華やかなファッションの祭典「TGC」に託された社会的な役割

華やかなファッションの祭典「TGC」に託された社会的な役割

2019.02.01

地方都市へと活動の場を広げるTGCのねらい

数千人規模の集客が地方に経済効果をもたらす

「SDGs」という国際的な開発目標を強力に発信

きらびやかなステージライトが降り注ぐなか、最新ファッションに身を包んだモデルたちが颯爽とランウェイを歩く……。ファッションイベントとして、毎回大きな注目を浴びる「TOKYO GIRLS COLLECTION」(TGC)ではお馴染みの光景だ。そのTGCの地方イベント「SDGs推進 TGC しずおか 2019」が開催された。

「SDGs 推進 TGC しずおか 2019」のオープニング

単なるファッションショーではない側面

もともとTGCは“日本のガールズカルチャーを世界へ発信”というのがおもな役割といえるだろう。事実、筆者もTGCをそのように捉えていた。だが、数年前から単なるファッションイベントというだけではない側面が目立ち始めている。

ランウェイから観客席にプレゼントを投げる乃木坂46の白石麻衣さん

たとえば福岡県・北九州市で開催されている「TGC北九州」。TGCといえば国立代々木競技場やさいたまアリーナといった、首都圏の大規模会場での開催が目立つ。宮崎県や福島県で開催された例もあるが、“単発”といったイメージが強かった。だが「TGC北九州」は、2015年の開催を皮切りに計4回行われ、地方都市で開催されるTGCとしては、過去最多を誇る。

そして、地方都市開催という流れはより一層加速し、広島県や富山県もTGCの舞台となった。さらに2019年、この年最初に開催されたのが「SDGs推進 TGC しずおか 2019」だ。ちなみに静岡県でTGCが開催されるのは初めてで、4月にはこちらも初となる熊本県開催が控えている。

ランウェイを颯爽と歩くモデル

もちろん首都圏でのTGC開催はメイン路線だろう。それプラス、地方進出を強めている背景は何か。それは“地方創生”にある。TGCは、SNSのフォロワー数が数十万人もいるモデルやアーティストが100~200人参加する。彼ら彼女らがSNS等でイベント告知を行えば、それだけで相当な情報拡散につながる。日本国内だけでなく、海外でも注目されているイベントなので、インバウンドへの影響も少なくないはずだ。これだけでも、地方都市には大きなメリットといえる。

そして直接的な経済効果も十分に期待できる。まず、TGCといえば多くのモデルやスタッフが参加・活動するイベントだ。交通機関や飲食・宿泊施設への経済効果は少なくない。事実、会場となった「ツインメッセ静岡」にタクシーで移動する際、運転手さんは「今日はツインメッセ静岡を目指すお客さんで、朝から会社を挙げてのフル稼働です」と話した。そして、開場ともなれば約7,000人もの観客が会場を目指す。どのくらいの経済効果になるのか、見当もつかない。

「SDGs推進」を強烈にアピール

そして「SDGs推進 TGC しずおか 2019」には、地方創生と並ぶ大きな役割がある。まさにイベントのタイトルにある「SDGs推進」だ。「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)とは“持続可能な開発目標”のことで、「貧困」「飢餓」「保健」「教育」「ジェンダー」といった17の国際目標により、「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会」を実現するというもの。2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された開発目標だ。

ステージのスクリーンに映し出された「SDGs」の開発目標
タレントの早見優さんが国連旗を掲げてランウェイを進む(後方の2人は娘さん)。「SDGs」が国連主導の開発目標であることを示す象徴的なシーンだ

この「SDGs」を推進するために、強いメッセージを込めて開催されたのが「SDGs推進 TGC しずおか 2019」なのだ。静岡県知事・川勝平太氏もイベントを訪れ、県を挙げての「SDGs推進」を宣言した。

ステージに上がった川勝平太静岡県知事(右から2番目)。知事が着用していた遠州織物の展示・販売も会場で行われていた

ではなぜ「SDGs」をTGCが推進するのか。W TOKYO 東京ガールズコレクション実行委員会 チーフプロデューサー 池田友紀子氏は「これまで『TGC 地方創生プロジェクト』を通じて地方の活性化を進めてきましたが、今回は『SDGs推進』という国際的な目標もテーマにしました」と話す。

「『SDGs』は2030年を年限とした開発目標ですが、まだまだ認知度が低いのが現状です。そこで『SDGs 推進 TGC しずおか 2019』を開催することで、若い人たちに少しでも知ってもらえればと思っています」(池田氏)

インタビューに応じてくれた深川麻衣さん

事実、ショーに参加した乃木坂46の深川麻衣さんは、「『SDGs』という言葉にあまりなじみがなかったのですが、今回イベントに参加させていただいて理解が深まりました。今後も『SDGs』に関わる機会があれば、積極的に参加したいです」と話す。またイベントを裏で支えた学生ボランティアも、それまで「SDGs」という言葉を知らなかったという。

前述の池田氏は、「この『SDGs推進 TGC しずおか 2019』が開発目標のとっかかりになればいいと思います。若い世代に『SDGs』という言葉を知っていただき、今後、多くの活動を生み出すきっかけになればと思います」と話す。

2019年は「G20サミット」「TICAD7」(アフリカ開発会議)「初のSDGs首脳級会合」が開かれる。「SDGs」の浸透がさらに進む年になるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○阿久津良和のITビジネス超前線
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○山下洋一のfilm@11
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu