ウメハラ選手の考える「プロになりやすい状況」が生んだeスポーツの弊害とは

ウメハラ選手の考える「プロになりやすい状況」が生んだeスポーツの弊害とは

2019.03.07

日本初のプロゲーマー・ウメハラ選手にインタビュー

昨今のeスポーツを取り巻く環境について話を伺った

プロになりやすすぎる今のeスポーツに警鐘を鳴らす

2018年は“eスポーツ元年”と呼ばれるほど、eスポーツ関連の話題がさまざまなメディアで取りあげられるようになった。動画配信を見たり、会場で試合を観戦したりと、最近初めてeスポーツに触れたという人も多いのではないだろうか。

しかしながら、名称としての「eスポーツ」が世間で通じるようになっただけで、いわゆる「ゲーム大会」自体は20年以上も前から開催されている。そこで、黎明期からゲーム大会に参戦しているプロ格闘ゲーマーのウメハラ(梅原大吾)選手に、昨今のeスポーツムーブメントについて話を伺った。

今回のeスポーツブームは1~2年では終わらない?

――昨年は流行語大賞にランクインするほど、eスポーツが多くの人の目に触れました。長年ゲーム大会に出場し、結果を出してきたウメハラ選手は、このeスポーツのムーブメントをどう捉えているのでしょうか。

ウメハラ選手(以下ウメハラ):“eスポーツ元年”という言葉はよく聞きます。ただ、僕は2010年にプロゲーマーになったので、急に変わった印象はないんですよね。たしかに、右肩上がりで拡大しているのはわかりますが、「ここが境目」というのを感じたことがありません。むしろ、昨年って、何か変わったりしたのでしょうか?

――2018年は日本eスポーツ連合(JeSU)の発足に加えて、eスポーツのプロリーグがいくつか発足しました。クラロワリーグモンストプロツアーぷよぷよカップ、さらにパワプロのeBASEBALLも昨年からプロ選手によるeスポーツリーグが始まっています。ウメハラ選手がプレイしている『ストリートファイターV AE(ストV)』も、RAGEの団体戦が昨年から開始してますよね。

ウメハラ:ああ、なるほど。いろいろ始まったんですね。

とはいえ、「ブーム」というものは長続きしないので、日本のeスポーツが単なるブームであるとすれば、いつまで続くのか興味もありますね。自分自身としては、世間的にまったく注目されていなかった頃からやっていたので、もし、このまま廃れてしまっても、元に戻るだけでしょう。

プロゲーマーのウメハラ(梅原大吾)選手。15歳で日本を制し、17歳で世界チャンピオンのタイトルを獲得。2010年4月、米国企業とプロ契約を締結して日本初のプロゲーマーになると、同年8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス記録に認定される。2016年、さらに2つの認定を受け、3つのギネス記録を持つ。現在、レッドブル、Twitch、HyperX、Cygamesの4社によるスポンサード・アスリートとして世界で活躍中。著書に『勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』(小学館)、『1日ひとつだけ、強くなる。』(KADOKAWA/中経出版)など

――最近では、ゲーム業界以外の企業もeスポーツに参入してきています。ただ、投資の観点では、結果が出ないとあっという間に手を引かれてしまう可能性があるでしょう。そのような状況についてどうお考えですか。

ウメハラ:現状、人気選手の出場する大会は集客ができていますし、イベント自体が人気の場合は会場が大盛り上がりです。ですが、すべてのイベントがそうではないので、eスポーツ全体で考えると「そこまでではない」という印象ですね。マンガの『ワンピース』が売れているからといって、マンガ業界全体が潤っているわけではないのと同じです。

成功している例だけを取りあげて「業界がアツい」と錯覚し、「eスポーツが流行っているみたい」程度の考えで参入すると、なかなかうまくいかないのではないでしょうか。その結果、「収益が出ないので撤退する」ことはあると思います。そうなったときに、このeスポーツのムーブメントがどのように変化していくのか気になりますね。

ただ、心配はしてません。メディアに取り上げられなくなって注目度が下がっても、元々あった格闘ゲームコミュニティの核となる部分は変わらないので。eスポーツが生まれる前からあった僕らのコミュニティは、eスポーツがあってもなくても存在し続けますからね。

――ゲーム大会が世間的に注目されたのは、ウメハラ選手が活躍した『ストリートファイターII(ストII)』や『ストリートファイターZERO』の頃が最初で、次に『バーチャファイター(バーチャ)』が社会現象になったときでした。そして今回が3回めになるわけですが、このムーブメントは、以前と比べてどのように感じていますか。

ウメハラ:規模は回を追うごとに大きくなっている印象です。関わっている企業も多くなっているでしょう。例えば、『ストII』や『バーチャ』が盛り上がったときは、単純にそのゲームが流行っていたので、タイトルをリリースしているメーカーが利益を得る構造だったわけです。つまり、1社しか得しない。ですが、今のeスポーツブームは、いろいろなゲームがeスポーツとして関わっているので、その点で様子が違います。

『ストII』ブームが終わったところで、他のメーカーはなんとも思わないでしょうが、今回はeスポーツという世界が注目されているので、「ゲームを使って競い合う」ことが廃れたら困る企業、団体はたくさんいます。そう考えると、以前のように1~2年で終わってしまうブームではないのかもしれません。

プロの決心がつけば、ファン対応は自然と身につく

――eスポーツが急速に広まったことにより、選手だけでなく観戦者も増えてきています。プロとして、オーディエンスやファンへの対応も必要になると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

ウメハラ:ファンの方々はもちろんですが、応援してくれるお客さんですよね。飲食店だろうが、なんだろうが、お客さんがいないことには成り立たないので大切です。その方たちへの感謝は忘れたことはありません。感謝の意は言葉よりも行動や態度で示すべきだと思っていますので、サインや写真撮影などは100%行うようにしています。

――eスポーツブームによって、いきなりプロ選手として扱われてしまうような人は、そういう意識を持ちにくいのではないでしょうか。

ウメハラ:僕もプロになる前、若い頃は、話しかけられても「ぶっきらぼうな対応」をしてしまうことがありました。その頃は、結果を出せているのは自分の努力のたまものだと思っていたので。

若い頃って、自分のことばかり考えがちなので、誰かにちゃんと教育してもらわないと、周りで支えてくれている人たちのありがたみが分からないものです。今の若い人たちも、特にこの業界でやっていくかどうか決めかねているのであれば、周囲への対応がおざなりになってしまうかもしれません。ただ、長くやっていく決心ができれば、徐々に身についていくのではないでしょうか。

もう1つ懸念しているのが、ブームのときに入ってくることの大変さですね。

僕は昔から、成功しては天狗になり、失敗しては卑屈になりを繰り返してきて、今があります。人間って、成功だけでも失敗だけでもダメで、そのような経験を積み重ねることが大事なのではないでしょうか。その結果、今では成功しても失敗しても気持ちの揺れ幅が小さくなって、軸がブレなくなりました。

今のブームで入った人は、規模が大きくなって注目されている分、失敗したときに受けるダメージが大きく、その揺れ幅も大きくなっている気がします。そういう意味で、今のブームで入ってきた人は大変なんだろうなと思いますね。

――ウメハラ選手がプレイしている『ストV』も、eスポーツブームによって多くの若手が入ってきましたが、その大変な時期に入ってきた彼らに対して、何かアドバイスなどをするのでしょうか。

ウメハラ:相談されれば、自分の考えを共有していますが、僕が彼らの年齢だった頃とは状況も環境も違うんですよね。それぞれ個性があって、キャラクターも違うので、適切なアドバイスができているかはわかりません。よく、「プロゲーマーの先駆者として自分の考えを伝えるべきだ」と言われますが、10年、下手したら20年違うわけですし、考え方も違いますから、一方的な意見は言いにくいですね。

今のeスポーツには、プロになりやすいがゆえの弊害がある

――昨年の盛り上がりを受けて、今年のeスポーツには何を期待しますか。

ウメハラ:一般的なプロ競技と比べると、現状のeスポーツはプロになるのが簡単なんですよね。もちろん、なりたい人が誰でもなれるものではないですが、リアルスポーツとは違って、新作ゲームが出てから死にもの狂いで1年プレイしたらプロになれる可能性があるんです。ただし、1年くらい活躍できても、それを維持するのが難しい。プロになりやすいというのは、裏を返せば代わりがすぐに見つかるってことですから。

リアルスポーツの世界は、プロになるのが本当に大変ですが、大変だからこそ、プロになればある程度の収入を得られますし、育成してもらえる環境があります。もちろん、プロになったからといって全員が大成するわけではないですし、結果が出なければ数年で引退という厳しい現実もありますが、eスポーツもリアルスポーツのように「かなり難しい、だけど、プロになれればある程度の待遇がある」ほうが好ましいと思います。

趣味で少しやってみて、それでちょっと上手かったらプロになれるのは、やはり違うような気がします。リアルスポーツとの根本的な差が、こういった質の面で現れているのではないでしょうか。

僕はゲーム業界の発展を願っていますし、そのために努力を惜しまない覚悟はできています。決して業界の縮小化を説いているわけではありません。ですが、世の中にはバランスがあり、今のeスポーツブームはそれが明らかにおかしいと感じています。ブームの裏にeスポーツの抱える不安定さがあるように思いますね。安定した業界の成長のためには、たとえプロへの門戸が狭くなってしまったとしても、その辺の歪みは見直したほうがいいのではないかと思います。

現状には満足しているが、ガイル以外の新キャラも使いたい

――次に、ウメハラ選手個人のことをお聞きしたいのですが、選手として成績や活動など、2018年を振り返ってみていかがでしたか。

ウメハラ:『ストV』が発売された2016年、そして翌年の2017年はカプコンカップ出場に必要なポイントを稼ぐため、毎週のように海外の大会に出場し、それこそ十数カ国まわりましたが、2018年はそれに比べると早い段階でポイントを稼げたので、そこまで海外遠征に行かずに済みました。例年よりは、体力的にも精神的にも楽な印象でしたね。

――海外遠征が少なかったことに加えて、RAGEの開催などがあったので、日本での活動が増えた印象です。

ウメハラ:そうですね。そもそも海外へ遠征できるのは、大手スポンサーがついていたり、プロチームに入っていたりと、ある程度環境が整っている人たちなんですよね。日本での活躍の場が増えたことで、そこまで環境を整えられない若手でも、実績を積んで注目されて、スポンサーが付いたり、チームに入ることができたりという好循環が生まれている気がします。

先ほど「プロになりやすすぎる」と話しましたが、アメリカはeスポーツが早くから盛んになって日常化しているので、もっと簡単にスポンサーがつくこともあり、プロが身近な存在なんです。日本の格闘ゲームプレイヤーは、レベルが高い割には見返りを得られるようになるまでの道が遠いんですよね。プロになるための基準は高く設定されるべきだと思いますが、そこまでの道筋がまったくないのも困るわけです。そういう意味では、日本で活躍の場が増えたのは喜ばしいことです。

――では2019年の目標はいかがでしょうか。

ウメハラ:プレイヤーとしての目標は毎年変わらないですね。練習をして本番でそれを活かして、結果を残せればいいと思っています。ただ、「現状の課題」や「これからの目標」といったものが、実はもうないんですよ。個人的にやりたいことはすでに達成して、ひと段落した感じです。2016年からTwitchグローバルアンバサダーとして行ってきた「Daigo The BeasTV」での動画配信も、自分なりのスタイルができてきた感じもしますし。

あえて言うのであれば初心に返って、目の前のことを一所懸命やる、ですね。毎年こういう話がでると、「こういうことをしたいです」という具体的な目標があったんですが、今年は本当にそういうのが浮かばないですね(笑)。今の僕にとっては、プレイヤーとして地道な活動を続けることが大切のような気がします。

――『ストV AE』がシーズン4に入り、バランス調整や新キャラの登場がありますが、そのあたりはいかがでしょうか。配信動画では「影ナル者」や「是空」を使っていましたが、ガイルから使用キャラの変更は考えているのでしょうか。

ウメハラ:理想を言えば、新しいキャラクターを使って今年1年活動したいですね。それは是空とは限りませんが。僕はプロである前にゲーマーなので、キャラクターに新たな発見を見出したり、新鮮味を感じたりしながら楽しみたいんです。もちろん、ガイルが楽しくないわけではないですよ。

――例年通りであれば、シーズン4もあと5キャラ追加されると思いますが、その中から強さとおもしろさのバランスがいいキャラクターがいたら、そちらを使う可能性があるわけですね。

ウメハラ:もちろんありますよ。というか、そうなって欲しいです。ただ、新しいキャラクターはじっくり育てる時間がないのも事実なんですよね。1年って短いんです。ほかのプレイヤーの練度も上がっていますし、それに追いつくだけで精一杯になってしまい、トーナメントで上位に入るのはかなり難しい。そうなると、やはりガイルになっちゃうのかな(笑)。

――最後にeスポーツがまだよくわかっていない人や、ゲームをあまりプレイしない人に向けて、ひと言いただけますでしょうか。

ウメハラ:eスポーツと聞いて、「なんじゃそりゃ」って思う人は多いと思います。業界的に盛り上がってきているので、新しい何かが始まっている雰囲気のなかで、ちょっと気になっている感じではないでしょうか。僕の専門とする格闘ゲームは、特にそれぞれの個性が輝くフィールドなので、対戦する様子を見て、僕らの独特の個性や魅力を少しでも楽しんでいただければなと思います。

――ありがとうございました!

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NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
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