市場拡大は継続するか? 購入型クラウドファンディングの今

市場拡大は継続するか? 購入型クラウドファンディングの今

2016.01.19

インターネットを使って、不特定多数の賛同者から出資を募るクラウドファンディング。期間内に目標額を集めれば、プロジェクトが動きだす仕組みだ。この仕組みは新製品の開発からクリエーターやアーティストの支援など様々な目的で利用され、新たな資金調達法として注目を浴びている。有名な海外サービスサイトとして、KickstarterやIndiegogoがあるが、名前くらいは聞いたことがある人も多いのではないだろうか。

このクラウドファンディングの種類は大きく分けて3種類ある。リターンのない寄付型、金銭によるリターンがある金融型、製品や作品、体験などをリターンとして受け取る購入型だ。先のKickstarterやIndiegogoは購入型にあたる。

日本においては購入型クラウドファンディング大手と位置づけられ、プロダクト系に強いサイバーエージェント・クラウドファンディング運営の「Makuake」(2013年開始)が挙げられる。Makuakeは現在の状況をどう見ているのだろうか。

サイバーエージェント・クラウドファンディングの運営する「Makuake」。プロダクト系のプロジェクトが多い

日本における購入型の市場は?

まず、国内のクラウドファンディング市場の規模について簡単に説明しておきたい。日本でクラウドファンディングのサービスがスタートしたのは2011年で、比較的新しいサービスだ。矢野経済研究所によると、2014年度における国内の市場規模は、新規プロジェクト支援額ベースで前年度比59.5%増の197億1,200万円。この数字だけ見ると成長著しいように見える。

ただし、この大半の約156億円は不特定多数の人に融資を募って金銭的なリターンを行なう金融型のひとつ貸付型であって、購入型クラウドファンディングは約20億円と少額だ。Kickstarterの場合、自社レポート「The year in Kickstarter 2014」によると2014年の調達総額は5億2,900万ドルで、日本円に直すと約618億円。日本の購入型すべてを足してもKickstarter一社と大きな隔たりがある。

購入型クラウドファンディングのスタイルは、ものづくり大国かつコンテンツ大国といわれている日本にフィットしそうに思われるところだが、Kickstarterが2009年にサービスを開始して数百億円規模に達しているのに対し、日本では成長緩やかなのが現状である。

対象者にまだリーチできていない

中山亮太郎代表

Makuakeはこの状況をどう見ているのか。運営元のサイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎代表がいくつかのポイントを挙げる。それを一言でまとめれば、"認知度の不足"だ。日本でものづくりをしたい人にクラウドファンディングがまだリーチしきれていないという。

同氏は、ものづくりのフェーズについて、「何かを作りたいけれど作れない人」、もしくは「作れるけれど前に踏み出せない人」、そして「ものづくりにむけて踏み出すことができている人」の3段階あると規定する。

その上で中山代表は「作れるけれど前に踏み出せない人が多い」と認識している。本当はこういった人がMakuakeを使えばいい。しかし、クラウドファンディングを知らない、自分が対象だと思っていない人が多く、「そうした人たちに対する働きかけが今の大きな課題。そういった層が活用できると思えば、日本中から面白いプロジェクトが集まり、多様性が生まれる"カンブリア紀"になる」と語る。

その言葉どおり、Makuakeでは「前に踏み出せない人」を積極的に探してサポートするスタンスだ。全国でクラウドファンディングのセミナーを開催し、現地の商工会議所や県庁をはじめとする自治体、地方銀行と組んで、地方の産業を盛り上げるという働きかけを行なっているという。

また、プロジェクトを開始する際に「キュレーター」と呼ばれる担当が1つのプロジェクトに対して1人つく。プロジェクトの発案者とともにプロジェクトの内容をブラッシュアップすることも多いという。「どんなプロダクトでも、特徴はどこかに隠れている」(中山氏)。社内で約10人のキュレーターたちが、そこをすくい上げていく形だ。

認知度という観点からはもう一つの課題を指摘する。それは"資金調達"という意味合いでしかクラウドファンディングが捉えられていない風潮があることだ。あくまでプロダクトジャンルに限ってのこととするが、中山氏は「言葉の意味からは仕方のないことかもしれないが、クラウドファンディングにはテストマーケティングとして活用されるケースも多くある。そのあたりの認知が不足している」と話す。

クラウドファンディングが資金調達に加え、テストマーケティング、プロモーションの役割を持つこともいかに認知されるかも不可欠なのだ。

購入型クラウドファンディングの今後は?

今後についてはどう見ているのか。中山氏は「中長期でいうと、5年でアッパーなポテンシャルは100倍以上ある」と強気な見方だ。というのも、同氏によるとMakuake開始後の1年から1年半まではアーリーアダプターによる利用が主体だったと分析しているからだ。これからは、クラウドファンディングがプロジェクトを通して資金調達だけでなくテストマーケティングやPRが行えるというメリットを、広く説明することで成長余地が多くあると見ている。

今後の購入型クラウドファンディングの市場についてポジティブなMakuake。地方でセミナーを開くなど埋もれた状態の「作れる人」を発掘し、ビジネスのラインに乗せようとする。はたしてMakuakeの中山代表が目指すように、日本において購入型クラウドファンディングの利用者はアーリーアダプターからマジョリティへと拡大するのか。認知度も上がり、市場拡大に期待が高まるクラウドファンディングだが、購入型は2016年も発展の年になるのか、注目したいところである。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。