3省3ガイドラインで、IT化と向き合い始めた日本の医療業界

3省3ガイドラインで、IT化と向き合い始めた日本の医療業界

2019.01.31

担当各省のガイドライン整備で医療業界にIT進出

震災もきっかけに、BCP対策の視点から医療データを電子化

遅れた日本、より良い生活のためにも早急な挽回を

出張先で体調を崩し、救急搬送されたとしよう。もし、持病を抱えていて、飲んではいけない薬があったとしたら… かかりつけの主治医や薬剤師がいれば、服薬の管理はしっかりできるだろう。しかし、出先の病院の場合、投薬情報や診療データが共有されていないことが多いはず。これはなかなかに恐ろしい話ではないだろうか。

頻発する大災害も危機感のきっかけに

そこで最近、注目を集めているのが「PHR(Personal Health Record)」である。その名が示すとおり、自分自身で健康に関するデータを管理するというものだ。では、そのデータはどこに保存するのであろうか。まさか、USBメモリに保存してつねに持ち歩く? そんなアブナイことはできない。

そもそもカルテやレセプトといった診療データは、非常にレベルの高い個人情報といえる。これまでは、厳格に管理のされた1つの医療機関内でしか利用されることはなかった。しかし、多様化する患者のニーズや、サービス向上の意識から、治療の現場では診療データの共有が重要な要素になってきている。

注目を集めるもう1つの要因が、巨大災害である。2011年3月の東日本大震災は甚大な被害をもたらした。医療機関も建物ごと破壊され、カルテなど多くの医療情報が失われた。実は、その1年前に厚生労働省は、医療情報をクラウドへ保存するクラウドサービスを認める法改正を行っていた。しかし、その時点ではクラウド移行は十分に行われていなかった。

医療データに限らず、バックアップの基本の1つに「BCP対策として、バックアップは遠隔地に保存する」という考えがある。BCPとはBusiness Continuity Planの略で、事業継続のために、不測の事態に備えて対策するというものだ。さらに、その前提として、如何にして医療データ(カルテなど)を電子化するかといった課題もある。最近では電子カルテを採用する医療機関も増えたが、いまだに紙のカルテを使用している医療機関は少なくない。電子化の具体策も重要な課題になるだろう。

まとめると、「電子化されたデータを適切に遠隔地にバックアップ、セキュアな共有」と、「紙などのカルテの電子化」を進める必要がある。

医療情報の3省3ガイドラインとは

一般的な医療機関が単独で、これらの実施にリソースをさくことは困難であろう。多くは、外部の民間業者に手段を委託することになる。そこで、外部に委託する際のルールや守るべき規範が生まれた。それが、「3省3ガイドライン」である。厚生労働省、経済産業省、総務省の各省が出しているガイドラインの総称で、具体的には以下の3つである。

・厚生労働省:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版(平成29年5月発行)
・経済産業省:医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン(平成24年10月発行)
・総務省:クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1版)(平成30年7月発行)

厚労省のものは医療機関が対象で、残りはサービスを提供する事業者が対象となる。これらは現在も検討が継続しており、2020年には、経済産業省・総務省による事業者向けガイドラインが統合整理され、「3省2ガイドライン」となる予定もある。

3省3ガイドラインが民間業者らのサービスに求める具体的な内容をかいつまむと、接続元IPアドレスの制限、クラウドサーバーIDS(不正侵入検知)/IPS(不正侵入防御)の導入、クラウドサーバーへのログの保管体制の整備などが機能として求められている。

この電子化・IT化で何が変わる?

AOSBOX Business Plusを発表するAOSデータの春山洋社長

3省3ガイドラインは民間事業者のビジネスを活性化し、医療の電子化・IT化を促進させるもの。では、このガイドラインに沿ったサービスでは実際、何ができるのか。具体例として、3省3ガイドラインに準拠して2019年春にAOSデータ社がリリースする予定のクラウドバックアップシステム「AOSBOX Business Plus」を見てみたい。

同サービスは、カルテやレセプトを電子化し、レントゲン・CTを画像データとして保全・共有するシステム。医療機関や患者の利便性を向上させるだけでなく、将来的にクラウド上にデータが蓄積されていけば、AIの分析などにより新たな知見を得られる可能性もあるだろう。

AOSBOX Business Plusのビジネスモデル
AOSBOX Business Plusの新機能
AOSリーガルテックの佐々木隆仁社長

AOSデータのグループ企業で、データ復旧技術に強みを持つAOSリーガルテック社の佐々木隆仁社長が、同サービスの発表会でこんな話をしていた。日本の司法・裁判制度の電子化・IT化は、世界的に見ると非常に評価が低いというのだ。世界銀行の調査では、司法・裁判のIT化に関連する項目において日本はOECD加盟35か国中25位で、政府もこれを問題視し、2020年までに3位以内を目指すとしているが、かなり厳しい状況である。

普段はスマートフォンを使い、オフィスの机にはPC、さらにクラウドサービスやSNSを駆使して情報を共有… 一般的な日本人の姿といってもよい。しかし、いざ行政サービスを受けようとすると、紙の用紙に手書きをし、収入印紙を貼って、本人が窓口に出向いて届けをしないといけない、そんな状況が当たり前で、非常にギャップがある。これが日本の現状である。

最大の原因は、既得権益を持つ人々が、なかなか現状を変えようとしない点だ。行政サービスなどでは、サービスを提供する側(政府や公官庁)自体が抵抗勢力であったわけだが、ようやく重い腰を上げ始めたという感じだろう。

世界銀行"Doing Business"における日本のランキング

AOSデータ社のサービスを例に医療業界の電子化を考えてみたが、3省3ガイドラインをきっかけに民間がビジネスを始めたことで、電子化に弾みがついたことは間違いない。将来を見据えて、変えるべきものは変えるという意思が大切だ。

今回は医療業界に焦点を当てたが、日本中が同じような状況なのかもしれない。未だにキャッシュレス決済の普及率ですら驚くほど低いのだ。使い古された感すらある「電子化・IT化」だが、現状に照らし遅れていることを認め、今後の日本の大きな目標にするべきだ。

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

損なのか得なのか? ユーザー目線で考えるトヨタのサブスク「KINTO」

2019.02.20

トヨタがクルマの月額定額サービス「KINTO」を開始

「カローラ スポーツ」が3年で192万円強

このサービスをトヨタが始めることの意義

トヨタが提案する新しいクルマとの関係、それが愛車サブスクリプションサービス「KINTO」(キント)だ。簡単にいえば3年契約の自動車購入プランだが、最大の魅力は“明朗会計”とでもいうべき月額負担のみで、クルマのある生活を手にすることができるところ。この新たな販売形態は、我々にどんなメリットをもたらすのだろうか。ユーザー目線で考えてみた。

トヨタがクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」を始める

「プリウス」が月々4万9,788円から乗れる新サービス

トヨタは2019年2月5日、愛車サブスクリプションサービスの運営会社として株式会社KINTOを設立すると発表した。新サービス「KINTO」の名称は、西遊記に登場する「筋斗雲」からインスパイアされたもの。必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる便利さや自由さを表しているとのことだ。

KINTOの愛車サブスクリプションサービスは3年契約で、毎月定額料金を支払えば、クルマを期間限定で所有できる。単に車両代が定額なのではなく、月々の料金には、登録時の諸費用および税金、メンテナンス費、任意保険、毎年の自動車税までが含まれている。このほかの負担といえば、ガソリン代や洗車代、必要な人には駐車場代くらいで済んでしまう。複雑なクルマのコストをシンプル化したことは同サービスの特筆すべき点といえるだろう。

サービスメニューは、トヨタ車対応の「KINTO ONE」とレクサス車対応の「KINTO SELECT」の2つが用意されている。

KINTO ONEで選べるのは、「プリウス」「カローラ スポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種。全てハイブリッド仕様となる。選択できるグレードは制限されるが、ボディカラーは自由に選べる(有償色は追加料金)。オプションはパッケージされたものから選択することになるようだ。サービス開始が3月1日からなので、詳しい仕様やオプションパッケージの追加料金などは明かされていないが、最も安いプリウスの場合、月額(税込み)4万9,788円~5万9,832円で手にすることができる。ボーナス併用払いを利用すれば、月々の負担を減らすことが可能だ。

KINTO ONEは「プリウス」(画像)などトヨタ車5車種からクルマを選べる。月額料金は4万9,788円~5万9,832円

KINTO SELECTでは「ES」「IS」「RC」「UX」「RX」「NX」から1台を選ぶ。車種はセダン、クーペ、SUVと豊富だ。選べるのはハイブリッドモデルのみとなる。3年契約であることに変わりはないが、KINTO ONEと違うのは、これら6車種のうち、1台に3年乗るわけではなく、6か月ごとに乗り換えができるところ。月額料金は194,400円と高めだが、こちらも全ての費用が“コミコミ”となっている。

KINTO SELECTは「UX」(画像)などレクサス車6車種からクルマを選べる。月額料金は19万4,400円だ

新車に半年ごとに乗り換えられるのはかなり贅沢といえるが、残念なのは、グレードとカラー、装着オプションまでが完全指定となってしまうこと。これは、納期などの事情を考慮した結果だという。ちなみに、KINTO SELECTは2月6日に始まったばかりだが、2月13日の時点で、すでに契約者が現れているというのには少し驚いた。

なぜハイブリッド車だけのラインアップなのか

車両のラインアップを見て気になったのは、全てがハイブリッド車である点だ。トヨタが先頃、KINTOについての説明会を東京で開催したので、この点について質問してみると、株式会社KINTOの小寺信也社長からは、「DCM(車載通信機)搭載車のみに限定した」との回答が得られた。もちろん、人気や需要を踏まえた点もあるだろう。しかし、リアルなところでは、エコカーに適用される減税の恩恵を考慮したという事情があるのかもしれない。

ただ、トヨタはKINTOがDCM搭載車のみであることを、ユーザーメリットとして還元する手立てについても検討している。それが運転のポイント化だ。通信機能を用いた運転の評価を行い、安全運転やエコ運転など、その乗り手がクルマを大切に扱っていると判断できれば、それを利用料金の値引きという形で還元する手法である。さらに、このデータを、KINTO利用車両の中古車販売時の品質保証にも役立てるようだ。

このほか、KINTOでは販売や追加サービスについても様々な構想を検討している模様。小寺社長によれば、中古車版のKINTOも将来的には検討してみたいアイデアだそうだ。また、地域によっては、冬期のマストアイテムであるスタッドレスタイヤについても、オプションとして対応できるように考えているとのことだった。

KINTOにラインアップされたのは、「クラウン」(画像)などDCMを搭載する車両のみ。いわゆる「コネクティッド技術」を利用すれば、ドライバーの運転を評価し、その評価に合わせたポイントを付与することができる 

KINTO ONEとKINTO SELECTのどちらのサービスも、まずは東京地区から試験的に始めて、今年の夏以降には全国に展開し、秋口にはサービス対象車を拡大していく計画だという。サービス拡大に合わせて、それぞれの車種や仕様など選択肢も増えていくようだ。

KINTOのユーザーメリットとしては、3年間の車両代および維持費というコストを明確化できる点に加え、購入プロセスを簡素化できる点が挙げられる。最終的な契約では販売店に出向く必要があるが、車両のセレクトや見積もりなどはWEBで済ますことが可能だ。ワンプライスのため、値引きを引き出す営業マンとの駆け引きも不要となる。

注目すべきは、自動車任意保険が料金に含まれていることだろう。基本的な対物・対人だけでなく、フルカバーの車両保険である点にも言及しておきたい。また、全年齢に対応しているので、保険料が高くなる若い人ほど大きなメリットが享受できる。車両保険の免責は5万円なので、もしもの際、負担が最小限で済むのも嬉しい。

KINTO ONEで「アルファード」(画像)を選んだ場合の月額料金は8万5,320円~9万9,360円。これは登録時の諸費用や任意保険などを含む価格だ

気になる“お得度”を「カローラ スポーツ」で考える

ただ、やはり気になるのは、同サービスの“お得度”だろう。そこで、今回はグレード構成が分かりやすい「カローラ スポーツ」を例にとって考えてみたい。

対象車である「カローラ スポーツ」のエントリーグレードである「ハイブリッドG“X”」の車両価格は241万9,200円。これに対し、「KINTO ONE」の月額料金の下限は5万3,460円なので、年間で64万1,520円、3年間の総額は192万4,560円とそれなりの金額になる。

比較対象としやすいのが、車両価格の一部を据え置く残価設定型ローンだ。とあるトヨタ販売店のWEBサイトを訪れ、車両本体のみで「カローラ スポーツ」を購入した場合の残価設定ローン(3年契約)を試算してみると、頭金なし、金利4.5%で月々4万7,400円となった。残価設定ローンの場合、一定額を据え置くので、最終回に据え置き額を支払わなければ、クルマは返却しなくてはならないので条件は似ている。これにメンテナンス代、自動車任意保険、2年目以降の自動車税などが加わることを考えると、もしかしたら、KINTOはお得なのかもと思えてきた。

ただし、普通にクルマを購入する際には、値引きや付属品のサービスがある(可能性がある)ことは、忘れてはいけないポイントだ。金利だって、キャンペーンなどでもっと条件が良いこともある。とはいえ、自動車保険のことを考えると、少なくとも若者は、KINTOをトヨタからの魅力的な提案と受け取るかもしれない。

KINTO ONEで「カローラ スポーツ」(画像)を3年間乗る場合、料金は“コミコミ”で192万4,560円だ

トヨタがわざわざ自社でサブスクリプションサービスを展開する狙いは、新たな自動車ユーザーの掘り起こしだけでなく、販売店のネットワーク維持と収益確保にもある。仮にトヨタのクルマを使ったサービスであったとしても、他社のサブスクリプションサービスやリースなどでは、必ずしもトヨタの販売店を利用するとは限らないからだ。

また、KINTOは定額販売なので、販売に必要な人件費が削減できるし、販売後もメンテナンスによる定期的な入庫がある。これがメンテナンスによる収益を生み出し、KINTOユーザーとの関係を築く時間ともなる。その販売店をKINTOユーザーが気に入れば、3年後、次のクルマを選ぶ際、新車購入かKINTOの新契約になるのかなど選択肢は色々あるものの、とにかく同店の顧客となる可能性があるのだ。

また、KINTOは値引きなしのワンプライス販売なので、同サービスが普及すれば、トヨタの収益率向上に寄与するのはもちろんのこと、3年後の中古車価格の向上にもつながるかもしれない。

クルマの月額定額サービスは損なのか得なのか

結局のところ、KINTOは得なのか、損なのか。高級車をコロコロ乗り換えるKINTO SELECTは別格として、KINTO ONEの詳しいメニューが明かされるまで明言しづらい点はあるが、トヨタ自身も手探り状態であり、割高と思われないような価格設定に苦心していることは感じられた。

まだまだテスト段階ともいえるKINTOだが、購入プロセスの簡素化、完全月額定額による分かりやすい価格設定などにより、本来であればまとまった資金が必要となる愛車購入を検討してもらいやすくする上で、トヨタにとって新たなオプションとなるのは間違いなさそうだ。また、3年契約なので、ユーザーはライフスタイルに合わせてクルマを選べるという利点もある。

ただ、自動車自体の完成度は年々高まっており、ユーザーの平均保有期間と自動車の寿命は長くなっているのが現実でもある。コスト面で考えれば、1台を長期保有した方がトータルで安く済むのは間違いない。また、KINTOは定額サービスであるがゆえに、目先のコストだけに捕らわれた結果、身の丈に合わないクルマを選んでしまう危険性もあるだろう。

とはいえ、KINTOというサービスの登場が、とりあえず一度、クルマを持ってみようと考えるきっかけになるケースはあるはずだ。“所有”にこだわらない時代に、まずはクルマと向き合ってみるという機会を作り出すだけでも、トヨタがKINTOを始める意味は大きいのかもしれない。

関連記事
docomo withに「iPhone 7」が追加、3ブランドから「6s」が消えた

docomo withに「iPhone 7」が追加、3ブランドから「6s」が消えた

2019.02.20

docomo withで新たに「iPhone 7」が選べるように

同プランの対象端末であった「iPhone 6s」は在庫切れ

NTTドコモは、2019年2月27日より「docomo with」の対象端末に「iPhone 7(32GB)」を追加すると発表した。

iPhoneを取り扱うドコモショップや同社Webサイトで予約受付を開始する。一括価格は税別3万9600円。アップルストアの価格が税別5万800円なので、1万円以上お得ということになる。

iPhone 7

docomo withは2017年6月より始まったサービスで、ユーザーが端末を定価で購入することにより、毎月の通信料から1500円を恒久的に割引くというもの。端末購入補助が利用できないため、基本的には端末代金をそのまま支払う必要がある。

月々の利用料金を毎月1,500円割引きする料金サービス「docomo with」

3ブランドのオンラインショップから「6s」が消えた

NTTドコモは昨年9月、同プランに「iPhone 6s」を追加したが、今回の発表時点ですでに同社のWebページ上では「在庫切れ」になっている。

すでにAppleは昨年の「iPhone Xs」「Xs Max」「XR」の登場と同時期にiPhone 6sの販売を終了しており、KDDI(au)のサイトからは販売ページが消え、ソフトバンクのサイトでも「在庫切れ」の状態だ。

これで3大ブランド(ソフトバンク、KDDI、NTTドコモ)からiPhone 6sがなくなった。もちろん、各ブランドショップに在庫が残っている可能性はあるだろう。しかし、それがなくなるのも時間の問題かもしれない。

NTTドコモでは2019年第1四半期に通信料金を値下げした新たなプランを発表した。NTTドコモの吉澤和弘社長は2018年第3四半期の決算会見で「値下げの発表と実施は一緒のタイミングではない。第1四半期の前半で発表を行い、後半でスタートする」とコメントしていることから、今年の4月上旬に発表が行われ、6月あたりに開始という線が濃厚だ。

毎年2〜3月はスマホ業界的には「春商戦」と言われ、1年間で最もスマホが売れる時期とされている。しかし、今年はこうしたキャリア各社の状況を受けて「買い控え」が起こっているのでは、という声もある。春商戦真っただ中で行われた今回のNTTドコモの発表は、この状況に変化をもたらすかもしれない。

関連記事