アップルの落日? 中国後退の影響が不可避に、日本市場でも逆風か<br />

アップルの落日? 中国後退の影響が不可避に、日本市場でも逆風か

2019.02.01

アップルが2018年10~12月決算を発表、売上減

中国経済の冷え込みが影響、iPhoneの販売不調が続く

日本市場でも「強すぎる」逆風、アップルの勝ち筋は?

米中貿易摩擦が世界のスマホ関連企業を脅かしている。

アップルは1月29日に2018年10〜12月決算を発表した。売上高は前年同期比5%減の843億1000万ドルだった。特に落ち込みがひどいのが主力商品であるiPhoneだ。今回から販売台数は明らかにしていないが、売上高は15%減の520億ドル。売上高全体に占めるiPhoneの比率は69.2%から62%にまで下がった。

中国変調はアップルだけの問題ではない

原因は、これまでアップルの成長を支えてた中国経済の急激な冷え込みだ。

アップルの地域別売り上げでは香港と台湾を含む中華圏が27%減の132億ドルとなった。アメリカやヨーロッパ、日本などは1%増の711億ドルであることから、いかに中国市場の落ち込みがアップルに悪影響を与えているかがわかる。

ただし、中国市場の影響に巻き込まれているのは何もアップルに限った話ではない。スマホ向けの液晶ディスプレイを得意とするシャープも「米中貿易摩擦によって売り上げに影響した」として、メーカー向けのディスプレイの売り上げが伸び悩んでいることを認めた。

また、韓国LGディスプレーも営業利益96%減という有様だ。オムロン、積水化学工業などスマホ関連メーカーも軒並み、決算での落ち込みが目立つ。

各社で共通しているのは、昨年11月以降、急速に中国方面からの発注が止まったという話だ。ファーウェイの幹部が、カナダで逮捕されるなど米中の関係に緊張が走る中、中国経済が一気に後退。中国メーカーが減産に走った。また、株安により、中国での可処分所得が減り、消費マインドも冷え込んだようだ。

ソニービデオ&サウンドプロダクツとソニービジュアルプロダクツの社長でもある高木一郎氏は「中国では現在、可処分所得が変化している。年初年末の株安が顕著で、3割も可処分所得が落ちている。幸いにもソニーは数量売ることを前提にした商売をしていないので、数が売れなくても価格をキープしていくことはできるのではないか」と語っている。 

中国市場の影響はアップルのみならず、スマホや電機業界全体の問題なのだ。

アップル強固な日本市場も安泰ではない?

アップルの日本における売上高は昨年同期に比べて5%減となっている。年末には、QRコード決済サービス「PayPay」が100億円あげちゃうキャンペーンを。ビックカメラにはiPad Proなどのアップル製品を購入する人たちの行列ができたが、売上げを押し上げるほどの効果はなかったようだ。

アップルとしては、2019年の日本市場はまさに正念場と言える年になるだろう。

最も影響を受けるのは、総務省による「完全分離プラン」の導入だ。これにより、携帯電話各社は、端末に割引を適用しての販売ができなくなる。スマホの本体価格は、定価のままで販売せざるを得なくなる。KDDIやソフトバンクでは、端末を分割払いしても月々の負担が少なくなるよう、4年間の割賦払いなども提供しているが、こちらも総務省や公正取引委員会から待ったがかかりそうだ。

割引がなくなり、新品のiPhoneを買うというのが難しくなる中で、これまで使っている機種を長く使い続けるという傾向が加速していくだろう。特に最新バージョンのiOS12はiPhone 5sにも対応しており、古い機種が現役バリバリで使えるとなれば、わざわざ新機種を買う必要にも迫られない。

総務省は中古スマホの流通促進に躍起だが、仮に市場に中古のiPhoneが増え、人気が高まれば、さらに新品が売れなくなる可能性がある。

アップルにしてみれば、日本市場は、いま逆風しか吹いてないくらいだ。

ユーザーとすれば、iPhoneが大幅値下げし、手に取りやすい価格になってくれればありがたい。しかし、アップルの場合、ブランドのためもあり、大幅に値下げしてまで販売台数を稼ぐという考えは毛頭ない。

ただし、為替の変動を考慮したという建前をつけて、価格調整をしていくことになりそうだ。日本においても、すでにNTTドコモが8000円、ソフトバンクは1万円の割引をiPhoneに適用させている

本体を大幅値引きすることなく、キャリアに割引させることで、お得感を出し、機種変更を促したいのだろう。しかし、今後、こうした割引を強化すれば、総務省から指摘が入ることも考えられる。

日本市場での売上げをあげるためにも、いかにiPhoneをうまいこと総務省に怒られない程度に、割引を適用して売っていくかが、アップルとキャリアには求められそうだ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu