過去10年で最速の累計販売数を記録した「本麒麟」の強みとは?

過去10年で最速の累計販売数を記録した「本麒麟」の強みとは?

2019.02.22

本麒麟が登場から1年も経たず1,000万ケース達成

なぜ本麒麟は受けたのか? 開発者に直接聞いてみる

開発に妥協せず、気合いの入ったブランディングで勝負

2018年3月に発売されたキリンビールの「本麒麟」。1月下旬には1,000万ケースを突破し、過去10年間にリリースされた商品のなかでは累計販売数最速を記録したという。では、なぜ本麒麟がこれほど支持されているのか……キリンビールにその秘密を聞いてきた。

真っ赤な缶が目立つ本麒麟
キリンビール横浜工場の入り口

訪れたのは、キリンビール横浜工場。薩英戦争(薩摩藩×英国)勃発のきっかけになった「生麦事件」が起こった場所の至近にある。そのため「生麦工場」と呼ばれることも多い。

そもそも横浜は1870年にノルウェー系アメリカ人により、日本で初めてビールの醸造・販売が行われた「スプリング・バレー・ブルワリー」が創設された場所。この、スプリング・バレー・ブルワリーが現在のキリンビールの前身である。

本麒麟が支持されている理由は何か

お話をうかがったのは、キリンビール マーケティング本部 マスターブリュワー 田山智広氏と同商品開発研究所 中村壮作氏のお二人だ。

キリンビール マーケティング本部 マスターブリュワー 田山智広氏(左)と、キリンビール マーケティング本部 商品開発研究所 中村壮作氏(右)

単刀直入に「本麒麟の何が支持されているのか?」と問うと、二人とも「味わいです」と口をそろえる。それほどまで味に自信のある本麒麟。こだわりも強いのだろう。

田山氏は「五感を駆使して酵母をコントロールしています。自然のものである酵母をコントロールするなんておこがましいですが……。ビールは工業製品などと異なり、紛れもなく農作物なのです」と話す。

ビールは試験プラントで味を見定めるが、多い場合、1日で10種類ほど仕込まれるという。それをタンクで数十日熟成させるので、時間もかかる。ひとつのテイストを試すのに、約1カ月、あるいはそれ以上の期間を要することもあるそうだ。しかも、こだわりを優先し、仕上がりが気に入らなければ、またイチからやり直す。

横浜工場にある試験プラント。プラントの1基のふたを開けると仕込まれたビールが確認できる
ドイツ産ヘルスブルッカーホップ

100年以上ラガービールを生産してきた知見を、新ジャンルの本麒麟には惜しげもなく投入した。キリンがこだわる「長期低温熟成」によるラガービールの製法がそのまま生かされている。また、ドイツ産ヘルスブルッカーホップを使用することにより、スッキリとした味わいを目指した。

しかし、本当においしいという理由だけで“過去10年間で累計販売数最速”を達成できたのか。きっと、ほかにも理由があるはずだ。

田山氏は「安くておいしいものという、根源的な要求に応えられるからこそ本麒麟は売れているのでしょう」と分析する。

本麒麟は「新ジャンル」に分類される商品。日本ではビールに課せられる酒税が高く、現在350mlあたり約77円の税金がかかる。そうした税金の高さを回避するために生まれたのが発泡酒で、350mlあたり約47円の酒税となっている。そして発泡酒よりもさらに酒税が低いのが「新ジャンル」(第3のビール)と呼ばれるもので、350mlあたりの税金は約28円だ。

一方で、新ジャンルに人気が集まると「キリン一番搾り」や「キリンラガービール」といった本格ビールの需要が落ち込むのではないかという疑問が生じる。これに対し、田山氏は「決して新ジャンルが『THEビール』(本格ビール)の需要を蚕食するとは考えていません。THEビールはコクを味わいたい方、新ジャンルはスッキリした味わいを求める方と、棲み分けができるかと思います」と、見解を述べた。

おいしくて安いだけじゃない、本気のブランディング

新ジャンルといえど、強いこだわりを持って作られている「本麒麟」。2人の話から売れ筋の理由が垣間見えた気がするが、「新ジャンルで酒税が低い」「しっかりこだわって造る」というだけでは、ほかのビールメーカーも同様なのではないだろうか。

話を聞いていると、本麒麟が1,000万ケースを突破した裏側には2つの巧妙なブランディング戦略が見えてきた。

その1つがネーミングだ。「麒麟」という漢字は、同社のアイデンティティともいえるもの。それに「本」をつけて本麒麟とするには、「新ジャンルには過度なネーミングではないか」という意見もチラホラあったそうだ。

そしてもう1つが、真っ赤なパッケージ。赤というのはキリンビールのコーポレートカラーなので、麒麟という文字と合わせて、同社の代表的な商品として体現されることになるだろう。

「ネーミングも真っ赤なパッケージも、ユーザーの期待を裏切らない味わいであることを表したいためです」と田山氏は話す。

2019年は消費税増税が実施され、新ジャンルの人気に陰りが出る可能性がある。さらに、2020年10月に実施される酒税改正によって、ビール約55円(減税)、発泡酒約55円(増税)、新ジャンル約55円(増税)と、3ジャンルの酒税が横並びになる。そのため、新ジャンルの酒税におけるアドバンテージはなくなっていくだろう。

最近は、若者のビール離れが叫ばれて久しく、ビール市場を取り巻く状況は決して順風満帆とはいえないが、この逆境の中で本麒麟がどれだけ奮闘するか、見極めたいところだ。

関連記事
総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
関連記事
Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

関連記事