大変革のトヨタを象徴するスポーツカー? 新型「スープラ」に試乗

大変革のトヨタを象徴するスポーツカー? 新型「スープラ」に試乗

2019.01.15

ボリューム感は過去最高? ヴェールを脱いだ新型「スープラ」

エンジンは伝統の6気筒に加え4気筒を用意

滑らかな吹け上がりと重厚なサウンドを堪能

トヨタ自動車は16年ぶりの復活となるスポーツカー「スープラ」を北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)で発表した。BMWと共同開発した新型は、歴代でもっとも短くて幅広いボディを持つ。エンジンは伝統の直列6気筒に加え、新たに4気筒が登場するとのことだ。プロトタイプに乗った印象を含めて概要をお伝えしよう。

強烈に張り出したリアフェンダー

プロトタイプの試乗会が行われたサーキット「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」のピットに置かれていた新型スープラを見て最初に感じたのは、大柄ではないのに迫力があるということだ。

迫力を感じた新型「スープラ」のデザイン

日本でもスープラを名乗り始めた3代目以降、このクルマの全長が次第に短くなっていったことは、先日掲載となった記事でも触れておいた。新型も、その路線を受け継いでいる。なにしろ、ホイールベースは2,470mmと、車格では下の「86」より100mmも短い。前後のオーバーハングも抑えてあって、4,380mmという全長は歴代スープラで最短だ。一方、1,865mmに達する全幅は歴代でもっともワイドである。

トレッド(左右タイヤ間の距離)はフロント/リアともに1,600mm前後。ホイールベースとの比率は1.6以下で、ライバル車のひとつとなる日産自動車「フェアレディZ」や、リアエンジンであるためホイールベースを短くできるポルシェ「911」などを下回っている。

短いホイールベースと幅広いトレッドが新型「スープラ」の特徴だ

一般的に、ホイールベースが短いほど身のこなしは俊敏になり、トレッドが広いほどコーナーでの踏ん張りが増す。新型スープラが「曲がりやすさ」にこだわったスポーツカーであることは、そのサイズからも分かる。

ワイドなボディを強調するかのように、スタイリングではとにかくリアフェンダーの盛り上がりと張り出しが目立つ。試乗会では2002年まで販売していた旧型と見比べることができたのだが、当時はボリューム感があふれていると感じた旧型のフェンダーラインも、新型と並ぶと平板に思えてしまったほどだ。

盛り上がったリアフェンダーが強烈な印象を与える新型「スープラ」
こちらが先代の4代目「スープラ」

新型スープラがBMWとの共同開発であることは、先述の記事にも書いた通り。具体的には、BMWの新型「Z4」とプラットフォームやパワートレインなどの基本を共用している。基本と書いたのは、細部のチューニングを各社が独自に行っているためだが、2,470mmのホイールベースに加え、エンジンやサスペンションの形式などはほぼ共通だ。

しかし、デザインはまるで違う。日本では2019年春に発表予定の新型Z4はオープンカーであり、ドアの前の「エアブリーザー」と呼ばれるスリットからリアに向けてせり上がるラインで後輪を強調している。一方、伝統のクーペスタイルを引き継ぐ新型スープラは、はるかに大胆で存在感抜群の後輪まわりを特徴とする。

BMWの新型「Z4」。新型「スープラ」と基本を共用するが、見比べるとデザインはまるで違う

もちろん、フロント/リアまわりも違う。新型スープラは複数のレンズを内蔵した大きめのヘッドランプと長めのノーズ、リアゲート一体のスポイラー、横長のリアコンビランプなど、旧型に近いディテールを各所に配してあり、伝統を継承したいというトヨタの気持ちが伝わってくる。

新型「スープラ」はオーストリアで生産

歴代で初めて2人乗りになった新型スープラのインテリアは、シートが低めであるのに対し、プロペラシャフト(エンジンの力を後輪に伝える棒状の部品)が通るセンターコンソールは高く、スポーツカーらしいタイトな空間となっている。展示車両はステアリングやセンターコンソールの一部が赤いレザーで覆われており、鮮烈な雰囲気を醸し出していた。

赤のレザーが鮮烈な新型「スープラ」

それとともに目につくのは、ATのセレクターレバーとエアコンやオーディオなどのスイッチがBMWと共通であることだ。さらに、右ハンドルでありながら、ウインカーのレバーは欧州車のように左側にある。

車内ではBMWとの共通点も目につく

実は、新型スープラは日本ではなくオーストリアで生産される。BMWの新型Z4は、カナダに本拠を置くメガサプライヤー「マグナ・グループ」に属するマグナ・シュタイアがオーストリアの工場で生産するとのこと。トヨタはオーストリアに工場を持っていないから、生産施設も同一になるのだろう。欧米が主要マーケットであるなら、輸送などを考えても妥当な判断だ。

新型スープラを作るにあたり、トヨタは直列6気筒エンジンを積むFR(フロントエンジン・リアドライブ)という伝統を受け継ぐべく、BMWとの共同開発を選んだ。しかし、発表された資料によると、3L直列6気筒ターボエンジンのほかに、チューニングの異なる2種類の2L直列4気筒ターボも用意するとのことだ。

日本仕様のグレードは「SZ」「SZ-R」「RZ」の3タイプ。SZとSZ-Rが4気筒になる。SZは最高出力145kW、最大トルク320Nm、SZ-Rは190kW/400Nmで、6気筒のRZが250kW/500Nmだ。トランスミッションは全車8速ATで、旧型には存在したMT(マニュアル車)は現時点で用意していない。ちなみに、Z4にも2L直列4気筒ターボエンジン搭載車はある。

新型「スープラ」では4気筒エンジンも選べる。MT車の発売は現時点で予定していないようだ

直列6気筒ならではの加速を試乗で体感

ここからは、実際に乗ってみた印象を報告したい。

新型「スープラ」の走りやいかに?(動画提供:トヨタ自動車)

乗り込んでみると、2人乗りなのでシート背後の空間はわずかであるが、身長170cmの筆者がドライビングポジションをとっても、薄いバッグを置けるぐらいのスペースはあった。テールゲートを介してアクセスする荷室との間には、ボディ剛性を確保するための隔壁が存在していた。急ブレーキのときに荷物がキャビンに飛び込んでくるのを防ぐ役目も果たしてくれそうだ。

2人乗りとなった新型「スープラ」。車内はスポーツカーらしくタイトだ

サーキットで乗ったプロトタイプは6気筒で、当時は発表前ということもあり、「A90」という形式名が入ったカモフラージュを施してあった。エンジンスタートボタンを押すと、直後にウーッという低い唸りのアイドリングが始まる。予想以上に音を聞かせる設計になっていた。

ピットロードを出てコースへ。最初のコーナーを回ってアクセルペダルを踏み込む。長くてバランスの取れたクランクシャフトが生み出す、滑らかな吹け上がりと重厚なサウンドとともに、力強く息の長い加速が堪能できる。それでいて、1,600~4,500rpm(エンジンの回転数)という幅広い領域で最大トルクを発生するだけあって、どこから踏んでもドライバーが望むだけの力を味わえる。

試乗では力強く息の長い加速が堪能できた

一方で、コーナーへの進入では、長い直列6気筒エンジンを積んでいるとは思えないほど軽快に向きを変える。前後重量配分を50:50としてある上に、重心高は水平対向エンジンを積むトヨタ「86」より低くなっているなど、こだわりの設計がスープラらしからぬ動きとして伝わってきた。シートのホールド感がタイトであったならば、より一体感が得られたかもしれない。

コーナーの立ち上がりでは、雨の中での試乗ということもあって、アクセルペダルを踏みすぎると後輪がスッスッと唐突に滑りがちだった。トヨタのスポーツカーとしては辛口のチューニングだと思ったが、晴れた日に乗ったジャーナリストは安心して走ることができたと話しているし、市販型では改善される可能性もある。

試乗したプロトタイプ。コーナリングの軽快さには驚いたが、雨のサーキットでは後輪が唐突に滑ることも

ちなみに新型スープラは、TOYOTA GAZOO Racingが立ち上げたスポーツカーシリーズ「GR」で初となるグローバル展開モデルだ。

TOYOTA GAZOO Racingが昨年、ル・マン24時間レースで優勝し、世界ラリー選手権(WRC)のタイトルを獲得したことは記憶に新しい。以前の記事にも書いたように、スープラはル・マンとWRCの両方に出場した経験を持つスポーツカーだ。世界で活躍した経歴を持つからこそ、GR初のグローバルモデルという重責を担うことになったのだろう。

昨年のソフトバンクとの提携が象徴しているように、トヨタは今、100年に一度の大変革の時代に直面して、自らの殻を破りつつあると感じている。新型スープラからも、その意気を感じた。開発や生産のプロセスから実際の走りまで、これまでのトヨタのスポーツカーとはひと味違うクルマだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu