あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

2019.03.01

ブラザーが次の3年間に向け中期経営計画を発表

改めてプリンティング領域での勝ち残りを目指す

佐々木社長はブラザーらしさを強みとしたいと強調

ブラザーグループは、2021年度を最終年度とする中期経営戦略「CS B2021」を発表した。2021年度に、売上収益で7,500億円(新計画の為替レートを反映した2018年度見通しは6,650億円)、営業利益が750億円(同645億円)、営業利益率は10.0%(同9.7%)を計画する。また、今後3年間に500億円の成長投資枠を設定。産業用領域のさらなる拡大、新規事業の創出および育成などに投資する。

ブラザーグループが新中期経営戦略を発表した。会場になったのは愛知県名古屋市のブラザーミュージアム

中長期の計画、改めてプリンティング勝ち残りを打ち出す

ブラザー工業の佐々木一郎社長はCS B2021について、「会社の成長を中長期的に捉え、次の成長に向けた経営基盤に作り直すことが大切だと考えた。それが、今回の中期経営戦略の基本的な考え方になる」と説明する。「TOWARDS THE NEXT LEVEL(次なる成長に向けて)」をテーマに、まずは「プリンティング領域での勝ち残り」、そして「マシナリー・FA領域の成長加速」、「産業用印刷領域の成長基盤構築」、「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」をあわせた計4項目に取り組むとした。

ブラザー工業 代表取締役社長の佐々木一郎氏

佐々木社長はCS B2021の計画にあたり、社員に「ブラザーの強みはなにか」と聞き取りをした。社員の答えは、「時代の変化に対応してきた柔軟性、きめ細かいニーズに対応する小回り力、コストパフォーマンスに優れた製品によるコスト競争力だという声が多かった」というが、一方で、「ブラザーの弱みはなにか」と聞くと、「スピードが落ちてきている。危機感が欠如している」という声があがったという。佐々木社長は、「これまでの強みが、弱みになっている。大企業ではないのに、社内に大企業病がはびこっている。もう一度、巻き直して、本来の強みを研ぎ澄まさないといけない」と危機感を感じたという。

そして、「あれもこれもやるのでなく、大事な課題に絞り、取り組んでいく」という決断をした。具体的には、「事業基盤の整備と、プリンティング事業での勝ち残り戦略をきちっとやっていく」ことを柱に据えた。そして、その先を見据え、「産業用領域を次世代の柱になるように伸ばしていく」ことを盛り込んだ計画とした。

CS B2021の骨子。計4項目に取り組む

プリンティング中心から複合事業企業への転換は?

ブラザーではかねてより、グループ全体に向けて「グローバルビジョン21(GV21)」という経営ビジョンを掲げており、その目標として、「グローバルマインドで優れた価値を提供する高収益体質の企業」、「傑出した固有技術によってたつモノ創り企業」、「“At your side.”な企業文化」の3つを掲げている。

今回発表した「CS B2021」は、同ビジョンの実現に向けたロードマップに位置づけられている。

CS B2021は、ブラザーの経営ビジョン「グローバルビジョン21」の実現に向けたロードマップの役割をはたす

このひとつ前の計画、2018年度を最終年としていた「CS B2018」では、プリンティング領域中心の事業構成から、複合事業企業体への変革を目指していた。それとともに、事業、業務、財務の3つの変革に取り組み、プリンティング領域での大幅な収益改善、産業用領域での売上げ成長を達成している。

CS B2018で掲げていた目標

だが佐々木社長は、「プリンティング事業領域では、デジタル化の進行によって、印刷機会が減少。これからもインク、トナーの純正率の減少が進む。また、所有から利用へと購買行動の変化、サービスニーズの多様化などが変化が見込まれる。産業用領域においても、省人化や自動化、トレーサビリティやカスタマイズ需要が高まっている。GV21の達成のためには、これまでに以上に踏み込んだ改革が不可欠であり、もっとスピードをあげて取り組み必要がある」と、事業環境の変化がいっそう著しいなかで、改革の手を緩める余裕は無いことを強調する。

顧客とつながるブラザーらしいビジネスモデルを提供

CS B2021における「プリンティング領域での勝ち残り」では、「ブラザーらしい新たなビジネスモデルへの転換を加速する」として、「売り切りではなく、顧客とつながるビジネスモデルモデルへの転換」を進めることで、ブラザーらしい価値を提供し続けながら勝ち残りの実現を目指すという。

個人およびSOHO向けには、大容量インク/トナーモデルや、消耗品のバンドルといったTCO(Total Cost of Ownership: 総所有コスト)に優れた製品提案により、本体収益を向上させる。消耗品を手軽に購入できるサービスを拡充することで、顧客が気をつかわずに済む自動発注サービスや、月額定額モデルの導入を推し進める。さらに、プリンターに連携するスマホアプリの充実など、新たな用途提案も行っていくという。

「ファーストタンク」搭載の大容量インクプリンター

また、中小企業向けには、チャネル・パートナーとの緊密な協業により、本体、サービス、消耗品を対象とした契約型ビジネスモデルを強化する。中小企業の顧客が求めるカジュアルなソリューションを提供することで、顧客とのつながりを強化するとした。佐々木社長は、「競合各社が強固な直販体制を敷いており、いまからそこで対抗していく必要はない」という考えから、「パートナーによる販売体制をさらに強化していく」と説明する。

上記のような新規ビジネスモデルによるプリンター販売台数の比率は、2018年度には15%ほどというが、これを3年間で倍増させて、2021年には30%に高める考えだ。

新ビジネスモデルの割合を倍増させる計画だ

そのほか、高付加価値を持った上位機種へのシフトも促す。A4が主力のプリンターメーカーというユニークなポジションを最大限に活用したOEM供給も拡大する。さらに、通信・電気配線用マーキングや製造業向けラベルプリンター事業の拡大など、特殊業務用途へのビジネスにも拡大の余地があるという。売上増加施策を出す一方で、事業コストを削減するため、生産設備の自動化を推進し製造原価を低減するとともに、生産拠点を最適化し、加えてバックオフィス業務の効率化にも取り組むとした。

ところで2021年度のプリンティング領域の売上収益は、計画では3,880億円を目指している。ただ2018年度の見通しが既に3,820億円であり、つまり売上規模では大きな成長を見込んでいない。これについて佐々木社長は、「いまのプリンティング事業は出来すぎている。プリントボリュームの減少や、互換インクの広がりを考えると、これ以上の増益は見込めない」と説明する。通信・プリンティング機器の市場が縮小するなか、売上規模は維持したい考えだ。ラベルプリンターなどの電子文具は、高いプリントボリュームの業務用途が見込まれることから「売上拡大を目指す」としている。

2021年度計画、プリンティング以外の3領域は?

「マシナリー・FA領域の成長加速」では、自動車や一般機械市場の強化による産業機器分野の大幅な成長と、省人化や自動化ニーズを捉えたFA領域の拡大を目指す。

「ボラタリティの高いIT市場では大きな成長を見込まず、自動車および一般機械市場で高い成長を見込む。ここでは、リソース増強や拠点拡充を計画している」(佐々木社長)という。

2018年度見通しでは550億円の売上収益を、2021年度には810億円に拡大させたい考えだ。

「産業用印刷領域の成長基盤構築」でも成長を再加速する。ブラザーはこの領域の事業に参入するため、ペットボトルやワインボトルなどのラベル印刷などに実績を持つ、産業用印刷の英国ドミノ社を買収、子会社化している。ドミノ社の製品およびサービスでの競合優位性を最大限生かし、新製品の投入と販売やサービスの強化、チャネル投資の強化を行い、大幅な成長を目指す。

英ドミノのインクジェットプリンター

特に、食品の賞味期限などを印刷するモノクロプリンティングのC&M(コーディング&マーキング)は、既存顧客とのつながりを基盤に、市場全体の成長を上回る伸びを目指す。物流分野でも、荷物に貼付するラベルを高速で印刷するといったニーズが広がっているほか、ダンボールへの直接印字や、印刷したラベルの自動貼付といった二次梱包領域でのニーズも生まれているという。

産業用印刷の市場規模は巨大で、成長にかける期待も大きい

一方で佐々木社長は、「ドミノでの開発が遅れているのが実態」という懸念もあるというが、「ブラザーとのシナジーによる開発体制の強化によって、開発スピードを向上させるほか、顧客のもとに出向いて、ニーズに則した開発を行うブラザーの手法も導入していく」と改善を目指す方針だ。

2018年度には680億円だったドミノ事業の売上収益は、2021年度には880億円を目指す。

そして最後に「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」では、グループ全体の業務プロセスを抜本的に見直し、業務を効率化させるとした。RPAやAIの活用により、定型業務の自動化も進めるという。佐々木社長は、「より少ない人数で、短期間に、低コストで開発できるようにする。これにより人員を最適化し、新たな領域への人員を捻出していく。業務生産性を10%向上させ、総業務時間の10%にあたる約70万時間の創出を目標とする。これは原点回帰の取り組みとして重要なものになる」話している。

また、収益管理を強化し、きめ細やかにテコ入れや立て直し施策を実行していく姿勢もみせた。「利益が出ていないビジネスは、利益が出ているビジネスに隠れてしまって見えない。サブ事業単位で損益管理をすることで、不採算事業や低収益事業の収益改善につなげ、80億円の営業利益改善を目指す」とした。

ブラザーらしさへの原点回帰、成長につながるかに注目

2021年度の成長計画を発表する一方で、売上収益では約600億円の未達に終わった2018年度までのCS B2018を、佐々木社長は次のように総括する。

「600億円の未達は、為替影響でマイナス400億円、事業の落ち込みでマイナス150億円、会計制度の変更の影響でマイナス50億円という要因があった。プリンティング事業、産業機器事業、ドミノ事業は計画を上回ったが、他の事業により下回った」

「CS B2018では、できたこともあるが、積み残したこともある。積み残したことは、産業領域での成長加速、新規事業の仕込み、事業の選択と集中の徹底のほか、抜本的な業務プロセスの変革によるスヒード、コスト面での競争優位の確立だ。さらには、育成や成長機会の提供を通じたグループ全体での人材の底上げ、全社的な筋肉質化に向けた組織横断での最適人材体制の実現などもあげられる」

これらを新たな中期経営戦略のなかで解決していくことになる。

佐々木社長は、「新たな中期経営戦略は、成長を中長期的に考え、この3年間は、次の成長のために会社を強くしていく期間だと捉えている。そのためには、改革を、もっと早く、もっと踏み込んで進めていきたい」と意気込む。

ブラザーを取り巻く環境が厳しいのは確かだが、それを生き抜くためのCS B2021の中身は、ブラザーらしさへの原点回帰が柱だ。

基盤強化を前面に打ち出した中期経営戦略ではあるものの、売上収益および営業利益は3年間で2桁増を見込む、高い成長目標を組み込んだものになっている。果たして成長と基盤強化を同時に進めることができるかが、この3年間の注目点になりそうだ。

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大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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