吉野家が“ちょい飲み”で新サービス - スマホでボトルキープはヒットするか

吉野家が“ちょい飲み”で新サービス - スマホでボトルキープはヒットするか

2016.07.21

吉野家の“ちょい飲み”が進化する。スマートフォン上に焼酎とビールの仮想ボトルをキープし、全国の店舗で飲むことができる「デジタルボトルキープサービス」が始まったのだ。顧客に「楽しく飲んでもらう」のが同サービスを導入する最大の狙いと河村社長は語るが、競争が激化するちょい飲み市場において、ボトルキープへの対応は他社との差別化につながるのだろうか。

吉野家でボトルキープできる面白さ

吉野家は7月20日に同社公式アプリ「吉野家アプリ」の配信を開始。「デジタルボトルキープ」は同アプリの目玉となるサービスだ。ボトルキープできるのは焼酎と生・瓶ビールの2種類。ボトル1本で10杯飲むことができる。

デジタルボトルキープ、歩数に応じてクーポンが取得できる「歩く割」(画像右側)、弁当予約、冷凍牛丼の具などを購入できる通販といったサービスをアプリに集約した吉野家

価格は焼酎が2,500円、ビールが3,000円となる。通常価格で10杯飲むよりも、ボトルで飲むと500円お得だ。料金はボトルを入れる際に店舗で支払う。ボトルの有効期限は6カ月となっている。

「楽しく飲んでもらいたいというのが一番」。アプリ発表会に登壇した吉野家の河村泰貴代表取締役社長は、デジタルボトルキープ導入の理由についてこう語った。考えてみると、デジタルボトルキープの仕組みは、1杯あたり50円の割引きが受けられる10枚綴りの回数券を発行するのと変わらないが、「吉野家にボトルを入れる」ということ自体を面白がってもらいたいというのが同社の考えのようだ。

スマホ上でボトルキープができる利点はいくつかある。居酒屋などでボトルを入れる場合と比較すると、全国(540店舗)どこでも飲めるのはデジタルならではのメリットだ。例えば仕事帰りに職場近くの吉野家でボトルを入れて、週末は自宅近くの店舗で続きを飲むといった使い方も可能となる。ビールのボトルキープもデジタルだからこそ可能なサービスといえるだろう。

「ちょい飲みの先駆け」(河村社長)を自負する吉野家が始める新サービス。お得感もあるし便利そうだが、この取り組みにより、ちょい飲み市場における吉野家のポジションはどのように変化するだろうか。

お得感を同業他社と比べると

同業他社の動きを見ると、公式アプリは松屋が吉野家に先駆けて導入している。クーポンを取得できる点など、機能的に両社のアプリに大きな差はなさそうだが、少なくともデジタルボトルキープは吉野家が業界に先んじて始めるサービスのようだ。

ボトルを入れると、吉野家では生ビールが1杯300円で飲めるようになる。一方の松屋は、生ビール(中ジョッキ)を1杯290円で提供している。量を比べていないのでなんともいえないが、ボトルキープの導入で吉野家の「お得感」が際立つわけではないようだ。ちなみに、すき屋は瓶ビール(500ミリリットル)を410円で提供しているが、生ビールは取り扱っていない。

ボトルを通じて利用客との関係を深められるか

「(ボトルキープ導入で)客層が変化するとは考えていない。期待しているのは利用頻度の向上だ」。河村社長も語るように、このサービスには吉野家利用者の来店頻度を向上させる効果が見込めそう。気が向いたら立ち寄るくらいだった“ちょい飲み”の利用客が、ボトルを入れることで吉野家を行きつけの店として使うようになるかもしれないからだ。

2013年から始めた吉野家のちょい飲み(通称:吉呑み)は大変好調と語った吉野家の河村社長

ボトルを入れた客が、飲みきるまでは吉野家に通うと仮定すれば、同サービスは顧客の囲い込みにもつながる。ちょい飲み市場に参入する外食チェーンは増える一方だが、顧客との長い付き合いを構築できるボトルキープというサービスが、吉野家と他社との差別化ポイントになる可能性はありそうだ。同サービスが呼び水となって吉野家アプリのダウンロード数が増えれば、クーポン配布や広告といったアプリによる集客効果も高まるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu