【フジメディアホールディングス】M&Aなどの投資で、メディア以外の事業領域へ挑戦

【フジメディアホールディングス】M&Aなどの投資で、メディア以外の事業領域へ挑戦

2016.07.21

【フジメディアホールディングス】M&Aなどの投資で、メディア以外の事業領域へ挑戦

 フジメディアホールディングス<4676>はフジサンケイグループであり、大きく分けて「放送」「製作」「映像音楽」「生活情報」「広告」「都市開発」の6つの事業からなる。連結子会社は38社となり、放送事業を中心として「メディア・コングロマリット」を目指している。2015年4月には都市開発のセグメントにおいて、サンケイビルウェルケア、グランビスタホールディングス、グランビスタホテル&リゾートを連結に加えている。

■フジメディアの主なM&A(資本提携を含む)

年月 概要
2004.1 シンコーミュージック・パブリッシャーズの株式を28億5000万円にて取得
2005.3 ソフトバンクインベストメントとニッポン放送とともに、コンテンツ・メディアブロードバンド関連企業を投資対象とするベンチャーキャピタルファンド(基金規模200億円)を設立。SBI20億円、フジテレビ160億円、ニッポン放送20億円
2005.3 サンケイビルの第三者割当増資にて93億3400万円にて引き受け(11%⇒26%)
2005.5 ニッポン放送の議決権32.5%を保有するライブドアパートナーズの全株式を取得。ライブドアのライブドアパートナーズに対する貸付金債権の買い受け、弁済を含め買収価額総額は670億円
2005.9 産業活力再生特別措置法に基づき、ニッポン放送株式1株につきフジテレビ株式ではなく、6,300円の現金交付の簡易株式交換(約241億円)により完全子会社化
2006.4 ニッポン放送ホールディングスを吸収合併
2007.3 ポニーキャニオン(84%⇒100%)、扶桑社の完全子会社化(84.4%⇒100%)、ビーエスフジの株式を追加取得(39.5%⇒44.5%)
2007.11 ディノスの株式を追加取得し完全子会社化(94.4%⇒100%)
2008.2 富士パシフィック音楽出版の株式を追加取得し完全子会社化(90%⇒100%)
2008.5 サンケイリビング新聞社の全株式を48億1400万円にて取得し、完全子会社化(41%⇒100%)
2011.4 ビーエスフジを株式交換により完全子会社化(44.5%⇒100%)。取得原価83億800万円
2012.3 秋田テレビ、岩手めんこいテレビ、岡山放送、沖縄テレビ放送、仙台放送、テレビ新広島、新潟総合テレビ、福島テレビ、北海道文化放送を追加取得し持分法適用会社へ
2012.4 持分法適用関連会社であったNEXTAPの株式を追加取得し完全子会社化(38.7%⇒100%)
2012.6 関西テレビ放送の株式を追加取得し持分法関連会社に(2.3%⇒2.6%)
2013.1 ベンチャーキャピタル事業新会社として「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ」を設立
2013.3 持分法適用関連会社であったサンケイビルを公開買い付けにより492億7200万円で子会社化(31%⇒97.1%)
2013.12 関係強化のためWOWOW株式70万株を東芝より議決権比率4.86%を25億2700万円で取得
2014.1 協同広告はクラオスに吸収合併し消滅
2014.1 スタジオアルタを売却し、持分法関連会社から除外
2014.4 エグジットチェーンの株式を追加取得し完全子会社化
2014.7 タイの最大手TV 通販事業者であるTV Direct Public Companyの株式2.43%を取得
2014.8 伊藤忠商事の子会社であるICTパートナーズの株式37%を取得し、持分法関連会社に
2014.9 健康食品等の製造・販売を行うアルマードの株式を売却
2015.2 eコマース、O2O(on-line to off-line)、インターネット・モバイル全般などで、対象企業はグローバル展開を目指すアーリーステージを中心とするベンチャーキャピタルのQuest Venture Partners Fund II LPへ出資
2015.4 日本在住外国人向けの英語ニュースサイト「Japan Today」や求人・生活情報を提供するサイト「GaijinPot」を運営するジープラス・メディアと、その関連会社で不動産情報提供サービス「realestate.co.jp」を運営するリアル・エステート・ジャパン社を買収
2015.4 ホテル運営等を行うグランビスタホテル&リゾート株式99.6%を取得し子会社化
2015.5 米国発の動画配信ベンチャー、HJホールディングス(「Hulu」を運営)と動画配信分野で協力
2015.5 資本業務提携を目的に、音楽専門チャンネルを持つスペースシャワーネットワークの株式を第三者割当増資にて16.65%を2.6億円にて取得
2015.9 子会社で婚礼プロデュースを行うストーリア(売上9.8億円)株式100%をエスクリへ譲渡
2016.1 複合メディア企業の独ベルテルスマンと音楽著作権の共同保有、世界で徴収する著作権収入を分け合う仕組みに
2016.2 グーグル社発のベンチャー企業で世界的な人気スマートフォンゲーム「イングレス」を運営するNiantic,Inc.に出資し資本参加

 フジメディアのM&Aについては、大きなものとして05年に起きたニッポン放送ライブドア事件がある。当時フジテレビの筆頭株主であったニッポン放送の株式に対し、堀江貴文氏率いるライブドアがフジテレビの経営権を取得するために買収を仕掛けた事件であった。最終的にはライブドアとフジテレビの和解により、フジテレビ側が経営権を取られることはなかったが、ライブドアが取得していたニッポン放送株式の取得とライブドアの第三者割当増資の引き受けにより1400億円が必要となる苦い経験となった。

 その後のM&Aに関しては、グループ株式の追加取得や、協業の可能性の見込める企業に対し出資や第三者割当増資を引き受けるなど、毎年数件のM&Aを行っている。13年にはベンチャーキャピタルの組成、15年にはホテル運営などを行うグランビスタホテル&リゾート株式の子会社化、16年4月には、自社にゲーム会社を立ち上げるなど、メディア部門以外の新たな領域の開拓に力を入れている。

他社との比較(メディア部門)

 フジメディアホールディングスにおいては、放送事業を行うフジテレビジョンが同社では圧倒的な稼ぎ頭となる。民放テレビキー5局(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)の中では1984年から15年まで売上高トップを維持してきた。しかし16年3月期の決算で、売上高トップの座を日本テレビに譲ることとなった。前年対比で見ると、5局のうちフジテレビのみが減収となり、キー局の中でも苦しい環境にいる。

■2015年度売上高比較

 細かく見ていくと、売り上げに対し、日本テレビが圧倒的な利益を出していることが分かる。フジテレビは日本テレビを除く4社の中でも利益面で苦しい立ち位置に居ることが分かる。メディア全般が低成長ということはなく、実際のところ日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京の3社は16年3月期で過去最高益とかなり好調である。一方フジテレビは、売上高では3分の1ほどになるテレビ東京と比べても営業利益、経常利益、純利益では大きな差が無い。民放5社のうちでは完全に一人負けとなった状況であり、メディア部門の強化は喫緊の課題であろう

セグメントの分散(ホールディングスでの比較)

 16年3月期でのそれぞれの売り上げと利益について示した。

■売上と利益

 それぞれをホールディングスで見てみるとフジメディアの売上高が大きく抜きんでていることが分かる。

 まずセグメントを見てみよう。比較すると、フジメディア以外の4社は3~4の事業セグメントに分けているが、フジメディアはセグメントが7つと他社に比べ多角化していると言える。フジメディアは現時点で100社の子会社と52の関連会社を持っており、事業の分散を進めている。利益の面で見ると、日本テレビに対しては倍以上の差をつけられているものの、外の3社に比べると利益は出ている。フジメディア単体を見ると、放送部門の利益が少ない一方、都市開発のセグメントが利益に大きく貢献していることが分かる。フジメディアはメディアでの売り上げを中心とするも、不振であるメディアの変動に左右されないポートフォリオを構築しているとも言えよう。今期の売り上げ見込みにおいても都市開発事業については23%増を見込んでおり、同事業をさらに拡大させる算段のようだ。

■総資産額

 厳しい環境に立つフジメディアであるが、財務を見てみると、同社の総資産は16年3月期で1兆1364億円、自己資本比率も減少傾向にあるものの55%と問題ない水準である。

新たな事業領域へ

 メディア関連で一人負けしている同社にとって、メディア事業の強化は喫緊の課題となるものの、数年間利益が減少し続けているメディア事業が一気に利益が取れるようになることは難しい。そのため成長分野への投資が必要になろう。

 今でこそ珍しくはないが、13年2月にフジメディアはテレビ局では珍しく総額で15億円を投資するベンチャーキャピタル(フジ・スタートアップ・ベンチャーズ)を設立した。スマホ向けアプリの開発や放送と連携できるネット企業の囲い込みや育成を目的として設立したが、キャピタルゲインを得ることを主眼とする銀行系ファンドと異なり、いかに協業できるかというところに主眼を置いている。今現在ではゲーム、学習コンテンツ、マーケットプレイスなどベンチャー企業14社に出資し、新たなメディアコンテンツ価値創造を目指している。

 また、自社においても16年4月にスマートフォン及びPC向けゲームの企画運営などを行うフジゲームズを設立した。テレビ局がゲーム会社を持つことは珍しく、新たな柱をつくろうとする同社の気概を感じる。

 さらなる多角化を目指し、新たなことに挑戦を続けるフジメディアの次の一手はどのようなものになるのだろうか。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。