モバゲーからAIの会社へ、DeNAが新会社で描く未来

モバゲーからAIの会社へ、DeNAが新会社で描く未来

2016.07.21

ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)といえば、モバイル向けゲーム配信「モバゲー」のブランドが非常に強力で、エンターテインメント系会社という印象が強い。しかし昨年あたりから同社はモビリティー事業へ参入するなど、従来のインターネット中心だった戦略を大きく変えようとしている。DeNAはこの先、どのような未来を描いているのだろうか。

PFNとAIの合弁会社PFDeNAを設立すると発表

DeNAは生粋のインターネット企業

DeNAは1999年に創業し、当初はインターネットオークションサイト(ビッダーズ、モバオク)やショッピングモールなどeコマースを、2006年からは携帯電話向けゲームサイト「モバゲータウン」(現モバゲー)の運営を主たる業務として、急速に成長してきた企業だ。プロ野球球団の買収(横浜DeNAベイスターズ)などの大きな買い物もしてはいるが、基本的にはインターネット上のサービスが中心であることには変わりがない。特に「モバゲー」は国内でGREEと並ぶ二大勢力として一時代を築いたこともあり、DeNAといえばモバゲーという印象も強いだろう。

しかし、一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いだった携帯向けゲーム市場も、社会問題化した「ガチャ」への批判や、ヒット作に欠ければ一気に転落してしまう危険性を孕んだ不安定な市場であり、安定した経営のためには新たな事業の柱を探す必要があった。

そこで2015年からDeNAはこれまでと全く異なる事業展開として、自動運転車の開発を行うベンチャー企業のZMPと合弁で、無人タクシー事業の開業を目指す「ロボットタクシー」を設立。モビリティービジネスへと参入した。その後も仏イージーマイル社と提携して無人バス事業への参入や、九州大学およびNTTドコモと提携しての自動運転実験など、本腰を入れてこの市場の開拓を進めている。

AIこそがDeNAの目指す本命

自動運転はここ数年来、自動車業界で最もホットな話題として扱われているキーワードだ。既存の自動車メーカーのみならず、電気自動車で急速にシェアを伸ばす米テスラモーターズ、さらにはグーグルやアップル、ウーバーなど、IT企業の参入も大きな話題となっている。

自動運転には、刻々と変わる自動車の周囲の情報をきめ細かに集めるためのセンサー技術と、そこから得られた情報を高速に処理し、安全性を判断して自動車を制御するソフトウェア技術が必要だ。特に後者は、コンピュータの高性能化だけでなく、状況を判断する人工知能(AI)技術が劇的に進歩したことにより、急速に実用化の目処が立ちつつある。

AIの開発にはさまざまな手法があるが、特に深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる手法が確立したことにより、これまでのソフトウェア開発から比べると飛躍的な発展が望めるようになった。たとえば、あと10年はかかると思われていたプロ囲碁棋士をAIが倒すという目標は、ディープラーニングによってわずか2~3年で達成されてしまった。

また、ディープラーニングによって新薬が開発されるなど、幅広い分野でこれまで考えられなかったような発展を見せている。新たに参入した事業であっても、AIを活用することで、業界トップに躍り出る可能性のある市場が、大量に残されているわけだ。

ディープラーニングによる発展速度の上昇率は、これまでの常識をはるかに超えるものとなっており、これがDeNAがAIに注力する理由となった

DeNAとしてはまさにここに目をつけ、今後の成長のための大きな原動力としてAI技術を育てていきたいわけだ。モビリティー市場への参入も、もちろん単独の事業としての成長性はさることながら、AIを使ったさまざまな事業への布石と見たほうがいい。

AI事業の強化を図る「PFDeNA」

DeNAはこれまでインターネット上で、ゲームやSNS、eコマース、ヘルスケア事業などを手がけてきており、莫大な量のユーザー行動や取引データを抱えている。前述したディープラーニングでは、学習のために非常に大きな量のデータを読み込ませて処理する必要があるのだが、まさにそのための「餌」には事欠かない状況だ。

しかし一方で、ディープラーニング技術そのものへのノウハウがあるわけではない。ロボットタクシーで提携したZMPや九州大学、仏などの技術は自動車の運転に特化したかたちなので、汎用性のあるディープラーニング技術やデータ解析を持ったパートナーが必要だった。

そこでDeNAが目をつけたのが、国内でのディープラーニング開発で高い評価を受けるPreferred Networks(PFN)だ。PFNは元々、自然言語処理などの技術を持ったPreferred Infrastractureから2014年にスピンオフして設立されたベンチャー企業で、IoTなどから得られる莫大なデータを人工知能の機械学習を経て処理し、解析することに特化している。「グーグルの先を行く技術を狙う」「業界トップとしか組まない」と明言し、トヨタが10億円を出資するほど高く評価されている、その実力は世界でも屈指のものだ。

両社は7月14日に合弁企業「PFDeNA」を設立することを発表した。この新会社では、DeNAが蓄積してきたさまざまなデータをPFNのディープラーニング技術により解析し、企業向けソリューションや消費者向け商品・サービス等の提供を行なっていくという。

新会社の設立により、DeNAは自社の事業領域でAIを活用できるようになる。たとえばゲームであれば、手強い敵のアルゴリズムを開発したり、逆に味方のキャラクターをAIで操作することも可能になる。ヘルスケア事業であれば運動データを解析して健康へのアドバイスを行ったり、未発見の潜在的な病気の発見といったこともできるだろう。すでにグーグルやマイクロソフトがbotによる対話システムを実用化しているが、DeNAでもオンラインサポートをAIによる対話式のサービスに置き換えることを視野に入れているようだ。

DeNAがデモンストレーションした自然言語解析によるチャットbot。人間との会話が自然に行えており、これをサポートなどに活用する意向だ

新会社で展開しうるサービスは?

また、自社で成功した事例を他社にソリューションとして販売するケースも考えられる。ディープラーニングには初期にまとまった設備投資やビッグデータそのものが必要となり、またデータの分析やその精度を高めるにはノウハウも必要なので、どこでも簡単に手が出せるというわけではない。そこで、DeNAがすでに解析済みのデータやソリューション、あるいは解析システムそのものを提供していくというわけだ。前述したオンラインサポートなどは、まさに多くのユーザーとのインタラクションデータを抱えるDeNAの得意分野となるだろう。

DeNAとPFNの強みを生かすことで、今は企業や研究室中心のAIの利点がユーザーレベルにもたらされることが期待できる

一方PFN側としては、AI開発に欠かせないビッグデータを安定的に提供される点や、これまでPFN単独ではアプローチできなかったさまざまな分野との接点が得られることになる。プロモーションなどもDeNA側に振ることで、研究開発に専念できるというメリットも得られるだろう。

また、PFNはIoTや産業用ロボットなどハードウェアとの連携にも実績があり、ソフトウェアだけでなく実際のハードウェアを使ったプロジェクトにも強みを発揮できる。特にロボットの制御関係では、グーグルなどにも真似のできない技術を持っており、これらを生かしたサービスの提供にも期待が持てる。

AIの開発は非常にコストのかかる分野であり、ノウハウの蓄積も含めてまだまだこれから新規参入のプレーヤーが大手を逆転する余地がある、極めてエキサイティングな市場だ。グーグルやIBMといった世界規模の巨人による開発ばかりが目立つが、PFDeNAの誕生により、日本発の企業によってこれらの大企業に伍する成果が期待できそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。