【三井住友フィナンシャルグループ】収益の持続的成長を実現させるメガバンクのM&Aとは?

【三井住友フィナンシャルグループ】収益の持続的成長を実現させるメガバンクのM&Aとは?

2016.07.24

【三井住友フィナンシャルグループ】収益の持続的成長を実現させるメガバンクのM&Aとは?

会社の概要

 2002年に三井住友銀行が自らを子会社とする完全親会社として設立したのが三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMFG)<8316>である。

 現在、SMFGの傘下にある会社は、「三井住友銀行」(銀行)、「SMBC信託銀行」(信託銀行)、「三井住友ファイナンス&リース」(リース)、「SMBC日興証券」「SMBCフレンド証券」(証券)、「三井住友カード」「Cedyna」(クレジットカード)、「SMBCコンシューマーファイナンス」(消費者金融)、「日本総合研究所」(システム開発、シンクタンク業務)である。

3大メガバンクグループ

 1968年に「都市銀行」に分類された13行(第一銀行、三井銀行、富士銀行、三菱銀行、協和銀行、日本勧業銀行、三和銀行、住友銀行、大和銀行、東海銀行、北海道拓殖銀行、神戸銀行、東京銀行)が合併などを繰り返し、現在は「三菱東京UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」「りそな銀行」(及び「埼玉りそな銀行」)が都市銀行とされている。このうち、規模の大きな3行(三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)は一般に日本のメガバンクと称されている。メガバンク3行とりそなホールディングスを含めた4行の売り上げ、純利益、時価総額をグラフにまとめたのが下表である。メガバンクの規模がいかに大きいかがよく分かる。

■メガ3行(+準メガ1行)比較

 銀行においては、金融システムの安定のために一定以上の自己資本比率を保つことが求められている。国際的に活動する銀行の自己資本比率や流動性比率などに関する国際統一基準をバーゼル合意という。88年に最初に策定され(バーゼル1)、日本でも92年から適用されている。04年に改訂され(バーゼル2)、世界的な金融危機を契機に10年に再度改定された(バーゼル3)。金融危機の経験を踏まえ、自己資本比率規制が厳格化されることとなったほか、定量的な流動性規制や、過大なリスクテイクを抑制するためのレバレッジ比率が新たに導入される予定である。バーゼル3は世界各国で13年から段階的に適用されている。

 海外営業拠点を有する金融機関に適用される国際基準と海外営業拠点を有しない金融機関に適用される国内基準では求められるハードルが異なっている。

【国際基準】
【国内基準】
自己資本比率 ≧ 8% 自己資本比率 ≧ 4%
Tier1比率 ≧ 6%
普通株式等Tier1比率 ≧ 4.5%

 なお、メガバンク3行の15年3月期の自己資本比率(バーゼル3)は下表の通りである。いずれも国際基準を超えていることが分かる。

■自己資本比率(バーゼル3)

■SMFGの行った主なM&A
年月 内容
2004.7 消費者金融サービスを行うプロミス(売り上げ3909億円)の株式17%を取得。買収金額は、第三者割当増資の引き受け分633億円及びプロミスの自己株式処分の引き受け分308億円の計941億円
2005.7 クレジットカード事業を行う三井住友カードの株式をNTTドコモに株式譲渡(500億円)、及び第三者割当増資(480億円)の引き受けにより、34%を売却
2005.9 ベンチャーキャピタル業務を行うエヌ・アイ・エフベンチャーズ(売り上げ127億円)の株式20.1%を公開買付にて135億円で取得
2006.7 ソフトウェア開発を行うさくら情報システムの株式34%をオージス総研に売却
2006.9 証券業を行うSMBCフレンド証券(売り上げ523億円)の株式59.65%を株式交換(33億円)にて取得
2008.2 クレジットカード事業を行うオーエムシーカードの株式4.43%をダイエーから103億円で取得。その他、ダイエー保有のオーエムシーカードの株式27.72%を信託財産として取得
2008.5 ベトナムで銀行業を行うVietnam Export Import Commercial Joint Stock Bankの株式15%を取得。取締役を派遣しており、持分法適用会社となっている
2009.1 三井住友FGの100%子会社である日本総合研究所は、システム構築を行う日本総研ソリューションズの株式50%をNTTデータに売却
2009.10 リテール証券業務を行う日興コーディアル証券(売り上げ425億円、純資産4000億円)の株式100%をシティグループから5450億円で取得。
※純資産のうち2010億円は取引対象外であるため、実質的な純資産は2000億円ほど
2011.5 クレジットカード事業を行うセディナ(売り上げ2327億円)の株式32.51%を株式交換(392億円)で取得
2012.4 消費者金融サービスを行うプロミス(売り上げ2384億円)の株式79.29%を第三者割当増資引受(1200億円)及び株式交換(1240億円)にて取得
2012.6 個人向け金融サービスを行うオリックス・クレジット(売り上げ314億円)の株式51%をオリックスに310億円で売却
2013.5 インドネシアで銀行業を行うPT Bank Tabungan Pensiunan Nasional Tbk(以下、BTPN)の株式24.26%を取得。その後、14年3月に追加出資を実施し、出資比率を40%とした。出資額合計は1500億円ほど(15億ドルを1ドル100円で計算)
2013.10 子会社である三井住友銀行が信託業務を行うソシエテジェネラル信託銀行(フランス)の株式100%を取得。その後、同信託銀行はSMBC信託銀行に改称
2015.3 香港で銀行業を行う東亜銀行に1000億円程度の追加出資を行った。持分は9.68%から17.50%に増加、取締役を派遣しており、持分法適用会社となっている
2015.7 子会社である三井住友銀行は、カンボジアで銀行業を行うACLEDA Bank Plcの株式を6%取得。これにより保有比率は18.25%となり、持分法適用会社となっている
2015.11 子会社であるSMBC信託銀行は、シティグループが日本で展開する個人向け銀行事業(リテール事業)を450億円で買収
2016.4 子会社である三井住友ファイナンス&リースがGeneral Electricグループが日本で展開するリース事業を5750億円で買収

 ※株式交換による投資額=SMFG株式の割当予定数×株式交換効力発生日のSMFG株式の時価で算定

(1)消費者金融を買収

 三井住友銀行は04年に消費者金融サービスを提供するプロミスの株式を20%弱取得した。これに先駆け、ライバルである三菱東京UFJ銀行は同じく消費者金融サービスを提供するアコムと資本業務提携している。三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行は共に不良債権問題を処理し、今後の収益増加に向けた前向きな成長戦略を描く材料として、2行が選択したのが消費者金融との提携である(みずほ銀行は消費者金融と提携していない)。個人向け無担保ローン市場は比較的高い利ザヤを見込め、新たな収益の柱になると判断したのが理由である。プロミスの株式を取得した際に三井住友銀行が発表したリリースには以下のように記載されている。

『SMFGでは、①コンシューマーファイナンス事業は、利息返還請求の高止まりに加え、上限金利規制や貸金業者に対する総量規制の導入に伴う市場規模の縮小といった厳しい事業環境に直面しているものの、依然として、相対的に利ざやが厚く、継続して安定した利益水準が見込める事業であり、中長期的に、個人消費を支えるリテールビジネスのラインナップの一つとして重視していきたいと考えていること、②お客さまの選好の相違等により銀行と消費者金融会社は補完関係にあるため、プロミスがSMFGの顧客基盤拡大に寄与するものであること、及び③プロミスの審査その他のノウハウは SMFGのコンシューマーファイナンス事業戦略上不可欠であることから、プロミスグループをコンシューマーファイナンス事業における中核的存在の一つとして位置づけております』

(2)信託銀行を買収

 13年にフランスの信託銀行を買収するまで、他のメガバンクと異なりSMFGは信託銀行を有していなかった。SMFGでは富裕層ビジネスを重要な戦略分野と位置付けてきたが、ソシエテジェネラル信託銀行の4000億円に上る富裕層の預かり資産を引き継ぎ、プライベートバンキング(富裕層向け事業)を強化し、相続や資産承継のニーズも取り込むことが買収目的である。

(3)海外への投資

 SMFGが14年5月に公表した中期経営計画におけるビジョンの一つに「アジア・セントリックの実現」が掲げられている。SMFGではアジアにおけるビジネス戦略をグループ全体の中長期的な最重要戦略と位置付け、業務基盤の構築を進めており、その手段としてM&Aを積極的に用いている。

今後のM&A戦略

(1)収益性の高い事業の買収

 SMFGの中期経営計画の経営目標の一つに「健全性・収益性を維持しつつ、トップライン収益の持続的成長を実現」が挙げられている。しかし、海外経済の減速によりアジア向け融資が伸び悩んでいること、マイナス金利政策の導入などにより、銀行の収益性は低下しているのが現実である。「収益の持続的成長」を実現させるためにも、国内外問わず、収益性の高い事業を積極的に買収することが想定される。

(2)信託業務の強化

 SMFGは13年に信託銀行を買収したことで信託業務に参入し、シティグループの国内リテール事業を買収したが、SMFGの信託業務は他のメガバンクに比べてまだまだ脆弱であると言える。三菱東京フィナンシャルグループ及びみずほフィナンシャルグループの有価証券報告書では信託銀行が報告セグメントの一つとなっているが、SMFGの有価証券報告書では信託銀行が報告セグメントとなっていないことからも明らかである。主な信託銀行の資本金を比べてみると、三井住友信託銀行(資本金3420億円)、三菱UFJ信託銀行(資本金3242億円)、みずほ信託(資本金2473億円)に比べ、SMFG傘下のSMBC信託銀行は275億円と非常に小さいことが分かる。信託銀行最大手の三井住友信託銀行はSMFGと起源は同じではあるが設立の経緯から別グループを形成しており、両グループが統合することは現時点では想定しづらい。SMFGが信託業務を強化するためには他の信託銀行を買収することが考えられる。

■資本金

SMFGの財務分析

 ではSMFGの財務を検証してみることとする。

■経常収益/損益推移

■総資産/純資産推移

 SMFGが設立した03年3月期からの財務情報の中で、リーマンショックが生じた09年3月期、及び影響を受けた10年3月期に注目したい。リーマンショックが生じた09年3月期は金融危機の影響で投資家のリスク回避による株価低迷などが原因で、経常収益(売り上げ)及び利益が大幅に減少した。10年3月期においてもリーマンショックの影響で資金需要の低迷、海外投資家のリスク回避などにより引き続き経常収益は大幅に減少した。しかし09年3月期に、収益の低迷が持続することを見越して引当金を積み増したこと、厳しい経済環境を踏まえて保守的に対応するため繰延税金資産を取り崩したことなどにより、経常収益が大幅に減少したにも関わらず、10年3月期の利益は増加している。将来を見越して保守的な会計処理を迅速に行ったことで損失の長期化を防いだことがうかがえる。

 しかし、16年3月期の利益は6400億円台で、15年3月期の利益7500億円に比べ1000億円以上の減少となっている。また、これにより2期連続で前年比減少となっている。今後、将来の利益減少を防ぐため、上記のようなM&A戦略が実施されることになるであろう。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

【平成最後】2018年度の「M&A」件数・金額は、過去最高に - 令和も活況続くか

【平成最後】2018年度の「M&A」件数・金額は、過去最高に - 令和も活況続くか

2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出展:M&A online データベース

関連記事
大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

関連記事