枚数はネット経由が最多? 目前に迫る東京オリンピックのチケット販売

枚数はネット経由が最多? 目前に迫る東京オリンピックのチケット販売

2019.02.06

2019年春に始まる東京五輪チケットの「抽選申込」

チケット購入に必須となるID登録は受付中

販売枚数の割合はネット経由の抽選が最多に?

刻々と開催の時が迫る東京2020大会(オリンピック・パラリンピック)。56年ぶりに日本で開催される夏季オリンピックとあって、関係各所ではもろもろの準備が急ピッチで進行している。

その中で、最も関心の高い話題の1つは、総数1千万枚ともいわれる観戦チケットの入手方法だろう。申し込み時期や購入方法、転売対策など、気になる詳細を公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)が発表した。

東京2020大会オリンピック公式チケットの販売概要発表会には、過去大会の女子レスリング53キロ級で3連覇を達成した吉田沙保里さんが登場。「自国で開催される東京オリンピックなので、たくさんの方に生でスポーツの良さを知ってもらいたい。もう選手ではないので、私も登録してチケットを購入したいと思います」と話していた

抽選販売の申し込みは2019年春に受付開始

組織委員会の発表によれば、公式チケットの販売方法は2019年春に始まる「抽選申込」、2019年秋以降に実施する「先着順販売」、2020年春以降に都内の販売所にて行う「窓口販売」の3段階を予定している。その内、最も早く始まる「抽選申込」については、「一般チケット」「車いすユーザー向けチケット」「東京2020みんなで応援チケット」が対象となる。

3段階に分かれるチケット販売スケジュール。第1弾となる「抽選申込」が目前に迫っている

「一般チケット」は開閉会式と17日間全33競技(339種目)分を販売する。席の種類はA~E席の最大5種類に分類するそうだ。価格については、陸上男子100m決勝や水泳決勝など、人気が集中することが予想されるものについてはA席で10万円を超える設定もあるが、全体としては半数以上が8,000円(開閉会式は1万2,000円)以下の設定としている。

「一般チケット」が単券であるのに対し、「車いすユーザー向けチケット」と「東京2020みんなで応援チケット」は、申し込み条件はあるものの複数人分を想定。こちらも全セッションで用意する。

「車いすユーザー向けチケット」は、車いすユーザーと同伴者分がセットになったチケット。価格は座席位置が未確定のため検討中だ。「東京2020みんなで応援チケット」は、12歳未満の子ども、60歳以上のシニア、障がい者1名をふくむ家族やグループ向けのチケット。こちらは1枚2,020円で販売するが、予定枚数に達した場合は以降の販売を行わない。現在、予定販売枚数や対象となる人数制限についての検討を進めている。

「抽選申込」の対象チケット一覧。なお、2020年春以降は都内に設置予定のチケット販売所でも販売する予定だ

チケットの支払い方法は、手数料のかからないVisa決済(クレジット/プリペイド/デビット)か、手数料432円(1件あたり)の現金決済(コンビニエンスストア払い)から選択可能。チケット受け取り方法は、紙チケットの郵送とPCやスマートフォンなどの端末を用いる方法がある。郵送の場合、チケット1枚の発行に324円、配送に1件864円の手数料を設定。スマホなどの画面に表示するモバイルチケットや「プリント@ホーム」を使って自身で印刷する紙チケットの場合、手数料は不要となる。

チケット販売&不正転売防止策はすでにスタート

ここまでチケット販売の概要を説明してきたが、ここからは「抽選申込」の参加方法について見ていく。抽選販売に申し込むには、いくつかのステップを踏む必要がある。

まず必須となるのが、すでに公式サイトで登録が始まっている「TOKYO 2020 ID」の取得だ。IDの取得後、「抽選申込」開始前に開設される公式チケット販売サイトへアクセスし、観戦希望の競技や座席種類、枚数を選び、期限内に申し込むというフローになっている。

2019年1月28日時点で「TOKYO 2020 ID」の登録者数は125万人を突破。しかし、チケットの販売総数が1千万枚規模であることを考えれば、今後はさらに登録者数が増えると考えられる

抽選結果の発表は2019年6月中旬以降を予定。見事当選した場合は、支払い方法と受け取り手続きを選択する。購入期限内に支払い手続きを行えば、購入完了となる。

ここで1つポイントなるのが、抽選結果の発表が6月中旬以降に設定されている点だ。

2018年12月に“チケット不正転売禁止に関する法律”、いわゆるチケット不正転売禁止法(違反者に対して1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる)が成立した。この法律は2019年6月14日(金)に施行される予定だ。実は本法律、組織委員会が要望し、各所の協力のもと成立したという背景があり、不正転売防止策の1つでもある。抽選結果の公表が6月14日以降となるのはそのためだ。

チケット販売において悩みの種となる不正転売。組織委員会も対策に万全を期していく

ただし、法律だけで不正転売の全てを抑止することは不可能というのが組織委員会の考え。そのため、申し込みの際にどういった方法をとれば抑止効果が高いのかを検討し、来場者の利便性を勘案しながら最適な方法を模索していくという。

とはいえ、これだけの注目を集める一大イベントだけに、オークションサイトなどの非公式チャネルにチケットが出品されることは容易に想定できる。こうした非公式チャネルには、無効なチケットや偽チケットが出品される危険性もある。そのため組織委員会では、公式販売チャネル(公式チケット販売サイト、公式チケット販売所、公式販売事業者)以外からチケットを購入しないよう呼びかけている。

加えて、非公式チャネルから購入したチケットについては、仮に本物のチケットであっても会場に入場させないほか、警察への通報など厳しい処置も検討中とのことだ。どうしてもオリンピックを見たいという気持ちも理解できるが、仮に非公式チャネルから高額でチケットを購入したとしても、そのリスクは相当に高いものになる。

また、正規の手続きでチケットを購入したにも関わらず、会場に足を運べなくなってしまうケースも考えられる。その場合の救済措置として、組織委員会では公式リセールサービスを公式チケット販売サイト内に設置する方針。詳細はあらためて発表するそうだ。

老若男女に優しい平等なチケット販売方法を今後も模索

3段階に分かれたチケットの販売方法だが、購入する側からすれば、チケットの配分も大いに気になるところ。この点について、発表会に登壇した組織委員会マーケティング局でチケッティング部長を務める鈴木秀紀氏は以下のように話す。

東京2020大会オリンピック公式チケットの販売概要を説明する鈴木氏

「チケットについては、可能な限り早い時期から販売していきたいと考えており、そのために『抽選申込』から全競技全セクションのチケット販売を行います。販売枚数という観点でいえば、(抽選で販売する枚数が)最も多くなることを期待しています。しかし、会場準備が進み、詳細が決まっていくにつれて、販売できるチケットも増えていくと考えられますので、その分については適宜、追加販売を行っていきます」

早い段階で販売するチケットの割合を増やしたいというのは、空席対策も考えてのことだろう。ただ、第一弾となるインターネットを介した「抽選申込」は、パソコンやスマホを使い慣れない人たちにとっては高いハードルとなってしまう可能性がある。スポーツの祭典が狭き門になってしまっては問題だが、鈴木氏は以下のような考えを示す。

「高齢者や障がい者を含めて、幅広い方々にお求めいただきやすい環境を用意するという意味では、コールセンターを設置したり、購入方法についての動画を用意したりするなど、丁寧で分かりやすいご説明をすることでサポートしていきたいと思っています」

さて、気になるのはチケットの抽選倍率だが、組織委員会では過去大会の倍率を把握していないという。開会式や陸上男子100mなど、いわゆる花形種目や、日本のメダル獲得が期待される種目については高倍率が予想されるが、チケット枚数と申込数の兼ね合いで決まる倍率を現時点で予測するのは難しいとのことだ。

では、とにかく、何でもいいから東京オリンピックを見てみたいという人は、どうすればいいのだろうか。この点について鈴木氏は、「全競技のチケットに、たくさんの種類がございますし、その全てが高倍率ということはないと考えています。また適宜、適切な形で情報はご案内させていただきたいと思っておりますので、サイトでいろいろと見て選んでいただければ、幅広くご購入いただける機会を提供できるのではないでしょうか」との見解を述べた。

東京オリンピックは人生で二度目という方もいるだろうが、日本で同大会を次に見られるのはいつになるか分からない。より多くの人が安全・安心に観戦を楽しめるよう、組織委員会では今後も、公平で多くの人々に納得してもらえるようなチケット販売方法を模索していく考えだ。ネット経由の抽選販売が割合として多くなりそうな情勢なので、早めにチケット争奪戦に参加したいという方の中で、パソコンやスマホの使い方に自信がないという人は、これを機に向き合ってみるべきかもしれない。

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

2019.04.25

携帯3社が「+メッセージ」の機能拡充を発表

LINEと比較した強みは「信頼性」

金融サービスと連携し、住所変更手続きが容易に

NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯大手3キャリアが「+メッセージ」(プラスメッセージ)の機能拡充を発表した。

国内大手3キャリアが「+メッセージ」の機能拡充を発表

サービス開始から1年が経過した「+メッセージ」だが、広く普及した印象はない。「メッセージならLINEで十分」との声も多い中で、普及する可能性はあるのだろうか。

「LINE」とは異なる可能性を秘めた「+メッセージ」

2018年5月に大手3キャリアがサービスを開始した「+メッセージ」は、2019年4月までに利用者が800万人を突破したという。だが「使ったことがない」とか、そもそも「名前を知らなかった」という人もいるのではないだろうか。

+メッセージの利用者は800万人に

「+メッセージ」とは、国際規格のRCSに準拠したメッセージサービスだ。従来のSMSを置き換えるサービスとして、短いテキストだけでなく長文や画像、スタンプを送れるのが特徴だ。

「+メッセージ」はSMSを置き換える上位サービス

一方、日本国内ではLINEが普及しており、月間利用者数は7900万人、そのうち毎日使うユーザーは6600万人もいるという。日本のほとんどのスマホにLINEは入っており、日常的なメッセージ需要はLINEが十分に満たしている状態だ。

だが、どんなにLINEが普及してもSMSがなくなることはない。サービスのID登録やログイン時など、本人確認を必要とする多くの場面でSMSは使われている。SMSは契約時に身分証明書で本人確認を済ませており、信頼性が高いのが特徴だ。

一般に「+メッセージ」は大手キャリアのLINE対抗策と認識される傾向にあるものの、その性質はやや異なる。「+メッセージ」がSMSの延長にあるという特性を活かせば、SMS認証のような本人確認はもちろん、企業と個人の間でのさまざまな手続きに活用できるはずだ。

こうした背景を踏まえて3キャリアが発表したのが、新サービスの「公式アカウント」や、金融各社と連携する「共通手続きプラットフォーム」だ。

仕組みの共通化やMVNO対応など、課題は山積

2019年5月以降に始まる「+メッセージ」の公式アカウントは、企業向けのアカウント機能だ。利用例としては銀行やレストラン、携帯会社を挙げ、登録住所の変更やレストランの予約、問い合わせといったサービスを実現できることを示した。

「+メッセージ」の「公式アカウント」機能

こうした機能はアプリでも提供されているが、スマホにアプリを入れていないユーザーも多く、パスワードを入れてログインするのは煩雑だ。だが「+メッセージ」なら電話番号だけでユーザー本人とつながり、チャットで手続きができるので便利というわけだ。

銀行やレストラン、携帯会社による利用例

だが、サービス提供に向けた課題は多い。公式アカウントの開設は、大手3キャリアが個別に営業をかけ、各社の基準で審査する方式となっている。一見すると無駄な仕組みだが、独占禁止法への抵触を避けるため、3社が競争している建前になっているという。

3キャリア以外への対応として、ワイモバイルなどのサブブランドやMVNOでは利用できない状況が続いている。サービス開始時から指摘されていた問題だが、1年が経過して何の進展もないのは理解に苦しむところだ。

iPhone対応にも課題がある。アプリを入れることで「+メッセージ」は使えるものの、SMSを送受信する標準のメッセージアプリを置き換えるものではない。ここに手を加えるのはiPhoneの基本的なユーザー体験に影響するため、アップルの判断次第になりそうだ。

また、今後の構想として、金融5社を横断した「共通手続きプラットフォーム」も打ち出された。住所変更手続きなど、各社の競争に直接関係しない事務手続きを共通化し、顧客の利便性向上を図るのが狙いだ。

金融5社と「共通手続きプラットフォーム」に向けた検討を開始

最近、フィンテックやキャッシュレスの新サービスが増え、新たに住所や電話番号を登録して口座を作る機会は多くなった。しかし、それに伴い変更の手間も増している。そこで+メッセージを利用したオープンな事務手続きプラットフォームが実現すれば、1回の手続きで全社に情報が伝播するというわけだ。

「+メッセージ」は、携帯市場で競合する大手3キャリアが共通サービスの整備を進めなければならない。その中で「電話番号でつながる」強みを活かした独自の活用法が、ようやく見えてきたといえそうだ。

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2019.04.25

シャークニンジャ日本法人の社長 ゴードン・トム氏に直撃

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者が語る参入秘話

日本向けの製品カスタム、消費者ニーズの取り入れ図る

全米ナンバーワンの掃除機ブランド「シャーク」。日本では、長年スチームクリーナーのメーカーとして知られていたが、2017年6月に日本法人が設立され、翌2018年夏に日本市場に本格参入した。

第1弾として、同年8月にコードレススティッククリーナーの「EVOFLEX」を発売。翌9月にはハンディクリーナー「EVOPOWER」、10月にはスチームモップ3製品、ロボット掃除機「EVOROBOT」と精力的に新製品を日本市場に投入している。

そこで今回は、シャークニンジャ日本法人の社長を務めるゴードン・トム氏を直撃。同社の日本市場への本格参入の意図と、今後の戦略や日本の掃除機市場や消費者について伺った。

シャークニンジャ日本法人の社長のゴードン・トム氏。英国の元外交官で、20年前にダイソンの掃除機を日本に広め、現在の業界の発展につながる市場の開拓の礎を築いた人物だ

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者

ゴードン・トム氏と言えば、日本の掃除機市場の変革者と呼んでも過言ではない人物。もとはイギリスの外交官として来日。赴任中の1990年代にダイソンの日本法人の初代社長に抜擢された(編集注:イギリスの外交官には副業を認める制度がある)。

当時国内メーカーの寡占状態であった日本の掃除機市場に“吸引力が落ちない”の謳い文句で同社のサイクロン掃除機を展開し、「ダイソン」ブランドの地位確立の礎を築いた。

ダイソンを退いた後は、エレクトロラックス日本法人の社長に就任し、キャニスター型に代わり、現在日本の掃除機市場において主流となった“コードレススティッククリーナー”の人気を定着させた。

外国人でありながら、日本の掃除機市場を知り尽くした“業界のマシュー・ペリー”的存在のトム氏だが、今度は全米ナンバーワンの掃除機メーカーの日本法人の社長として日本に再上陸したのは、どういった経緯なのだろうか。

「2014年にエレクトロラックス社を退職して、以降はマーケティングのコンサルタントの仕事をしていましたが、2016年の9月ごろにシャークから連絡がありました。当時のシャークの売上は北米が95%、イギリスが5%ほど。中国法人を立ち上げ、代理店経由でメキシコにも進出するなど本格的な国際化戦略を進めており、日本も大事な市場の1つと考えていました。そんな中、私のところに相談があり、翌2017年の1月くらいにボストンの本社へ出向き、エンジニアやデザイナーに会って話をし、3~4月ぐらいに日本に展開する商材や現地法人の設立、取引・流通事情、マーケティング戦略の提案をしました」

日本法人の設立にあたっては、最終的にはトム氏自らが初代社長に就任することになり、これまでの経験をもとに、オフィスの設置場所や人材集めなども自ら担ったとのことだ。

参入にあたり日本向けにカスタム

次に着手したのは、日本市場に投入する商材の選定。氏曰く「これまでで最高の掃除機に出会えた」と評する同社の製品で、日本市場参入第1弾に選ばれたのは、「EVOFLEX」。本国では2017年秋に発売され、ボタン1つでパイプを90°曲げて掃除ができるという独特のギミックで注目を集めた製品だが、日本で発売するにあたっては多くが日本向けにカスタマイズされたという。

日本市場への本格参入の第1弾として2018年8月に発売されたコードレススティッククリーナー「EVOFLEX」。本国でおよそ1年前に発売された製品(左)を、サイズからモーター、操作性に至るまで、日本向けに大幅にカスタマイズした上で登場し

「本国で開発された最初の試作機は、私の目から見たら全然ダメでした。まず、大きすぎて日本人の身体にも家にもマッチしていませんでした」

パイプ部分が90°曲がって家具の下にも潜り込みやすいという、製品のアイデンティティーとも言える独自性はそのまま継承しつつも、パーツの着脱をしやすくするためにボタンの改良が施されるなど、日本のユーザーに受け容れられるよう細かい部分にまで配慮がなされた

そこで実際に、試作機を用いて日本の家庭50世帯で6週間のテストを3回行い、その結果、日本向けの「EVOFLEX」は、原型は同じでありながらも本国の製品とは見た目も中身もかなり異なる製品に仕上がった。「例えば、ヘッドブラシは、畳や木材などが多い日本家屋の床に合わせて柔らかいローラーにしました。ダストカップも中身が見える透明な素材で、中のメンテナンスがしやすいように角を丸くしています」とトム氏。

それ以外にも、高音域のモーター音を好まない日本のユーザーのために音を低減したり、高性能なHEPAフィルターの採用や、取り外しやすいメッシュフィルターを採用してサイクロン部の手入れをしやするなど、掃除機の本質性能だけでなく、操作性やメンテナンス性にこだわった改良が多数施された。

こうした改良点について、トム氏は日本とアメリカの掃除機に対する消費者の根本的な考え方や流通ルートの違いを明かす。

「日本の場合には、掃除機や家電製品の購入は、家電量販店が主流ですが、米国の場合にはウォルマートなどの巨大スーパーで購入するケースが一般的です。そこでは日本のように実際に製品に手で触れて試してみるという機会がありません。そのため、製品への信頼度が重要で、ブランド力というのはとても大事なのです」

日本でも昨秋発売された同社のロボット掃除機。本国ではそのおよそ1年前に発売されているが、ほぼアイロボット社の独占市場であったアメリカのロボット掃除機市場において、初めてアイロボット以外で2桁のシェアに躍り出ている。

2018年10月発売のロボット掃除機「EVOROBOT」。掃除機メーカーとしてのブランドへの信頼性と、十分な機能・性能と消費者が受け入れやすい価格帯で、アイロボットの「ルンバ」以外で初めて10%を超えるシェアを獲得したという

さらに、米国の消費者は「掃除機が必要」という需要があった上で、その用途を満たすための機能と予算を照らし合わせて製品を選ぶというのが購入の意思決定。ゆえに、デザインやメンテナンスといった要素は日本人ほど重視されず、むしろ「さまざまなユーザー層の需要に応えるために、価格によって付属品を選べることが重要なのです」と話す。

20年前の日本市場は「つまらなかった」

一方、約20年前に日本の掃除機市場に乗り込み、「日本の掃除機は紙パックのキャニスター式ばかりで個性がなく、つまらなかった」と当時を振り返るトム氏。業界の“エバンジェリスト”として、日本市場においてシャークブランドのプレゼンスをどのように高めていくのかに注目される。

そこで目を向けたのが、昨年9月に発売された「EVOPOWER」だ。本国での発売後、日本向けにカスタマイズして上陸した「EVOFLEX」とは異なり、日本をメインマーケットとして、日本の消費者のニーズを多く取り入れて開発されたハンディクリーナーで、その後に英国でも発売されているとのこと。

さらに、今年1月には長崎県の無形文化財である「臥牛窯」とコラボレーションし、「EVOPOWER」に絵付けを施した限定商品を発売するなど、"日本発"の掃除機を送り出している。今後もこうした商品展開や戦略を積極的に進めていく方針なのだろか。最後に、シャークニンジャの展望について訊ねてみたところ、次のように語ってくれた。

2018年9月発売の「EVOPOWER」。コンパクトで部屋に設置しやすくサッと使える機動力のよさと、生活感を感じさせない外観でインテリアにもなじみ、部屋に常設しやすいと好評だ
「臥牛窯」とのコラボレーションで生まれた限定の「EVOPOWER」。プロモーションというよりも、どちらかと言うと日本の伝統工芸贔屓のゴードン社長の“趣味”で作られたようだが、今後も相性がよいものがあれば実現していきたいとのこと

「シャークの掃除機は、あくまでユーザーの使い勝手が最優先です。ゆえに、EVOPOWERも持ちやすく、どこにでも置いて使いやすいサイズ・形状を追求したハンディクリーナーですが、空間に置かれた時のこともイメージし、見た目のデザインにもこだわって開発された、これまでになかった商品だと思います。そういう意味ではEVOPOWERのデザインはまさに"機能美"と言えます。臥牛窯は、単に私が好きだと言う理由でやりました(笑)。積極的にとまでは言えませんが、伝統工芸が好きなので、実現できれば個人的には今後もコラボ商品を展開してみたいですね」

ダイソンで日本の掃除機市場に風穴を開け、エレクトロラックスで新たな掃除スタイルを日本に定着させたゴードン・トム氏。掃除機メーカーとして全米で絶対的なブランド力を誇るシャークニンジャを率い、今度はどのような手腕を奮うのか楽しみである。

長年の経験・知見を武器にした"掃除機"を通じた外交で、日本と諸外国をつないで、今後も世の中の掃除・家事スタイルやあり方を変えていってくれることへの期待が寄せられる、ゴードン・トム氏
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