家族で乗れるハイパフォーマンスカー? メルセデスAMGから異色の新型車

家族で乗れるハイパフォーマンスカー? メルセデスAMGから異色の新型車

2019.02.15

メルセデス・ベンツから「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が登場

ファミリーユースにマッチする利便性と快適性を兼備

新たなニーズを掘り起こす起爆剤となるか?

2019年に10車種以上の新型車を投入する予定のメルセデス・ベンツ日本。その第1弾として今回、AMGシリーズ初の4ドアスポーツカー「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」を発表した。納車は5月以降を予定。価格はスペックによって異なるが1,176万6,000円~2,477万円となっている。

AMG東京世田谷にてアンベールされた「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+」。2月14日に注文受付を開始した。発表会にはメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎代表取締役社長(右)とメルセデスAMG社でAMGスポーツカー商品企画を統括するサイモン・トムス氏が登壇

趣味性と利便性を兼ね備えた正統派AMG

2018年の登録実績で前年比6.3%増、台数にして7,606台と日本で好調なセールスを記録している「メルセデスAMG」シリーズ。世界第4位の市場規模を持つ日本は同ブランドにとって重要なマーケットだ。

今回発表となった「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」は、同シリーズが追求するハイパフォーマンスとエモーショナルなデザインはそのままに、4ドアの利便性を兼備している。要するに、スポーツカーの性能を備えながら日常生活における使い勝手にもこだわったモデルであり、今後、同ブランドを牽引する存在として期待されている。

「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」の中では1,176万6000円ともっとも安価なモデル「メルセデスAMG GT43 4MATIC+」

日本でのラインアップは、最大出力21PS、最大トルク250Nmを発生する電気モーター「ISG」(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と3.0リッター直列6気筒直噴ターボエンジン“M256”を搭載する「メルセデスAMG GT43 4MATIC+」および「メルセデスAMG GT53 4MATIC+」に加え、4.0リッターV8直噴ターボエンジン“M177”を搭載した最上級モデル「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+」と、専用装備多数の特別仕様車「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+ Edition1」の計4車種となる。

「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+」のサイズは全長5,054mm、全幅1,953mm、全高1,447mm、ホイールベース2,951mmだ
4ドアのため乗り降りしやすいのもポイント。加えて、大人が乗車してもゆとりのある設計がなされた後席は居住性も高い

今回の新型車で最大の特徴は、AMG GTとして初の4ドア車となり、最大乗車定員が5人になったことだ。これまでであれば、趣味性の高い2ドア2シーターのAMG GTを所有する場合には、これとは別に、家族の移動用に多人数で乗れるクルマを用意する必要に迫られるケースが多かったはず。しかし、「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」であれば、1台で趣味・嗜好を満足させつつ、ファミリーユースの運用も可能になる。

「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+」のラゲッジスペース。日常使いするには必要十分な積載量が確保されている

利便性の高さを物語っているのが広いラゲッジスペースだ。通常時でも461L(GT43とGT53は456L)の容量を確保しているが、折りたたみ式のリアシートを格納すれば最大で1,324L(GT43とGT53は1,319L)まで拡大できる。ハイパフォーマンスカーでありながら、まとめ買いした日用品を詰め込むことが可能と考えれば、その使い勝手のよさは想像に難くない。

エクステリアは快適な後席環境と積載性を確保すると同時に、メルセデス・ベンツの「Sensual Purity」(官能的純粋)というデザイン思想を踏襲。フロントは伝統的なクーペの構造的特徴であるロングボンネットに2つのパワードームを採用することで、スポーティーさを表現した。

また、縦にルーバーが入ったAMG専用ラジエーターグリルや逆スラントしたシャークノーズ、上下方向に細いLEDリアコンビネーションランプ、リトラクタブルリアスポイラーなど、随所にAMGファミリーの特徴を備えている。

メルセデスAMGのトップモデルに採用される専用ラジエターグリルが存在感を放つフロントマスク

メルセデスAMGシリーズ最速を記録した高性能エンジン

もちろん、走行性能にも抜かりはない。ドイツ・ニュルブルクリンク北コースで叩き出した1週=7分25秒41というタイムは、量産4ドア車で世界最高の記録となった。

サイモン・トムス氏が「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」の詳細をプレゼンテーションした

GT63Sに搭載される“M177”エンジンは、2基のターボチャージャーをV型シリンダーバンクの内側に配置するホットインサイドVレイアウトを選択。これによりエンジンのコンパクト化を図るとともに、低回転域におけるターボチャージャーへの吸排気経路を最適化し、ツインスクロールターボによる優れたエンジンレスポンスを狙った。その結果、停止状態から時速100キロまでの加速が3.2秒、最高時速は315キロというシリーズ最高速度を実現した。

「メルセデスAMG GT63 S 4MATIC+」が搭載する“M177”エンジン。最大出力は470PS、最大トルクは900Nmだ

その走行性能をいかんなく発揮するため、足回りも強化した。例えば速度が時速100キロを超えると、リアホイールがフロントホイールと同方向に最大0.5度傾いて、走行安定性がアップする。コーナーなどで進行方向を変更する場合には、リアホイールに働く横Gの増加ペースが高まり、ステアリング操作に対するレスポンスが改善されるという。

GT43とGT53に搭載されるIMGは、48V電気システムとの組み合わせにより、ハイブリッド車のように回生ブレーキで発電し、容量約1kWhのリチウムイオンバッテリーを充電する。エンジンの低回転時には、その電力を利用して動力補助を行うことで、高効率で力強い加速に貢献するそうだ。

「メルセデスAMG GT43 4MATIC+」と「メルセデスAMG GT53 4MATIC+」に搭載される“M256”エンジン。GT43は最大出力367PS、最大トルク500Nm、GT53は最大出力435PS、最大トルク520Nmと性能に多少の差がある

“M256”エンジンは、直列6気筒レイアウトの採用で、エンジン左右のスペースに補機類の配置が可能になった。加えて、従来はエンジン回転を動力としていたエアコンディショナーやウォーターポンプなども電動化。エンジン前部のベルト駆動装置が不要になったことはコンパクト化にも効いている。

また、ドライブモードはGT43とGT53で5種類、GT63Sで6種類を用意。モードはセンターコンソールの「AMG DINAMIC SELECT」で変更できる。

発表会場には日本限定20台の「メルセデスAMG GT R PRO」(画像)も展示されていた。販売価格は2,900万円とプレミア級

2019年の日本市場を席巻する可能性も高い

発表会でメルセデス・ベンツ日本の上野社長は、米国の「サーキット・オブ・ジ・アメリカズ」で試乗した自身の経験を踏まえ、AMG GTの新型車を「後ろに席が新たに2つ付いたスポーツカー」と表現。プロレーサーでなくとも小気味よくサーキットを高速走行できる性能を高く評価するとともに、このクルマでAMGの新たな顧客層にもリーチできると自信を示した。

上野氏は「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」でAMGの客層を広げたい考えだ

確かに、クーペの走行性能とセダンの快適性・利便性を併せ持った新モデルが、AMGの間口を広げる可能性は大いにありそうだ。AMG人気の高い日本で、ファミリーユースにも対応するハイパフォーマンスカーがどんな評価を受けるのか、注目したい。

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ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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