MVNO市場は「体力勝負」に? mineoは「ファンとの共創」で生き残れるか

MVNO市場は「体力勝負」に? mineoは「ファンとの共創」で生き残れるか

2019.02.25

mineo(マイネオ)の契約数は2018年4月、100万回線を突破

大手キャリアほどのサポート体制がないMVNOは、伸び悩み期に

ユーザーとの「共創」と独自調達の「iPhone SE」で成長見込む

MVNOサービス「mineo(マイネオ)」を展開するケイ・オプティコムは、同社の事業説明会にて、ユーザーとの共創に取り組む「アンバサダー制度」や、新端末として「iPhone SE」を発売することを明らかにした。

mineoが「ファンとの共創」を掲げたアンバサダー制度を発表

「格安スマホ」をキャッチフレーズに大手キャリアからユーザーを奪ってきたMVNOだが、市場環境の変化により伸び悩みつつある。その中で、生き残りをかけた差別化戦略に「ファンとの結びつきを強化する」を掲げたことが、mineoのユニークな点だ。

100万回線を突破後、伸び悩みに直面した理由

mineoの契約数は2018年4月に100万回線の大台を突破し、国内MVNO市場でのシェアは4位(2018年9月末、総務省調べ)を維持しているものの、2018年後半から伸び悩みつつある。

mineoの契約数。2018年後半は伸び悩む傾向にあった

mineoは、その背景に顧客の「マジョリティ化」があると指摘する。

当初、MVNOのユーザーはリテラシーの高い層が大半を占めたが、最近は「設定を人に頼る層」が増えているという。そのため、大手キャリアのような手厚いサポート体制がないMVNOは、伸び悩み始めたというわけだ。

リテラシーの高い契約者が減り、「マジョリティ化」が進行

だが、MVNOの多くはサポートや店舗展開にコストをかけないことで「格安」を実現してきた。大手キャリア並みのサービスを求めるユーザーが増えていけば、安さだけで売り続けることは難しくなる。

さらに2019年は、総務省で進められる「端末と回線の分離」議論、「第4のキャリア」楽天のMNO(移動体通信事業者)参入による競争激化、ドコモが予定する料金値下げといった動きがあり、MVNOはますます厳しい状況に追い込まれることが必至だ。mineoは「先の見えない体力勝負の競争環境に突入する」と身構える。

ここでmineoが差別化戦略として打ち出したのが、ユーザーとの結びつきをさらに強め、事業運営にまで門戸を開く「アンバサダー制度」だ。

アンバサダー制度でユーザーが事業に参加

数あるMVNOの中でも、mineoはコミュニティサイトを中心としたファンが多いことでも知られている。それをさらに強化した「アンバサダー制度」では、ユーザーが実際の事業運営に関わることができるという。

ユーザーがサービス開発やサポート業務に参加

たとえば「共創アンバサダー」は、一般には公開されない重要情報にアクセスしながら、サービス開発の議論に参加できるという。特別な報酬はないが、mineoが好きなユーザーにとっては、自分で操縦桿を握れるかのような魅力がありそうだ。

「サポートアンバサダー」は、初心者ユーザーとビデオチャットで対話しながらスマホ設定などをサポートできる。トラブル防止のためモザイク処理や録画などの対策を施しつつ、サポート実績に基づいたインセンティブを提供する。

ほかにも、友達紹介のアンバサダーにも電子マネーのインセンティブを提供。音声通話とデータ通信を1000円で試せる「お試しコース」を新設し、気に入ればそのまま月額プランに移行できるようにするなど、新規ユーザーを取り込む施策を次々と打ち出した。

MVNOに不安を抱くユーザー向けに体験プランを拡充

根強い人気の「iPhone SE」を投下

mineoの半分を占めるというiPhoneユーザーへのアピールも欠かさない。2018年12月に「iPhone 8」を発売して以降、mineoの端末販売でiPhoneの割合が増えているという。そこで、mineoは新端末として「iPhone SE」の取り扱いを開始する。やや古いモデルだが、アップルによる販売終了を惜しむ声も多い人気モデルだ。

端末販売台数ではiPhoneの割合が増加

実は、mineoのような独立系MVNOにとってiPhoneの取り扱いは容易ではない。販売台数などの面で、アップルとの直接取引はできないとされているからだ。だが大手キャリア系列のMVNOは事情が異なり、キャリアと共同調達したiPhoneを販売できる。

このまま放っておけば、買い換えのタイミングでiPhoneユーザーが流れてしまうのは必至だ。そこでmineoはさまざまなルートを模索し、メーカー認定の整備品や国内流通在庫とみられる新品を取り扱ってきた。今回のiPhone SEはカナダ版の新品を調達できたのだという。

mineoが販売するiPhone SEはカナダ版

大手キャリアのサブブランドや系列MVNOが勢いを増している中で、独立系MVNOとしてmineoはあの手この手でユーザーをつなぎとめる構えだ。市場環境の大きな変化が予想される2019年だが、再び勢いを取り戻せるか注目したい。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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