これが“メイド・イン・ホンダ”の真髄! 「NSX」の2019年モデルに試乗

これが“メイド・イン・ホンダ”の真髄! 「NSX」の2019年モデルに試乗

2019.02.08

ホンダのスーパーカー「NSX」に改良モデル、試乗で感じた実力

見た目で判断するのは早計! 高性能でも間口の広い新型NSX

開発者が日本人になっても変わらない? NSXが継承するもの

日本を代表するスーパーカーであるホンダ「NSX」が復活を果たしたのは、2016年8月のこと。2シーター、ミッドシップレイアウト、アルミボディ構造など、従来型と共通する特徴を備えつつも、ハイブリッドシステムによる4WD車という現代的なハイテクスーパーカーへと進化を遂げていた。

さらに、クルマづくりの指揮をとる開発責任者(ホンダではラージプロジェクトリーダー=LPLと呼ぶ)が米国人となり、生産も米国の新工場に移るなど、NSXが“メイド・イン・USA”となったことも話題となった。

そんな2代目NSXだが、復活から約2年となる2018年10月に、初の改良型となる「2019年モデル」が発表となった。主な改良点は、内外装のリファインと走行性能の向上である。また、このモデルではLPLが日本人となった。発売は2019年5月で、価格は据え置きの2,370万円。今回はNSXの2019年モデルに試乗し、新世代ジャパニーズ・スーパーカーの今に迫った。

ホンダ「NSX」の2019年モデル。色は新色のサーマルオレンジ・パール。外観上の変更は、フロントグリルをボディ同色にするなど限定的だ

ホンダの技術の集大成として誕生した初代「NSX」

試乗の感想をお伝えする前に、まずはNSXの歴史を振り返っておきたい。このクルマの初代は、日本がバブル期にあった1990年、世界に通用するホンダのフラッグシップスポーツとして誕生した。ホンダは同じV型8気筒(V8)エンジンを搭載するミッドシップのスーパーカー、フェラーリ「328」をライバルと想定してNSXを開発したといわれる。あのアイルトン・セナも開発テストに関わるなど、多くの逸話を持つクルマだ。

初代「NSX」。ホンダはフェラーリ「328」をライバルと想定して開発を進めたといわれる。生産台数の多くが、写真の初期型だった。スーパーカーのお約束アイテムであるリトラクタブルヘッドライト(格納式ヘッドライト)も採用。ただし、最終型のみ固定式ヘッドライトに改められた

もちろん、初代NSXはクルマとしても魅力的で、スポーツカーらしい流麗なスタイル、オールアルミ製ボディ、ミッドシップレイアウト、高回転型自然吸気エンジンなど、F1参戦などでホンダが培った技術の集大成というべきモデルであった。事実上、日本初の量産スーパーカーであった点も注目され、国産車としては異例の約1,000万円という価格ながら、発売と共に大人気となる。その後、ホンダは改良を加えながらNSXを作り続けたが、2006年には惜しまれつつも生産を終了。それから10年の歳月を経て復活したのが、2代目となる現行型NSXというわけだ。

新型「NSX」は3つのモーターを駆使する高性能な4WD

現行型NSXのスペックを簡単に紹介しておくと、ボディサイズは全長4,490mm、全幅1,940mm、全高1,215mm。低重心を連想させる抑えられた全高とワイドで伸びやかなスタイリングは、まさにスーパーカーそのものといった感じだ。キャビンは2名乗車仕様で、後方にエンジンを搭載するミッドシップレイアウトを採用する。

2019年モデルの内装。こちらも変更点は最小限。シートはホールド性を高めたセミバケットタイプだが、大柄の人間が乗っても快適なものだ

そのパワートレインは3.5LのV6ツインターボに9速DCTを組み合わせ、更にハイブリッドシステム「スポーツハイブリッドSH-AWD」を装備する。これはホンダの最上級に位置するハイブリッドシステムで、搭載すると環境性能が高まるだけでなく、スポーツ走行にも活用できる。

3.5LのV6ツインターボエンジン。ガラス越しにインテリアが見える。このように、乗員のすぐ背面にエンジンを搭載するのがミッドシップレイアウトだ

搭載するのは3機のモーターだ。エンジンに直結させる後輪用駆動モーターに加え、前輪左右それぞれに駆動モーターを備える。前輪は完全に電動化されていて、左右に与えるパワーを自在にコントロールすることが可能。すなわち、高性能な4WD車なのである。

エンジン単体の性能は、最高出力507ps、最大トルク550Nmと申し分ないが、ここにモーターが加わる。モーターそれぞれの性能は前輪用が37ps/73Nm(1モーターあたり)、後輪用が48ps/148Nmを発揮する。エンジンとモーターを合わせたシステム全体では、581ps/646Nmとかなりパワフルだ。

キャビンは2名乗車のみだが、ゆったりとしたスペースを確保してある。車内の収納は限られているが、エンジン後方にはコンパクトながらトランクも備わるので、ちょっとした旅行の荷物くらいなら飲み込んでくれる。

軽量かつ低重心なつくりとなっていることもあって、トランクはコンパクトで内部にでっぱりがあったりもするが、それらも全て性能のためだ

このNSXには、走りのキャラクターを変化させられる「インテグレード・ダイナミクス・システム」というドライブモードセレクトが付いている。操作はセンターコンソールに配置された大型のダイヤルで行う。標準の「スポーツ」、運転をより楽しめる「スポーツ+」、サーキット向けの「トラック」、そして、ハイブリッドらしい静かな走りを可能とする「クワイエット」の4つのモードがあり、状況に応じた最適な走りが選択可能だ。

オールマイティ仕様の「スポーツ」は、停車時のアイドリングストップやEV走行モードにまで対応する。もちろん、アクセルを踏めば、パワフルな加速と俊敏な走りが楽しめることはいうまでもない。「スポーツ+」はエンジンパワーを積極的に使う走行モードであるため、かなり刺激的な走りが楽しめる。このモードでは低いギアを多用するので、回転数が高めとなり、ホンダ自慢のエンジンサウンドもより堪能できる。

クワイエットモードではアイドリングストップとEV走行を優先してくれるので、スーパーカーであるNSXを静かに走らせることが可能になる。楽しさは薄れるが、早朝や深夜の静かな住宅地などで重宝する。いわゆる気配りモードだ。

スーパーカー然とした「NSX」だが、「クワイエット」モードを選べば静かに走らせることも可能だ

手強いかと思いきや…「NSX」の2019年モデルに試乗!

ここからは2019年モデルに試乗した印象をお伝えしたい。

国産車とはいえ、やはりスーパーカー。NSXも独特の迫力を放っており、手強さを予感させたが、少し緊張しながらシートに収まると、その先入観は良い意味で裏切られた。この手のスーパーカーとしては、かなり視界が良好なのである。ミラーまで含めると2mを超える車幅だが、運転席からフロントの鼻先が見え、先端やタイヤ位置もつかみやすい。ミラーも左右と後方をしっかり目視できるので、取り回しについての不安も感じなかった。スーパーカーというよりも大型クーペのような感覚だ。もちろん、車高が低い点だけはしっかりと考慮しなくてはいけないが……。

乗ってみると思ったよりも視界は良好。取り回しについての不安も感じなかった

シフトはATなので、操作も基本的にはイージー。ステアリングとペダル操作に集中すればOKだ。見た目よりも、ずっとユーザーフレンドリーなクルマといえる。その印象は、走り出しても変わらない。市街地、峠道、高速道路を試したが、どのシチュエーションでも本当に乗りやすい。峠道では、SH-AWDによる前輪の左右独立駆動システムが、鋭く、かつ安定したコーナリングを楽しませてくれる。その感覚は、まるでNSXが道路に吸い付いているようだった。これなら、雨天など路面状況が悪い時でも安心して走行が楽しめるだろう。

市街地走行のみ「クワイエット」モードを選んだが、スーパーカーのNSXがするすると静かに動き出すのも、ちょっと面白かった。ただ刺激もカットされるので、オーナーなら限定的に使いたくなる機能かもしれない。

また、乗り心地に優れている点にも忘れずに言及しておきたい。このクルマであれば、助手席からのクレームもないはずだ。高速道路でも、AWDによる安定性の高い走りと快適な乗り心地が確認できた。これなら、ロングドライブも楽々とこなせるだろう。ぜひ一度、トライしてみたいと思う。

性能の高さもさることながら、乗り心地のよさも見逃せないポイントだ

乗りやすくて快適。誰に対しても間口の広いスーパーカーに仕上がっているNSXだが、いうまでもなく限界ははるかに高い。腕に自信のあるドライバーを喜ばせるクルマとしても、その出来栄えは上々だ。

開発責任者に聞く2019年モデルの進化と真価

乗って楽しい新型NSXだが、具体的に、2019年モデルとなってどのような進化を遂げているのか。新たにLPLに就任した本田技術研究所の水上聡氏に聞くと、「ドライバーとクルマの一体感を高め、日常と同じようにサーキットで運転しやすく、かつ速く走れる。しかしながら、乗り心地などの快適性も犠牲にしないよう、全面的に進化させた」とのことだった。

水上氏はダイナミクス性能、つまりはクルマの運動性能の方向性を決める立場にあり、2代目NSXの開発にも携わった人だ。現行型NSXを熟知していて、改良の鍵となるダイナミクス性能の専門家でもあったことが、LPLに指名された要因だったという。

水上LPLが開発責任者を務めた「NSX」の2019年モデル

2019年モデルから、NSXの開発拠点は日本に移っている。ただし水上氏は、「NSXは先代同様、世界共通仕様で開発したモデルであり、効率を重視した開発・生産体制をとっている。アメリカ製だったからといって、アメリカ重視のクルマ作りをしていたわけでない」と強調する。あくまで、最適な人物を開発主査に任命し、最適な場所で開発を進めるというのがホンダの方針のようだ。「ホンダに入社する人は、ホンダに思い入れがある人ばかり。ホンダ車への思いは共通する」とも水上氏は付け加えた。

ちなみに、NSXを2代目として復活させたテッド・クラウスLPL(水上氏の前任)は、初代NSXに惚れ込んでホンダに入社した人物であり、日本での駐在経験を持つなど、日本の事情にも精通している。つまり、2代目NSXもホンダマンが作り上げたスーパースポーツであることに変わりはなく、“メイド・イン・USA”というよりも“メイド・イン・ホンダ”と呼ぶべきクルマなのだ。

扱いやすく実用性にも気を配ってあるが、性能はスーパーカーそのもの。そのオールマイティな性格は、まさに日本車らしい心配りが作り出したものといえる。実は、迫力に満ちていた初代NSXも、乗ってみると運転しやすいクルマであった。NSXの伝統はしっかりと受け継がれているのである。

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2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu