『モンスト』初のプロツアーを終えて、王者が感じた“一強の終焉”

『モンスト』初のプロツアーを終えて、王者が感じた“一強の終焉”

2019.01.09

3カ月にわたって開催されたモンストのプロツアー

2018年12月29日には上位4チームによるファイナルが行われた

大会終了後のインタビュー内容も紹介する

2018年12月29日、東京・秋葉原にあるアキバ・スクエアにて、「モンスターストライク プロフェッショナルズ 2018 トーナメントツアー(モンストプロツアー)」のファイナルが開催された。ツアーは、10月13日の東京を皮切りに、仙台、大阪、福岡、名古屋で行われ、『モンスターストライク(モンスト)』のプロ8チームのなかから、予選のタイムアタックポイントとトーナメントの順位ポイントを合わせたポイントの合計数が多い上位4チームがファイナルに進出する。

大会ではスマホアプリ『モンスターストライク スタジアム』を使用。4人1チーム制で、プレイヤーは順番に自分のモンスターをボスモンスターにぶつけて倒していき、相手とステージクリアの時間を競う。

プロツアー1戦目、東京会場の様子

王者・壁ドンズとツアー後半に追い上げたGVが激突

今回、ファイナルに進出したのは、東京会場、仙台会場で連勝した今池壁ドンズα、名古屋会場で優勝したGV、大阪会場で優勝したアラブルズ、福岡会場で優勝したはなっぷの4チーム。ツアー序盤は、7月に行われた「XFLAG PARK」内のモンストグランプリで優勝した今池壁ドンズαが、その実力を遺憾なく発揮し、圧倒的な強さで連勝を決めた。

だが、ツアーが進むにつれ、ほかのチームが対策と練習を重ね、ポイントの差をジワジワと縮めてくる。特に2位通過となったGVは、最終的に今池壁ドンズαと10pt差の102ptと、高ポイントを獲得(大会ごとに、タイムアタックでは1~8pt、トーナメントの順位では4~30ptが付与される)。会場ごとの順位も2位2回、3位1回と抜群の安定感を見せた。

左からアラブルズ、今池壁ドンズα、GV、はなっぷ
会場は秋葉原UDXにあるアキバ・スクエア。ツアーファイナルはすべて有料シートだったが、オープン前から長蛇の列ができるほどの人気

ファイナルは変則トーナメント方式。まずは1位通過の今池壁ドンズαと、2位通過のGVが対戦し、勝った方が決勝に進出する。その敗者は、3位通過のアラブルズと4位通過のはなっぷの勝者と対戦し、そこで勝利したチームが決勝に進出するというものだ。決勝以外は3戦2先勝ち抜けのBO3方式で、決勝のみ5戦3先勝ち抜けのBO5方式で行われた。

さらに通過順位上位チームは、ステージの選択権(ステージごとにギミックや登場するボスキャラが異なる)か、ピックの(先攻・後攻)選択権(試合では同じキャラクターを使用することができないので順番に取り合う。1、4、5、7枚目を先攻が、2、3、6、8枚目を後攻が選択する)のどちらかが与えられる。変則トーナメント方式と書いてはいるが、これまでのツアーの結果を尊重したうえで、下位チームにも十分なチャンスがあるバランスのとれたルール設定と言えるだろう。

2戦目までは圧倒的なポイント差を付けていた今池壁ドンズαだったが、5戦終了してみれば、2位GVとの差はわずか10pt。力が拮抗しているのがわかる
変則的ながら、ツアーの成績上位チームにアドバンテージが与えられている絶妙なバランスのトーナメント

初戦となった今池壁ドンズαとGVの対戦では、上位通過の今池壁ドンズαがステージ選択権を選び、得意の「冥黒の女王」ステージを指定するも敗北。しかしながら自力を見せつけ、2戦目、3戦目を連取し、決勝へ駒を進めた。

2試合目は3位アラブルズと、4位はなっぷの一戦。この2チームは、モンストグランプリ、モンストプロツアー通じて1度も対戦をしたことのない組み合わせだ。こちらも通過順位通りの結果となり、アラブルズがはなっぷを下した。

今池壁ドンズα対GVの一戦
アラブルズ対はなっぷの一戦

3試合目は、初戦を勝ち上がったアラブルズと敗者復活を狙うGVとの対戦だ。これまでの戦績ではGVがアラブルズに2戦2勝しており、順位的にもGVが優位。実際の対戦も波乱はなく、GVが2連勝し、相性の良さをみせた。

GV対アラブルズの一戦

その結果、決勝は初戦と同じく、今池壁ドンズα対GVというカードとなった。

決勝戦は、BO5になるだけでなく、ステージ選択がなくなり、「翠緑の生命体」「水駆ける天叢雲の皇子」「冥黒の女王」「天地開闢の始神」「妖光の狐少女」というステージの順番で行われる。通過順位上位の今池壁ドンズαには、ピック選択権が与えられた。

1本目は今池壁ドンズα、2本目はGVと初戦と同様に両チーム一歩も引かぬ熱戦となったが、3本目の「冥黒の女王」ステージでリベンジとばかりに今池壁ドンズαが奪取し、リーチをかけると、その勢いのまま4本目も取り、モンストプロツアーの初優勝を決めた。

モンストグランプリに続き、モンストプロツアーの優勝も決めた今池壁ドンズα。左からべーこん選手、pkrn選手、そふぁ。選手、なんとかキララEL選手
ファイナルの内容はYouTubeからもチェックできる

他チームの成長スピードに王者もヒヤリ

表彰式では優勝トロフィーと盾、そして優勝賞金1000万円が授与された。直後には優勝者チームインタビューも行われたので、その様子も合わせてお伝えする。

――優勝おめでとうございます! 圧勝にも見えましたが苦戦したところはありましたか。

なんとかキララEL選手(以下、キララ):今日は本当に熱量の多い大会で、僕らもほかのチームも、いつもやらないようなミスが多かったですね。お互いいつも通りできていなかったので、相手のスキをついてパッと倒してしまおうと思い、それが結果的にうまくいきました。でも、やはり自分たちがやりたいことができていないというのは変わらないので、そこが一番苦戦したところですね。

――モンストプロツアーの初戦に比べて、チームもお客さんもかなり雰囲気が変わってきた感じがしました。自分たちのチームやほかのチームの変化は感じられましたか。

キララ:初戦の東京大会では僕らが勝利したのですが、お客さんの盛り上げ方に関して「プロと呼べるのは自分たちだけじゃん」と内心思ってました。あ、ほかのチームには内緒ですよ(笑)。で、2戦目の仙台大会が終わってから、次の大阪大会まで1カ月の期間が空いたんですね。その間に海外の大会とかもあったのですが、その1カ月間で、ほかのチームもプロ意識が目覚めてきたような感じがして。ピックの選び方だったり、戦い方だったり、お客さんとの接し方だったり。それを見たとき、「おお、なんかプロっぽい」って思いました。自分たちのチームもその間にうまくなっている自覚はあったんですけど、ほかのチームの伸び方がすごくて。正直、決勝直前も不安はありました。

pkrn選手(以下、pkrn):僕も同じ印象ですね。回を追うごとにプロとしての気持ちの持っていき方が変わってきたなと感じました。

開場から試合開始までの間は選手が観客席に訪れ、ファンと一緒に写真を撮影したり、サインをしたりと、ファンサービスにも努めている

そふぁ。選手(以下、そふぁ):モンストグランプリとか、いままでの大会って一発勝負だったじゃないですか。プロツアーでは同じステージを何度も何度もやっていくので、各チームのカラーが出てくるようになりましたね。このチームはこういう勝ち方をする、このチームはこういうピックをするといったように。そのあたりは「刺さると負ける」と脅威に感じました。福岡では実際負けましたし。

べーこん選手(以下、べーこん):そうですね。作戦を決めるときに相手の想定をするんですけど、それを超えてきている感じですね。今回は結果的に僕らが勝ちましたが、この大会は王者としてではなく、挑戦者のつもりでやってきました。

――今日の試合で一番印象に残ったシーンはなんでしょうか。

べーこん:3点バンカーと、ユミルの上に入ったやつとか、pkrnが本当によく決めてくれました。

そふぁ:最後の試合のSS(ストライクショット)とか、翠緑のフィニッシュのショットとか、あれって練習していたショットではなかったんですよね。あの場で判断して、しかも勝敗が決まるところで決めたのはすごいなって思いました。

キララ:本当に今回はやりたいことができてなかったんですけど、イレギュラーからのリカバリーができていたなと思います。

――プロツアーが行われていた3カ月は、どんな時間だったのでしょうか。

べーこん:モチベーションを維持するのが本当に大変でした。

キララ:例えば自分たちが「これが良い!」と戦略を決めたとして。でも、それに対して、「こっちの方が良いんじゃない?」とか「こっちの方が早いよ」ってなってくるわけですよ。で、結局パーティが1転、2転、3転、4転して、酷いときは11転くらいするんです。やっぱり「これじゃない」ってなって、気がついたら「これって2カ月前に通った道じゃん」ってなったりして。まあ、そのこと自体は大変なんですけど、正直楽しくなってきていますね(笑)。

そふぁ:負けたときの反省が辛かったですね。ミスをしたのか、作戦が悪かったのか、それを考えるのが辛かった。

――今回、1位の今池壁ドンズαと2位のGVはどちらも中部地区の代表チームですが、中部地区が『モンスト』に強いというのは何か理由があると思いますか。

キララ:味噌じゃないですかね。赤味噌ですね。
(一同笑い)

――では、来年あたり今池壁ドンズαが赤味噌のCMキャラクターになっているかもしれませんね。

キララ:なるかもしれませんね。味噌メーカーがスポンサーに付いてくれるかもしれません。でも、僕らを見て『モンスト』を始めてくれた人もいるんですよ。アラブルズのKEVIN選手なんかは、僕らをみて大会出るぞってなったみたいです。

――今年はグランプリとプロツアーを優勝して、ほかのチームはより一層「打倒今池壁ドンズα」に燃えるとみられますが、いかがでしょうか。

キララ:2年前からそうなので。でも、べーこんが言った通り、自分たちは挑戦者だという気持ちを持って、来年のプロツアーのファイナルに出場したいです。

ツアーファイナルに出場した4チームによる記念撮影

***

2018年の『モンスト』のeスポーツシーンは今池壁ドンズαで始まり、今池壁ドンズαで終わった1年となった。しかし、ほかの7チームのプロチームも着実に力をつけてきている。

また、元M4(モンストうまい4人組)で解説を担当したS嶋氏が、最後の総括で、明言は避けつつも、新戦力の参入もほのめかしていたことからも、2019年はさらなる混戦、熱戦に期待できそうだ。1月26・27日の「闘会議2019」では、ジュニア大会の開催も予定されているので、そちらも目が離せない。

元M4(モンストうまい4人組)で解説を担当したS嶋氏が、来年に向けてのさらなる展開をほのめかした
訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出典:M&A online データベース

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