格ゲーの祭典「EVO Japan」で見え隠れした「ライセンス」と「賞金」のゆがみ

格ゲーの祭典「EVO Japan」で見え隠れした「ライセンス」と「賞金」のゆがみ

2019.02.18

福岡で行われたeスポーツイベント「EVO Japan 2019」

ストリートファイター部門ではももち選手がみごと優勝

EVO終了後にSNSで話題になったライセンスと賞金について考える

2019年2月15日~17日の3日間、福岡でeスポーツイベント「EVO Japan 2019」が行われた。採用タイトルは『ストリートファイターV(ストV)』『鉄拳7』『ソウルキャリバー』『ザ・キング・オブ・ファイターズXIV』『ギルティギア』『ブレイブルー』という6つだ。

『ストV』の部門では、プロゲーマーの「ももち選手」が「コーリン」や「是空」といったキャラクターを駆使してみごと優勝を決めたが、その優勝賞金について「150万円のうち、10万円しかもらえないのではないか」と、SNSを中心に議論されている。

いったい、それはなぜなのだろう。

賞金のポイントは、「仕事の報酬」と「プロライセンス」

今回の件で問題になってくるのが「景品表示法(景表法)」と「プロライセンス」だ。

景表法とは、「商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することなどにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守る」ための法律である。

そこでは、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」として、偶然性を利用した方法や特定の行為による優劣または正誤によって定める方法で、懸賞にかかる取引の価格の20倍ないし10万円を超える金額の景品を提供してはいけないと定めている。

簡単に言うと、練習不要で誰でも平等に勝負できる5000円の「じゃんけんゲーム」を販売した企業が、そのゲームを用いて賞金30万円の大会を開催するのは不当である、ということだ。

ただし、消費者庁では景品表示法上、「仕事の報酬」として認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらないと定めている。例えば、企業が商品の購入者の中から選んだモニターに対して支払う、その仕事に相応する報酬などが該当する。仮に1000円のコスメを半年間モニタリングしてもらった際に、半年間という時間や労力を鑑みて5万円の報酬を用意するといった場合が考えられるだろう。

eスポーツにおいても、自らのスキルを磨き、ステージ上で観客を楽しませるようなパフォーマンスを披露するような興行であれば、「仕事の報酬」として賞金を受け取ることができるというのが消費者庁の見解だ。

eスポーツの大会で優勝するには、よほどの練習を積まなければ難しい。「EVO Japan」クラスの大会で優勝するほどのレベルであれば、仕事の報酬として認められることに問題はないだろう。

しかし、「仕事の報酬」として認められればすべてよし、というわけではない。2018年から「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発行している「プロライセンス」は、JeSU公認のゲームタイトルをプレイし、「JeSU が別途公認する大会において当該大会規約に基づき好成績を収め、競技性、興行性ある大会等へ出場するゲームプレイヤーとしてプロフェッショナルであるという自覚を持ち、スポーツマンシップに則り、国内eスポーツの発展に寄与し、ゲームプレイの技術の向上に日々精進することを誓約する者」に付与されるのだが、JeSUの規約では、プロライセンス保持者は「プロとして出場したJeSU公認の大会において、プロとしての特典(賞金(報酬)などを含むがこれに限らない)を獲得できるものとする」と規定された。

つまり、JeSU公認の大会では、「仕事の報酬」を受け取れる人の基準を明確にし、訓練すればだれでも仕事を受けられる状態から、ある種“免許制”の職業のような形になったのだ。

まとめると、仕事の報酬としてであればeスポーツの大会賞金を受け取れるが、プロライセンス保持者でなければJeSU公認大会では賞金を獲得することができないということである。

JeSU公認大会以外でもライセンスが適用される?

さて、前提の説明が長くなってしまったが、ここからなぜももち選手が賞金を受け取れないという憶測がSNS上で飛び交っているか考えよう。

まず、ももち選手は、JeSU発行のプロライセンス保持者ではない。Victrixからスポンサードされているプロゲーマーであり、自身もゲーム関連の事業を手がける企業「忍ism」を経営しているが、ライセンスの受け取りを辞退したという経緯がある。

そして、もう1つ、ももち選手の夫人で、プロゲーマーのチョコブランカ選手が同大会中に放送した自身のライブ配信だ。チョコブランカ選手は「EVO Japan」で会場の様子をライブ配信していたのだが、そこで昨年行われた「カプコンカップ2018」の賞金額について明かした。カプコンカップ7位という成績を収めたももち選手は、本来ならば5000ドルの賞金を受け取れるはずだったが、実際は10万円程度だったのだという。

上記で説明したように、JeSU公認の大会でなければプロライセンスの有無は賞金額には関係ないはず。また、カプコンカップはCAPCOM U.S.A.が主催する海外の大会である。にもかかわらず賞金額が少なかったことに対して、カプコンが日本のライセンス環境やJeSUの規定に則て賞金額を決めたという可能性もあるだろう。

そこで、「EVO Japan」はJeSU公認の大会ではないうえに、第3者がスポンサーとなって運営されている大会であり、「仕事の報酬」としてももち選手が満額の賞金を手にできるはずなのだが、今回も「EVO Japan」がJeSUのルールに則って賞金を支払うという可能性が浮上し、冒頭で述べたように10万円の賞金しか得られないのではないかという憶測が、SNSで飛び交うようになったのだ。

ただし、注意すべきなのは、実際に「EVO Japan」の賞金150万円のうち、10万円しかもらえないとももち選手が発言したわけではないことだ。あくまでSNSで流れた憶測にすぎない。

とはいえ、今回の件で多くの人が「ライセンス」と「賞金」についての問題を考えたのではないだろうか。EVO Japanのグランドファイナルにおいて、対戦相手であるふ~ど選手の強力な「バーディータイム」を我慢に我慢してしのぎ切り、一瞬のスキを見逃さずに攻撃を繰り出したももち選手の見事な立ち回りが、「ライセンスがないから10万円」と切り捨てられてしまうのであれば、納得いかない人も多いだろう。

そもそも格闘ゲームの祭典「EVO」日本版の優勝賞金が150万円では、やや夢がない。eスポーツというエンターテインメントが持続発展していくためにも、興行の在り方を早々に見つけなければならないような気がする。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

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