加速は異次元だが…MT至上主義者・安東弘樹、テスラ「モデルX」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第16回

加速は異次元だが…MT至上主義者・安東弘樹、テスラ「モデルX」に乗る!

2019.03.13

テスラのSUV「モデルX」に試乗、安東さんの感想は

“電気マニュアル”はクルママニアの夢をかなえるか

EVシフトが進展、安東さんのクルマ選びにも影響?

全部で10台近くに乗った今回の日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会で、安東弘樹さんが「最も楽しみにしていた」と語ったクルマがテスラのSUV「モデルX」だ。マニュアルトランスミッション(MT)車のシフト操作に悦びを感じると常々話す安東さんだけに、電気自動車(EV)に注目していたことは少々意外だったのだが、実際に乗ってみて、モデルXにどのような印象を抱いたのだろうか。そして、急速に進むクルマの電動化について、クルママニアは何を思うのか。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

試乗したのは「P100D」という「モデルX」の上級グレード。停止状態から時速100キロまでがわずか3.1秒という圧倒的な加速力を誇る

気になるのは航続距離? 安東弘樹はEVを買うのか

安東さん(以下、安):(走り出してすぐ)以前、テスラの「モデルS」(セダンタイプのEV)に乗ったことがあるので、想定内ではあるんですけど、やっぱり加速はすごいですね! 異次元というか。

編集部(以下、編):“ゼロヒャク加速”が3.1秒だそうです。

:それって完全にスーパースポーツカーのレベルですよね(笑)

「モデルX」のサイズは全長5,037mm、全幅2,070mm、全高1,684mm。最大7人乗りのシートレイアウトをオプションで選べる

:シフトレバーの場所がメルセデス・ベンツと同じものが同じ位置(ハンドルの右側に付いている)に付いているんですけど、ステアリングから手を離さずに操作できるというのは、一度経験してしまうと便利ですね。あと、画面(17インチの大型タッチスクリーン)が相変わらず、でかいなー!

クルマのサイズは全長が5m超で幅が2,070mmだから、立体駐車場とかだと、まずとめられないでしょうね。このクルマ、いくらでしたっけ?

:テスラのサイトで「新車カスタムオーダー」っていうのを試してみたんですが、この「P100D」が1,780万円からで、「100D」というグレードが1,280万円からでした。

:グレードによって500万円も違うんですか! 標準で付いている装備も違うんだろうな……。

:100Dだとゼロヒャク加速は4.9秒だそうです。

:十分、速いです(笑)。いや、3.1秒という性能はいらないので、買うとしたら100Dですね。

高速道路では「オートパイロット」も試していた安東さん。白線や前を走るクルマなどを認識し、クルマがステアリングと加減速を自動制御してくれるシステムなのだが、この手の技術は「楽で寝てしまいそう」で怖いそうだ

:普通に運転していると、モーターブレーキだけで十分ですね、今、普通だったらシフトダウンするようなシーンでしたが、アクセルペダルを戻すだけで「ギューン」って減速しましたもんね。ワンペダルでも結構、運転できそうです。確か、回生の程度も選べるはずですよね()。

※編集部注:EVではアクセルペダルを戻すとモーターによる「回生」が働き、エンジンブレーキが掛かったような減速が起こる。この減速をうまく活用すれば、ブレーキペダルを踏まずに、アクセルペダルを踏んだり戻したりするだけで、ある程度はクルマを走らせることができる

:EVは、長距離を乗られる安東さんの場合、航続距離が足りないので、購入検討リストに入らないとの話をお聞きしたことがあります。このクルマだと、1回の充電で542キロ(欧州の燃費評価で用いられるNEDCという基準による)走れるとのことですが、いかがでしょう?

:私としては、500キロはリアルで走って欲しいんですけど、そんなEVは現状、ないですからね……。最低でも、400キロは走って欲しいなって思います。

「モデルX」の航続距離(NEDC)は「100D」で565キロ、「P100D」で542キロと表記されている。安東さんは最低でも500キロをリアルに走れるEVが欲しいそうだ

EVで運転の悦びを得られるか

:先ほどのワンペダル走行もそうなんですけど、クルマがEVになると、ドライバーが操作する余地は減りそうな気がします。当然、エンジンを積んでいなければ、ギアチェンジも不要だと思いますし。このあたりについて、安東さんはどう思われます?

:残念です。正直、それは寂しいですね

ワンペダル走行にも楽しさはあります。「モデルS」で富士スピードウェイの一部を走ったことがあるんですけど、それはそれで楽しかった。同じクルマですけど、別物として考えれば楽しめるんです。ただ、走行中にシフトダウンしようとして、ついついパドルシフト(手元でシフトを上げ下げできる装備のこと)をたたくような動作をしてしまう自分もいたんですけど(笑)

加速にしたって、さっきポルシェの「ケイマン GTS」に(別媒体の取材で)乗りましたけど、こっち(モデルX)の方がすごいですもんね。ペダルに対してのレスポンスが鋭いというか、比べてしまうと、内燃機関というもの自体の古さも感じなくはないです。

:クルマが急速に電動化していきそうな情勢ですが、クルママニアとして、内燃機関への郷愁みたいなものって感じます?

:郷愁という感じではないです。変な話、MT車みたいに運転できるEVが発売にならないかなと思っているくらいなんで。クルマを走らせる原動機がモーターであろうと内燃機関であろうと、操作が面白ければいいんです。

だから、“電気マニュアル車”があったら、楽しいだろうなと思うんですけどね。クラッチも欲しいくらいで……あ、クラッチは意味ないか。まあ、要するにギミックですよね。

:でも、ギミックだと分かった上で操作するわけですよね? それでも運転を楽しむことができそうですか?

:うーん…………楽しめないかなー。やっぱり楽しめないですねー、意味がないですもんね。意味ないもんな……

EVにはEVの楽しさがあるとは思うものの、やはりMT車に乗り続けたいと安東さんは語る

:「911 カレラ 4S」に長年、乗ってこられたと思うんですけど、ポルシェが電動化しても構いませんか?

:それは構わないですね。

:むしろ、ポルシェが楽しいEVを作ってくれないかな、みたいな期待もありますか? 今度、EVの「タイカン」というクルマが登場するそうですが。

:そうですね、ドライビングプレジャーをどういうふうに表現するのか……。あと、(プラグインハイブリッド車のある)「パナメーラ」だとかなり車体が大きいんですけど、タイカンはもう少し小さいようなので、そういう意味でも興味あります。

最後まで内燃機関のクルマに乗り続ける?

:でも、どうしても3ペダル(クラッチの付いたMT車)がいいんだよなー! やっぱり、内燃機関が禁止になるまで、1台は3ペダルを持ち続けようかなと思いましたね。

:将来的に、この世界のクルマが全てEVになったら別ですけど、そうじゃない限り……。

:乗るでしょうねー、内燃機関のクルマに。それに、ある程度のバランスも必要ですよね。地球環境的にも、全てがEVになっちゃうと、レアアースの確保の問題とか、発電方法の問題もありますし。だから、内燃機関を積んだクルマとEVって、ある程度は共存した方がいいと思います。内燃機関の効率も、もっと上げてもらって。

:では、「いつEVを買いますか」と聞かれたら、「それしかなくなったとき」という答えになりますか。

:そうですね。ただ、内燃機関のMT車が1台あれば、意外と早めに購入するかもしれません。

:そうすると、最後まで持ち続ける内燃機関のMT車については、厳選することになるでしょうね。

:はい、やっぱりポルシェかな~。

:マツダも作り続けそうですよね。

内燃機関のMT車が1台あれば、EVを購入するのは案外、早いかもしれないと安東さんは語る

:「テスラ」についてはどんな印象ですか?

:やっぱり、新しい価値を提供したという意味では、すごいなと思います。アメリカ西海岸のお金持ちが大勢、これに乗り換えたことで、EVのイメージが変わりましたよね。「ブリキのオモチャ」の様なイメージから、新しくてクールな高級車へ。

:ご友人で、EVに興味を持っている方っています?

:いますよ。TBS時代の後輩で、あるテレビ番組の(コーナーの)プロデューサーをやっている人なんですけど、日産の「リーフ」を買ってました。

:その方って、一般的に言うと富裕層ですか?

:どこからが富裕層かは難しいですけどね。例えば、1,000万円を超える収入を得ていたとしても、700万円のクルマを見て「こんなに高いクルマを誰が買うんだ!」っていう人もいれば、同じ位の収入で1,000万円のクルマをローンで買う人もいますから。

ちなみに、年収が1000万円以上あっても、実は税金の関係で、せいぜい“一点豪華主義”ができるだけなんですよ。それがクルマなのか、ワインなのか、時計なのか、みたいな感じで、あとは普通の生活ですね。だから、富裕層と思える人って、私の周囲にはあまりいません。ただ、本当に有名な芸能人の方などは別ですけどね。

会社員時代にポルシェ「911 カレラ 4S」を購入(72回ローン)した安東さんの一点豪華主義には驚くばかりだ。「だから、『アッコにおまかせ!』で共演していた峰竜太さんとも、クルマに関してだけは同じ金銭感覚で話せましたもんね(笑)」とのこと

「モデルX、いいクルマでした。買うとしたら100Dの方ですけど、家族がどう思うかも聞いてみたいですね。これ(P100D)は必要ないかな(笑)」。そんな感想を残してモデルXの試乗を終えた安東さん。おそらく、安東家のガレージにEVが納まる日が来るのは、少し先のことになるだろう。

次回は安東さんがアストンマーティン「DB11」に試乗したときの模様をお伝えしたい。

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NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
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○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu