口の減少が進み働き方改革が叫ばれる中で、女性のQOLを著しく下げるPMSが放置されてしまうことは、当事者以外の人々にとっても見逃せないリスクといえる。

そんな中、コニカミノルタがPMSの症状を記録するセルフモニタリングツール「Monicia」を発表。クラウドファンディング(以下、CF)で支援を募ったところ大きな反響があり、目標金額の500万円を上回る635万円(3月5日現在)を集めることに成功した。

Monicia

大手メーカーのクラウドファンディング利用は近年散見されるようになったが、このプロジェクトではどのような経緯でCF活用を決めのだろうか。

支援募集の締め切りを間近に控える中、自らもPMSに悩み、体調改善に10年を費やしたというプロジェクトリーダーの江尻綾美氏に、「Monicia」のCF活用の経緯、そして支援者からの反響について語ってもらった。

Moniciaとは?

女性が自身のPMS症状を把握するには、毎月の月経周期に伴う心身の変化を記録することが必要となる。しかし、長いスパンでの継続は難しく、PMS由来の体調不良の折にそれ自体の記録を取ることは難しい。先述の調査でも、「女性の半数以上がPMSの症状を感じている一方、有症者の63%が特に対処を講じていない」という結果が出ている。

「Monicia」製品構成(スマートフォンは含まれない)

「Monicia」は、PMS症状を感じる女性のセルフモニタリングを支援するためのデバイス(衣類内体温計)とスマホアプリのセットとなっている。無理なく計測・記録を続けられる製品を提供するため、サービスデザインの検討に対しデザイン・イノベーション・ファーム「Takram」の協力を受け、デバイスは衣服内温度計開発メーカーと共同開発。アプリは、京都大学COIにおいて京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学 江川美保 助教、万代昌紀 同教授らの研究グループとの共同研究成果を活用するなど、コニカミノルタ社内にとどまらず、各所と連携し、良質なデバイス提供を目指している。

PMSの記録には体温計測が必須となる。睡眠中に計測可能な衣類内体温計と連携するアプリで、手軽な記録をサポートする

CF活用で生まれた波及効果は?

――大企業がクラウドファンディング(CF)で新規性の高いデバイスの支援を募る例は近年散見されますが、御社がCFを活用したいきさつを教えてください。

江尻氏:私たちは、PMS(月経前症候群)の悩みを持つ女性に寄り添うサービスとしてセルフモニタリングツール「Monicia(モニシア)」を届けたいと考え、PMS症状の重たい方へのインタビューや、イベント・セミナーなどで様々な方のご意見を聞きながら、Moniciaの開発を進めてきました。

しかしながら、社内で量産化に向けた審議をうけるにあたり、

・PMSの認知度がまだまだ世の中には広まっていないのでは?
・PMSに関する商品・サービスが世の中に本当に受け入れられるのか?
・PMS症状を抱える方がお金を払ってでも体調記録によるセルフモニタリングツールを試したいと思っているのか?

など、世の中への受容性が不確かなことへの懸念がでていました。そこで、Moniciaの受容性調査を目的としたテストマーケと、量産化に向けた評価資金の獲得を目指してCFに挑戦しました。

月経周期を管理するサービスには「月」を想起させるものが多いが、「Monicia」は「PMSに悩む女性の寄り添うサービスであることを大切にする」という意味で、「朝:Morning」を想起させるデザインをコンセプトに盛り込んだ

――支援を募るなかで応援コメントが多く寄せられたと思いますが、印象的なものにはどんなものがありましたか?

江尻氏:今回印象的だったのは、PMS症状で困っている方からのMoniciaへの期待の声、そしてMoniciaによる体調記録を続けることによって、症状が良くなっていくといった声を多数いただくことができたことです。

また、男性の方からのコメントの中には、このクラウドファンディングのプロジェクトページを知ったことで、パートナー、家族とPMSについて話すきっかけになったとの声もいただいており、PMSの理解を深める一助になれたこと嬉しく思います。

――支援者、ならびにMoniciaに注目している人たちに向けて、コメントをお願いいたします。

江尻氏:私自身、以前はつらい症状に悩まされていた中、体調記録を通して、生理前に繰り返す症状に気づいたことから、症状改善に向けた一歩を踏み出すことができました。

PMSで悩む女性が周期的なココロとカラダの変化に気づき、つらい時期に備えることや、スケジュールの調整や生活の工夫を続けていくことで、自分らしく前向きに仕事や生活を続けていくような社会の実現への一助となれたら、そんな願いを込めてMoniciaの開発を続けてきました。

「体調記録」によるセルフモニタリングがPMSの対処の基本になることは、まだ世の中にあまり知られていない状況です。多くの皆様にPMS症状への理解を深めていただけるようMoniciaの事業化と啓発活動を今後も進めていきたいと思います。皆様、引き続きこのプロジェクトへの応援をよろしくお願いいたします。

見えた糸口、集まった支援

600万円超もの支援額が集まった「Monicia」。その裏には、ばらつきの大きいPMS症状への対処法を見つけられずにいた女性たちの期待があったのではないだろうか。

個人差も大きく、女性間でも共感が難しい症候群であるが故に、どんな対処を行えばいいか、という情報は広がりにくい。専用デバイスとアプリによる記録を行えば、ひとり一人異なるであろうリスクファクターや症状の傾向をつかみ、必要な処置・治療を行う糸口となりうる。当事者にはなりえない男性からも、発現する症状だけでなく、その背景にある仕組みを知ることは納得感を生み、対話のきっかけになるようだ。事業化に向けた「Monicia」の今後の動向にも期待したい。

「Monicia」先行申し込み券、3月10日まで受付中

「Monicia」の購入権を含む支援コースはすでに閉め切られているが、PMSや月経不調に関しての基本がわかるMOOK本と、Monicia先行申込み券がセットになった「1000円コース」を受付中。初回発送の次の段階で手にできる権利を得られるので、申し込みそびれた人、今回存在を知った人は検討してみては。

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ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

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2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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