総務省「中古スマホ普及」方針は通信業界に打撃? 5G普及を阻害する恐れも

総務省「中古スマホ普及」方針は通信業界に打撃? 5G普及を阻害する恐れも

2019.01.25

総務省が中古スマホを推進? 端末代金引き下げの一環か

キャリア関係者は「調査を受けているのは事実」とコメント

中古スマホ推進は諸刃の剣、日本の5Gスマホ普及に影響も

総務省と公正取引委員会が、携帯電話大手3社が下取りした中古スマートフォンの流通実態調査に着手したという報道があった。キャリア関係者に確認したところ「調査を受けているのは事実」とのことだ。

これまで各携帯電話会社は、iPhoneの新機種が発売された際には積極的にユーザーが利用しているスマホを下取りする施策を展開してきた。中古端末を買い取ることで、新機種買い替えに対しての負担を軽減するという狙いだ。

一方で、下取りしたiPhoneは国内ではなく、海外に転売されているという噂が絶えなかった。総務省では「国内で新機種のiPhoneが売れなくなる恐れがあるため、アップルの言いなりになって、キャリアは下取りしたiPhoneを海外に転売しているのではないか」と見ていたようだ。

中古の流通増でスマホを買いやすくする狙いか

日本では今後、「完全分離プラン」の導入により、端末代金に対する割引がなくなろうとしている。新機種が高価で買いにくくなる中、中古スマホの流通を増やすことで、国民がスマホを買いやすい状況を作りたいというのが、総務省の考えとしてあるようだ。

しかし、実際のところ、キャリアは国内で中古スマホが流通するのを嫌がって、あえて海外に転売しているものなのか。かつて、キャリア関係者に話を聞いたところ「海外に転売した方が高く売れるからに過ぎない。単純な話だ」と語っていた。

その後、キャリアから下取りスマホを買取り、海外に転売している仲介業者にも話を聞いたことがあったが、彼らによれば「海外の業者は、日本の下取り端末を大量に高い値段で買い取ってくれる。とにかく、まとめて大量に買ってくれるという点が大きい。日本国内では、MVNOであっても、買い取れる端末台数は限られており、商売にならない」と事情を明かす。

中国やアジア諸国からすれば、日本で下取りされたスマホは、本体カバーをつけた状態で使われていたものが多く、使用状況も良いため、中古市場でも高値で取引されやすいという。また、(契約縛りに起因する)2年前など、比較的、新しい機種が下取りとして回収されているため、転売しやすいという事情もあるようだ。

キャリアが下取りした端末を海外ではなく日本で流通させるには、日本の中古業者やMVNOが、高値で下取り端末を購入できるだけの調達力が必要だということのようだ。

日本は本当に中古スマホの普及を目指すべきなのか

中古スマホの流通量が増えれば、国民にとってみれば選択肢が増え、安価にスマホを入手できる環境が整うのは間違いないだろう。しかし、一方で、中古スマホの普及による「デメリット」も十分に理解しておく必要もある。

スマホにはiOSもしくはAndroidというOSが搭載されており、毎年のように新バージョンが登場している。もちろん、大きなバージョンアップだけでなく、マイナーなアップデートも頻繁に行われている。これらのアップデートは単に新機能を追加するだけでなく、セキュリティ面での強化という意味合いもある。

iPhoneは最新のiOS12でも、かなり古い機種であってもバージョンアップの対象となっているが、Androidの場合は、バージョンアップがあまりされない機種などが散見される。中古Androidスマホを購入したものの、バージョンアップが受けられないとなると、それだけで、ウィルスや個人情報漏洩などのリスクにさらされる危険がある。

iPhoneには「リファービッシュ品(整備済み品)」があるが…

また、バッテリーは、どちらかといえば「消耗品」といえる存在だ。最近のスマホはバッテリーが内蔵されてしまっているため、自分では交換ができない。しかし、バッテリーは2年以上使っていれば寿命が来てしまうため、「中古スマホを買ったが、バッテリーがヘタっていて、すぐに電池切れになってしまう」ということもあり得る。

iPhoneには、中古品を回収し、一度分解した後に、電池などを新品に交換して製品として復元して販売する「リファービッシュ品(整備済み品)」というものが存在する。

総務省が本当に中古スマホを推奨したいのであれば、単なる中古品ではなく、リファービッシュ品のような「整備済みの安心して使える中古品」の存在をアピールする必要があるだろう。

最大の懸念は5G普及への影響

日本では2020年から新しいサービスとして5Gが始まる。本来であれば、5Gの普及に向けて、5G対応スマホをバラまくぐらいの施策が必要だが、昨今の「完全分離プラン」の導入により、5G対応スマホの早期普及は見込めなくなってしまった。

日本が5G後進国に?

さらに、仮にこのまま中古端末を盛り上げるとなれば、5G対応スマホに手を伸ばす人は激減することだろう。中古スマホの普及促進は、国民をウィルスの脅威に晒すだけでなく、5G推進に向けて動き出す日本の通信業界の足を引っ張ることになりそうだ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu