自動運転時代の自動車保険とは? 損保ジャパン日本興亜の戦略

自動運転時代の自動車保険とは? 損保ジャパン日本興亜の戦略

2019.02.21

自動運転モビリティ導入支援に参入した損保ジャパン日本興亜

自動車保険のディスラプションはすでに進行中

自動運転の実用化・普及で変わる自動車保険の形

各自動車メーカーがこぞって開発に取り組む自動運転技術。一部のクルマにはすでに、自動運転と呼んでも差し支えないような機能が搭載されてもいる。そう遠くない将来、クルマは人の手を借りずに動く乗り物へと姿を変えるかもしれない。

自動運転技術の普及は、自動車にまつわるさまざまなビジネスに変革を促さずにはおかないだろう。その1つが、自動車保険だ。事故のリスクがゼロに近くなっていく時、自動車保険会社がどのようなビジネスモデルを構築するのかには興味があった。

そんな中、大手保険会社の損害保険ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン日本興亜)は2月15日、国内全域の自動運転サービス実証向けとして、ティアフォーおよびアイサンテクノロジーとインシュアテックソリューション「Level IV Discovery」を共同開発すると発表した。保険会社×自動運転で何が生まれるのか、3社の会見を取材してきた。

左から順に、ティアフォー・加藤真平氏、損保ジャパン日本興亜・西澤敬二氏、アイサンテクノロジー・加藤淳氏の3社代表が業務提携書に署名。「Level IV Discovery」の共同開発がスタートした瞬間だ

自治体での自動運転実用化を支援する国内初の事業

自動運転技術は交通事故のない社会の実現や過疎地域における移動手段の確保など、現代社会が抱えるさまざまな課題を解決する技術として注目されているが、実用化に向けた実証実験には多くの時間とコストがかかるので、思うように進んでいないのが現状だ。

そんな状況の中、自動運転システムを持つティアフォーと高精度な3次元地図データの作成技術を持つアイサンテクノロジーの両社は、これまでに国内外で100カ所を超えるエリアで実証実験を実施している。その実績に加えて、大規模な走行データとノウハウを蓄積できていることも両社の強みだ。

一方、1,300万件の自動車保険契約者を抱える損保ジャパン日本興亜には、交通事故に関する膨大なビッグデータがある。このビッグデータをティアフォーらの自動運転技術と組み合わせてドライブシミュレーターを開発し、高度なデジタルリスクアセスメントを搭載した自動運転実証プラットフォームの構築を目指そうというのが今回の提携だ。

2025年の完全自動運転を見据えたロードマップ

そのほか、本プロジェクトで損保ジャパン日本興亜は、自動運転の実証実験にかかる事故の補償も担当する。具体的には、自動運転車両の走行環境データ分析に基づく専用保険商品の開発および提供を行なっていく。

会見に出席した損保ジャパン日本興亜の西澤社長は、今回の取り組みが「損保ジャパン日本興亜グループが目指す安心・安全・健康のサービスの進化に向けた、モビリティ領域においての大きな挑戦」だと位置づける。

先を見越した損保ジャパン日本興亜の一手

しかし、なぜ保険会社である損保ジャパン日本興亜が、このタイミングで自動運転の実用化に向けた取り組みに加わったのかは疑問だ。自動運転の実用化・普及によって事故が減少した場合、必然的に自動車保険の必要性も下がっていくように感じるからだ。

この疑問に対し、西澤氏からは2つの回答が得られた。まず1つ目が、「自動車保険のディスラプション(破壊)は、すでに始まっているという認識を保険会社は持たなければならない」ということだ。

将来、自動車保険に起こるであろう変革を見据えて語る西澤氏。まるで、自動車保険業界への警鐘を鳴らしているように感じられた

各自動車メーカーからは、すでにレベル2に該当する部分自動運転(加速・操舵・制動のうち、複数の操作をシステムが行う機能のこと)を搭載するクルマが市場投入されている。例えば、カメラやセンサーを使って、前を走るクルマや車線などを感知し、その情報に基づいて加減速、操舵をクルマ側で行う機能などが、レベル2の範疇に入る。

西澤氏によると、レベル2搭載車が登場している現時点において、すでに事故は減少傾向にあり、特に追突事故については激減している状態にあるという。クルマの買い替えが進み、公道を走るレベル2搭載車の割合が増えていけば、比例して事故も減少していくことになる。つまり、自動車保険のディスラプションは、完全自動運転車の登場を待つことなく、現在進行形で進んでいるのだ。

損保ジャパン日本興亜が自動運転に取り組む2つ目の理由は事業領域の拡大だ。“保険の先へ挑む”というコーポレートメッセージを打ち出していることからも分かるとおり、損保ジャパン日本興亜は保険事業にとどまらず、周辺のサービス領域にまで事業を拡大しようとしている。今回の取り組みもその一環であり、自動運転時のさまざまなリスクや、ユーザーが感じる心理的な不安などをケアできるサービスを開発していく考えだという。

クルマを持たない時代に見出す自動車保険の可能性

自動運転が普及すれば、“保険を何に紐づけるのか”という議論も活発化するはずだ。現在、保険はクルマにかけるものだが、自動運転技術を取り入れたカーシェアリングのようなサービスが一般化したとき、保険をクルマにかけるのか、それとも人にかけるのか、あるいは全く別の方法があるのか、現時点では見通しづらい部分がある。

この点について西澤氏は、あくまで個人的な見解と前置きした上で、「もしかしたら、自動車保険そのものが、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の中に組み込まれる時代がいずれは来るのかもしれない」との考えを示した。この見立てが正しかった場合、自動運転実証プラットフォームを構築しようとする今回の取り組みは、同社にとって強みとなる。プラットフォームに参画すれば、その枠組みに損保ジャパン日本興亜のサービスを組み込むことができるからだ。

今後の自動車業界で間違いなく起こる、自動運転を軸とするイノベーション。その中で、自動車保険はどのような役割を担うことになるのか。今回の取り組みは、その答えを考える上で1つの道しるべとなるかもしれない。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu