価格とサイズが日本にピッタリ? フランスの高級車「DS」が東京に旗艦店

価格とサイズが日本にピッタリ? フランスの高級車「DS」が東京に旗艦店

2018.12.28

フランスの高級車ブランド「DS」が東京・南青山に旗艦店

「DS」とは何者で、どこへ行くのか…デザイン部長を直撃!

ドイツ車が優勢の日本にフレッシュな選択肢が登場

美術館やアパレルショップなどが立ち並ぶ東京・南青山。ジャズ・クラブ「ブルーノート」の隣に、ブティックのような外観の自動車ショールームがオープンした。フランスの高級車ブランド「DS」のフラッグシップショップ「DSストア東京」だ。店舗前には駐車場もなく、ちょっと型破りな印象のショールームではあるが、その佇まいも、独自性の高いフランス車を扱っていると思えば違和感がなくなるのは不思議だ。

2018年11月、フランスの高級車ブランド「DS」のフラッグシップショップ「DSストア東京」が東京の南青山にオープンした

DSってどんなクルマ?

「そもそもDSって、どんなクルマ?」と思われた方も多いかもしれない。DSはシトロエンから派生した高級車ブランドで、「シトロエンDS」として2009年に誕生した。日本への導入開始は2013年。2014年には「DSオートモビルズ」としてシトロエンから独立し、呼び方もシンプルに「DS」となった。

これまで、DSはシトロエン時代に生み出したモデルのみを取り扱っていたのだが、2018年7月には第2世代モデルの第1弾となるフラッグシップSUV「DS7クロスバック」を日本で発売した。DSにとっては、独立後に初めて独自設計したクルマだ。

DS第2世代モデルの第1弾となるフラッグシップSUV「DS7クロスバック」。グレードは「So Chic」「Grand Chic PureTech」「Grand Chic BlueHDi」の3種類で税込み価格は469万円~562万円からだ。サイズは全長4,590mm、全幅1,895mm、全高1,635mm

日本でDSを取り扱っているのは、シトロエン販売店、シトロエン販売店に併設される「DSサロン」、そして、独立店舗である「DSストア」だ。今回は、都心で初のDSストアがオープンした。開店記念パーティーには、フランス本国からDSオートモビルズのデザイン部長を務めるティエリー・メトローズ氏が出席。その機会を捉え、DSの魅力や将来のビジョンなどについて話を聞いてきた。

DSのデザイン部長を務めるティエリー・メトローズ氏

先進技術と職人技が融合したクルマ

DSの日本におけるラインアップは、第1世代のモデルから受け継がれる3ドアコンパクトハッチバック「DS3」とDS7クロスバックの2モデルのみ。極端な選択に見えるが、これもDSがラインアップの再構築を図っているためだ。2019年7月には、「パリサロン」(2018年8月)で世界初公開した小型SUV「DS3クロスバック」を日本に導入する予定。DS自体としては、毎年1台ずつ新型車を投入してラインアップを拡大し、最終的にはDS7クロスバックを含む全6モデルの体制を整えるという。2025年には全てのクルマを電動化するとのことだが、これにはハイブリッドも含まれる。

メトローズ氏にDSとは何かを尋ねると、「アヴァンギャルディズム」「リファイン(洗練)」「テクノロジー」の3つの価値を凝縮したものとの答えが返ってきた。これを成しえていないモデルは、DSにあらず……というわけだ。その実現のために大切にしているのが、先進技術の積極的な採用とフランスの職人技「サヴォアフェール(Savoir-faire)」だ。

「DS7クロスバック」も3つの価値を兼ね備えるクルマだ

最新型DS7クロスバックも先進技術を積極的に採用する。例えば、夜間に赤外線カメラで歩行者や動物を検出し、表示警告を行う「DSナイトビジョン」、カメラで路面をスキャンして、路面の凹凸に合わせてダンパーの減衰力を自動調整し、フラットな乗り心地を実現する「DSアクティブスキャンサスペンション」、渋滞時追従支援機能付きアダクティブクルーズコントロールと車線内維持支援機能を組み合わせた自動運転レベル2相当の運転支援機能「DSコネクテッドパイロット」などだ。

インテリアには職人技が光る。ウォッチストライプのレザーシートは1枚の革から作ったもの。革張りのドアパネルやダッシュボードなどは、実際にハンドメイドで仕上げている。ボタンなどに使う「ギヨシェ彫り」は、フランスの高級時計メーカー「ブレゲ」とのパートナーシップで実現。同じく同国の高級時計メーカーである「B.R.M」(ベルナール・リシャール・マニュファクチュール)のアナログ時計を装着するなど、随所でフランス生まれを主張しているところも特徴的だ。

職人技が光る「DS7クロスバック」のインテリア
「B.R.M」のアナログ時計がこのクルマの出自を物語る

DSで最大の特徴となっているのは、何といってもアヴァンギャルドなデザインだろう。DS7クロスバックとDS3クロスバックの内外装を見れば、かなり前衛的だと誰もが感じるはずだ。

一方で、前衛的であるがゆえに、陳腐化しないだけの鮮度を保てるのかどうかも気になるところ。その点についてメトローズ氏は、DSのデザインは単に奇抜さや目新しさを追ったものではないと語る。例えばボディのフォルムは、とてもシンプルな構成で、飽きのこないデザインにしてある。メトローズ氏いわく、「余計な凹凸はなく、シックなデザイン」に仕上げたとのことだ。

DS7クロスバックのアヴァンギャルディズムを強く印象づけるのは、ライトの意匠だ。回転式のフロントLEDヘッドライトやレーザーカット加工のテールランプなどが、デザイン上のアクセントとなっている。これがフランス流の「ウィンク」、つまり遊び心だとメトローズ氏は説明する。こういったデザイン上の強弱をバランス良く組み合わせることで、個性的でありながら古びないデザインを実現しているということなのだろう。

DSが"アクティブLEDビジョン"と呼ぶ先鋭的なヘッドライトユニットは、左右に3個ずつのLEDモジュールを内臓。リモコンキーで解錠した瞬間、180度回転しながら紫の光を放ってオーナーを迎える
レーザーカット加工のテールランプ

気になる今後のラインアップは?

SUV展開を進めるDSだが、今後のモデルラインアップなど、将来のビジョンにも興味がある。高級車ブランドの王道は象徴的なスポーツカーやクーペなどだが、メトローズ氏が必要と考えているのは意外にも「セダン」だった。具体的には、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」なども属する、「Dセグメント」と呼ばれる大きすぎないサイズのものだという。

ただしメトローズ氏は、これを願望というよりも必然だとする。SUVブームに押されてはいるものの、常に一定のニーズが存在することが、セダンを作るべきと考える理由だ。さらに高級車ともなれば、快適性が重視され、運転手付きで後席の利用がメインとなるケースも多い。そのため、後席の乗り心地に優れるセダンは、DSとしてマストな商品だというのだ。

今後のDSに必要な車種は意外にも「セダン」だと語ったメトローズ氏

また同氏は、セダンのニーズは今後、高まっていくだろうとも指摘する。その理由としては、ますます強まる環境規制と将来的に登場する完全自動運転車の存在を挙げた。

車体が高く、重量も重くなりがちなSUVは、空気抵抗が大きく、エネルギー効率では不利となる。そのため、いかに空気抵抗を減らし、効率よく快適なクルマ(自動運転車を含む)を作るかという視点でいけば、セダンの存在が重要になってくる。顧客のニーズに応じるためだけでなく、自動車メーカーが直面する環境問題に対しても、セダンが解決策のひとつとなりうるのだ。現在は確かにSUVブームだが、メトローズ氏は「流行には変化がある」と気にかけない。

ドイツ車が強い日本、DSの優位性とは

DSと日本のマッチングについてメトローズ氏は、日本には洗練されたものと先進技術を好む人が多いとの考えを示した上で、それらをクルマで融合させているDSと日本は相性がよく、必ず支持されるだろうと自信をのぞかせた。日本では今後、認知と販売ネットワークの強化に力を入れていくとのことだ。

新しいブランドであるDSは現在、世界中で販売ネットワークの強化を進めている。日本ではDSストアとDSサロンを含めて8店舗を展開しているが、2019年中には新たに4店舗をオープンする予定だ。さらに、近いタイミングで5~6店舗を追加することを目標に動いているという。

2019年に日本で4店舗を追加するというDS

出店ペースはかなりスローに感じるかもしれないが、日本ではフランス車がニッチな存在であることを考えると、このくらいが着実な動きと捉えることもできる。クルマとしてみると、DSのラインアップは日本でも扱いやすいサイズであり、価格も高級車としては現実的な設定となっている。

あらゆる輸入車が手に入る日本でも、やはり主力はドイツ車だ。いいクルマが多いのは間違いないが、都市部などではドイツ車が国産車同様にあふれていて、人とは異なる選択という輸入車の楽しみは薄れている。その点、ブランド自体が新しく、ラインアップも第2世代へと突入したばかりのDSは、全ての面でフレッシュなところが魅力といえるだろう。

生活に変化をもたらしたいと考える人には、DSに注目してみて欲しいと思う。アヴァンギャルドなDSは、いいエッセンスとなるはずだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。