ワイドFM開始でリスナー獲得のチャンス到来!広告収入増加を目指すAM放送局の課題とは

ワイドFM開始でリスナー獲得のチャンス到来!広告収入増加を目指すAM放送局の課題とは

2016.01.20

FM補完放送が首都圏を含む日本各地で始まり、新規リスナーの獲得に向け絶好のチャンスが訪れたかに見えるAMラジオ業界。ラジオ広告費が1991年をピークに減り続ける厳しい状況のなか、AMラジオ各局は新たに獲得したチャンネルを活用し、リスナー数と広告収入の増加につなげたいところだ。「ワイドFM」の呼称でFM補完放送をスタートさせたTBSラジオ、ニッポン放送、文化放送の在京AM3局に話を聞くと、広告媒体としてのラジオが持つ強みを感じる一方で、ラジオ業界が直面する課題も浮き彫りになってくる。

ビデオリサーチの聴取率調査で首都圏トップの座を守り続けるTBSラジオ

新チャンネル獲得で聴取環境が改善

FM補完放送とは、「都市型難聴対策」や「災害対策」などを目的とし、総務省が新たに割り当てた周波数(90MHz~95MHz)を用いて、AM放送局が実施する同時放送のこと。従来のFM放送は76MHz~90MHzの周波数を使用しているが、総務省はテレビのアナログ放送終了により空いた90MHz以上の周波数をAM局などに割り当てた。FM補完放送を始めたAM放送局は、コマーシャルを含めてまったく同じ内容の番組をAMとFMの双方で同時放送している。

AM放送は電波の特性上、放送範囲は広いものの、建物による電波の遮蔽や電化製品のノイズといった影響を受けやすく、「都市型難聴」の発生が問題視されていた。FM補完放送の開始により、AM局は都市部にクリアな音質で放送を届ける新たなチャンネルを獲得したことになる。また、AM送信所(アンテナ)は海や河川などの近くに立地している場合が多いため、洪水や津波といった災害の影響を受けやすい点も課題となっていたが、FMとの同時放送開始により、災害時にAM放送が聴取不能に陥るリスクは大幅に低下した。

東京スカイツリーから放送開始!

在京AM3局は資金を出し合って東京スカイツリーに送信アンテナを設置し、2015年12月7日にFM波を用いた同時放送を開始した。FM放送を続けるにはランニングコストも発生するため、在京3局はワイドFMを効果的に活用して新たなリスナーを呼び込み、広告収入の増加に結びつけていく必要がある。

■在京AM3局の周波数

AM放送 FM放送
TBSラジオ 954kHz 90.5MHz
ニッポン放送 1242kHz 93.0MHz
文化放送 1134kHz 91.6MHz

ワイドFM開局を記念し、在京3局は合同で特別番組を放送した。文化放送 放送事業部長の田中博之氏によると、特番を含めた開局キャンペーンに対するクライアントの反応は上々で、実際に10社からの広告出稿があったという。在京3局の話を総合すると、ワイドFMの開始前後でラジオ業界への広告出稿が劇的に変化したわけではなさそうだが、聴取環境が改善したことにより、「(広告営業の)商談はやりやすくなった」(田中氏)というのが3局に共通する実感のようだ。

ラジオ広告費反転の契機となるか

「放送を聴きやすくなったとの声がリスナーから届き始めている。この反応をクライアントにも伝えていきたい」。TBSラジオ&コミュニケーションズ編成部の三宅正浩氏は、ワイドFMの開始により、ラジオ聴取環境が改善した事実を広告主に訴えていくことが先決とみる。ラジオの人気番組には、ファンとしての熱量が高い「ヘビーリスナー」が定着する傾向があり、番組関連イベントの集客力は「クライアントも驚く」(三宅氏)ほど。広告の出稿を増やすには、「人を動かすメディア」であるラジオの強みをクライアントに再認識させることも重要になってくる。

電通が毎年実施している調査「日本の広告費」によれば、ラジオ広告費は1991年の年間2,406億円をピークに減少を続けており、ここ数年は同1,200億円台で推移している。ワイドFMの開始により、ラジオ広告費が直ちに反転する可能性については各局共に否定的な見方を示しているものの、前出の三宅氏は「クライアントにワイドFMに関する理解を深めてもらうことで、ラジオのメディア価値を向上させ、下げ止まらない広告収入の反転を図るのが第一義」と力を込めた。

家電量販店にはワイドFM対応受信機が並ぶ

ワイドFM対応端末の普及状況も課題

新規リスナーの開拓を図る在京AM3局だが、ワイドFM開始のタイミングを十分に活用するためには、ワイドFMを受信できるラジオ受信機の速やかな普及を促す必要がある。ニッポン放送 営業促進部長の中込勝己氏は、ワイドFMはラジオというメディアに対するクライアントの「気付きのきっかけ」になると歓迎しつつも、この動きをリスナーの増加につなげるためには、ワイドFMに対応したラジオ受信機の普及が不可欠だと指摘した。

ワイドFMは従来よりも高い周波数の電波を使用しているため、これまでに普及している古いラジオやカーラジオの中には、新たに始まった放送を受信できない機種が多い。このような機種の買い替えを促すため、FMを含む首都圏のラジオ局は、ワイドFMの開始に合わせて「ラジオは今、買え」と銘打った合同キャンペーンを展開。リスナーを奪い合うよりも、ラジオ業界全体の底上げが先決という共通認識のもと、普段はライバル関係にある各局が連携してラジオ受信機の普及を後押しした格好だ。

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の「2015年民生用電子機器国内出荷統計」を見ると、ワイドFM開始を控えた2015年中にラジオ受信機の国内出荷実績が急激に伸びた形跡はない。2015年1月~11月の出荷数量は計127.1万台だが、前年の同じ期間の累計と比べると、出荷数量は数%減少しているほどだ。「radiko.jp(ラジコ)」によるインターネットを通じたラジオ放送は浸透しつつあるものの、ワイドFM開始の機会を捉え、ラジオ業界は受信機の更なる普及に取り組む必要があるだろう。

ラジオは若年層リスナーを取り戻せるか

ラジオ受信機の普及状況に課題は残るが、従来のAM放送とラジコに加え、FM放送という新たなチャンネルを手に入れたAM放送局にとって、新規リスナー掘り起こしに向けた体制が充実したことは確実だ。これから重要になってくるのは、複数のチャンネルで放送している番組が潜在リスナーの耳に届くかどうか。リスナー増加に向けては、ラジオ離れが深刻化している若者の取り込みが不可欠となる。

「ラジオ原体験の喪失―」。ラジオを聴かないどころか、その存在すら知らない若者が増えている背景をTBSラジオの三宅氏はこう読み解く。中高生にもなれば、CDコンポ(あるいはラジカセ)を自室に導入するのが当たり前だったのは過去の話。スマートフォンやPCを通じた楽曲の購入・鑑賞が定着した現在、若者にとって(音楽の再生機器に付随したものを含む)ラジオ受信機が身近なものではなくなり、「ラジオでも聴いてみるか」という、リスナーになる第一歩を踏み出す機会自体が減りつつあるというのが三宅氏の見立てだ。

ラジオの聴取率をみてみると、若者とラジオの距離感がよく分かる。ビデオリサーチが発表した直近の調査結果によると、首都圏に住む12歳から69歳までの男女のうち、2015年10月19日からの一週間で、ラジオを実際に聴いた人の割合は平均すると5.8%。聴取率調査はアンケート形式であるため、ラジオを実際に聴いている人の正確な人数は不明だが、ラジオ業界では、首都圏の聴取率1%は約36万人に相当するとの見方がある。

年代別にみると、ラジオを聴く人の割合が高い50歳~69歳の聴取率は9.5%だったのに対し、若年層の聴取率は12歳~19歳が1.3%、20歳~34歳が2.6%と低水準。全世代平均の5.8%という数字にしてみても、十数年前は9%近くあったというから、ラジオを聴いている人数が一昔前に比べ減っているのは確実だ。ビデオリサーチがワイドFM開始後に実施した聴取率調査の結果は現時点で出ていない。ワイドFMにより聴取率が目に見えて向上するとしても、効果が現れるのは少し先になると関係者は予想する。

SNSの活用で若年層リスナーの取り込みを図るニッポン放送

SNSとラジオの親和性に期待

リスナー参加型の番組が多いラジオは、SNS的な性格を持ったメディアと捉えることもできる。かつての深夜放送ブームを牽引したニッポン放送が、現代の若年層リスナー獲得に向けて注目するのがSNSの活用だ。仕事や勉強をしながら聴けるのがラジオの良さだが、スマートフォンやPCの操作に忙しい現代の若者にもラジオを受け入れる素地はある。番組の公式ツイッターに人気パーソナリティの画像をアップしたり、SNS上で有名テーマパークとのコラボレーション企画を実施したりするなど、ニッポン放送はSNSを通じた新規リスナーの獲得に知恵を絞っている。

SNS関連の最近の動きとして、ニッポン放送はLINEが2015年12月に始めた動画配信サービス「LINE LIVE(以下、LIVE)」に立ち上げ当初から参画を表明した。2015年末には生放送の音楽ライブ番組をラジオとLIVEの双方で放送。LIVEはLINEユーザーとラジオを結び付けるツールともなるが、LINEはLIVEの収益化に広告を取り入れ、広告収入を配信者とシェアする方針を示しているため、LIVEが軌道に乗れば、ニッポン放送の新たな収益源に成長する可能性も出てくる。

FM波でのナイター中継が秘める可能性

在京AM3局にとって、ワイドFMで開拓すべきリスナーは若年層に限らない。ニッポン放送 広報室長の伊沢尚記氏によると、新規リスナー獲得に向けた直近のヤマ場は、プロ野球のナイター中継が始まる春の番組改編だ。在京3局にとって2016年は、シーズンを通じてFMでナイター中継を放送する最初の年となる。

在京AM3局は3月下旬からナイター中継を始めるが、音質の良いFM放送とスポーツ中継の親和性は高く、アピール次第では野球ファンをラジオに誘導する好機となる。ラジオでナイター中継を聴いていた層が、ワイドFMの開始を機に対応受信機を新たに購入する可能性もある。伊沢氏によると、在京3局に先駆けてFM補完放送を開始していたAM放送局からは、FMでのナイター中継について上々の手応えが伝わってきているという。

地域格差解消でコンテンツ勝負の首都圏AM放送

ワイドFMは首都圏における在京AM3局の放送環境を均一化する動きとしても注目だ。埼玉県にAM送信所を構えるTBSラジオと文化放送にとって、北関東は電波が届きやすい得意地域だが、神奈川県の一部など、東京都心の高層ビル群を挟んだ首都圏南部は歴史的に難聴地域となっていた。一方、千葉県の木更津市に送信所を持つニッポン放送にとって、東京湾を挟んで対岸の首都圏南部は電波を届けやすい地域だが、北関東や東京都の西部では場所によって電波の入りやすさに差があった。

FMでAMラジオ局の番組を聴く場合、首都圏では在京AM3局間に存在した聴取環境の地域格差が解消する。首都圏のAMリスナーにとってみれば、純粋にコンテンツの面白さによって放送局を選べる時代が到来したことになる。放送局もエリア戦略を進めている模様で、例えば文化放送では、ラジオ番組のリポーターやワイドFMの広告塔である「キューイチロー」を神奈川県に派遣するなど、関東南部での知名度向上に力を入れている。

声優を起用したコンテンツに特色のある文化放送。キューイチロー(右)は都内のイベントなどで稼働中

ラジオに馴染みのない層に訴求できるか

コンテンツの特色を各社各様の形で打ち出している在京AM3局だが、特筆すべきは文化放送の品揃えだ。文化放送は歴史的に声優をメインに据えた番組を豊富に取り揃えているが、声優のタレント化が進んだ昨今、これらの番組にはリスナーとスポンサーの双方から注目が集まっている。ゲームやアニメのファンが集う声優番組は、パーソナリティと商品のコラボレーションなど、さまざまな広告の仕掛けが考えられるコンテンツ。文化放送の田中氏は、アニメコンテンツとスポンサーの結びつきに今後も期待できるとの見方を示した

「最大の売り物は魅力的なコンテンツ」というのは在京3局共通の思いだが、ラジオ受信機の普及状況や、若者を中心とするラジオ自体の認知度低下により、番組が広く世間に伝わらない現状は続く。この現状を変えなければ、いかに充実したコンテンツが揃っていてもラジオの存在感は小さくなるばかりだ。ワイドFMが始まったという事実についても、ラジオを習慣的に聴いていない層に知れわたっているとはいいがたい。さまざまなメディアの登場により、個人の可処分時間の奪い合いは苛烈を極めるが、選択肢の一つとして、ラジオを世間に再認識させることこそが、ラジオ業界が取り組むべき最優先課題といえるだろう。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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