日本の家電メーカーは復活できるのか? カギを握る海外市場の熟成度

日本の家電メーカーは復活できるのか? カギを握る海外市場の熟成度

2016.07.25

2016年は、日本の家電産業にとって、大きな節目を迎えた1年になったといえるだろう。シャープと東芝の2つの家電事業が、海外資本の企業のもとで再スタートを切ることになったからだ。

016年4月2日、台湾の鴻海精密工業は、シャープを約3,888億円で買収することで正式に調印した。10月5日までに払込が完了する予定であり、なるべく早いタイミングで払込が行われる方向で調整が進められている。

「目のつけどころがシャープ」のキャッチフレーズが浸透しているように、白物家電を中心に、ユニークな製品でファンを掴んできたシャープ。1912年の創業以来、104年の歴史を持つ企業が、大手電機メーカーとして初めて海外資本のもとで再生を図ることになる。いみじくも、社名となったエバー・レディー・シャープペンシル(現在のシャープペンシル)を発売した1916年からちょうど100年目の出来事となった。

白物家電のDNAは海外資本で生き残れるか

東芝本社ビル

そして、2016年6月30日、東芝は、白物家電事業を世界第2位の白物家電メーカーと言われる中国の美的集団(ミデアグループ)に売却した。白物家電事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、美的集団に約537億円で譲渡。東芝も一部出資を維持するものの、連結対象からは外れることになる。

1894年に、日本初の電気扇風機を発売したのを皮切りに、冷蔵庫や洗濯機、アイロン、電子レンジなど、東芝は日本初の家電製品を作り続けてきた歴史を持つ。その歴史ある家電事業は、中国企業のもとで継続することになった。

シャープも東芝も、白物家電製品には引き続きぞれぞれのブランドを使用することが決定しているが、海外資本の傘下という点だけをとっても、これまでとは異なる環境のなかで開発、製造、販売が行われることになるのは明らかだ。長い歴史を持つ両社の白物家電事業のDNAが、今後も継続されるのかが気になるところだ。

2007年頃のシャープは「アクオス」ブランドを前面に展開していた

では、日本の白物家電事業は、なぜ、海外企業に売却されるといった事態に陥ってしまったのだろうか。

それにはいくつかの理由があるが、最大の理由は、日本の家電メーカーが、国内市場へのこだわりがあまりにも強かったという点だろう。つまり、それが家電事業の成長を鈍化させ、成長戦略を邁進したグローバルカンパニーとの差になってしまったのだ。

日本の大手総合家電メーカーは、日立、パナソニック、東芝、三菱電機、シャープの5社。これらのメーカーは、すべて海外で白物家電事業を展開しており、国内集中でビジネスを展開してきたわけではない。東芝を例にすれば、同社の白物家電事業の約3割は海外ビジネスであり、中国、インドネシア、タイの生産拠点を活用しながら、アジア市場で事業を展開してきた。パナソニックもアジア市場に留まらず、欧州市場にも洗濯機、冷蔵庫などの製品を投入している。

だが、海外家電メーカーが、本当の意味でのグローバル戦略を軸として展開していたのに比べると、日本のメーカーは海外事業においても日本中心という姿勢は崩してこなかった。

各国の生活習慣を生かしたサムスン

例えばグローバルカンパニーの雄で韓国サムスン電子。地域専門家制度という独自の仕組みを導入し、これによって海外における家電事業のベースを一歩一歩地道に作り上げてきた経緯がある。

地域専門家制度とは、サムスンがターゲットとする国に人材を派遣。半年から1年間にわたって現地で生活を行い、その国の生活習慣や文化、トレンドなどを熟知する。この間、具体的な業績目標は設定されず、現地での生活は自由だ。だが、会社の業務とは関係のないところで自分の力で人脈を築き、文化を学ぶことを課せられる。

ここで目指しているのはその国に住む人と同じか、それ以上に文化やトレンドに精通している人材になることだ。そうした人材が自らの経験をもとに、その国に最適化した製品の企画、開発に携わり、それぞれの国に適したマーケティング戦略を立案する。まさに、その国に根づいた形での製品企画を行うことにつながっている。サムスンが白物家電の重点分野において、世界各国でトップシェアを獲得しているのも、こうした取り組みが見逃せない。

白物家電製品は、生活に密着した製品であり、主食や食べ物の嗜好、生活様式、気候や文化などによって、それぞれの国ごとに最適化した製品が求められる。欧米が靴を履いたまま生活するのに対して、日本は靴を脱いで生活するため、求められる掃除機の質は大きく異なる。中国では上着と下着を別々に洗濯することが常識であったり、東南アジアでは洗濯機に乾燥機能が求められなかったり、水は必ず煮沸してから冷蔵庫に大量のペットボトルを保存することが習慣になっている国があるといったように、各国ごとに日本とは異なる生活様式のなかで、家電製品が使われている。それぞれの国にあわせた製品開発は、必須だといえる分野だ。

これに対して、日本の家電メーカーは、あくまでも日本中心の手法を貫いた。アジア、中国地域には生産拠点を置き、そこで生産を行う体制を構築してはいたものの、海外生産拠点では、あくまでも日本向けの生産が中心だったり、日本でヒットした製品を海外へと展開する戦略を軸としていたため、これを海外で生産、海外ニーズを取り込むことは後回しとなったり、といった状況が見られた。

長年にわたって、日本で成功した製品は、海外でもヒットするという誤った認識が蔓延していたことも、海外展開の遅れにつながった。

2005年に開設された中国・上海の中国生活研究センター

パナソニックは、2005年から中国・上海に中国生活研究センターを設置し、独自の生活研究をベースに、中国のユーザーニーズに対応したり、機能を割り切った製品を市場に投入したりといったことを開始。従来から発売していた幅60cmの冷蔵庫が、約3割の家庭には置けなかったことを知り、これを55cmにすることで販売を拡大するといった成果もあげてきたが、主流となる低価格帯製品の展開には遅れ、市場シェアは限定的ともいえる状況だ。パナソニックの世界シェアは、エアコンが約9%、洗濯機は約6%、冷蔵庫は約3%だが、その多くは日本市場での実績がベースとなっている。

海外で低下していった価格競争力

そして、コモディティ化した家電製品は、グローバルでは低価格化が進展。また、家電製品の普及率が低く、成長が見込まれている新興国市場においてもやはり低価格製品が普及戦略の中心となるなかで、国内事業にこだわる日本の家電大手は、付加価値モデルが中心の事業構造となっており、こうした動きに追随できず、価格競争が進展するなかで収益を悪化させる事態に陥った。

これに対して、サムスンやLG電子、ハイアールは、コモディティ化した製品を相次いで投入している。これらのメーカーに共通しているのは、世界共通で展開できるプラットフォームを用意して、その上で各国ごとの仕様を実現するという構造を採用していたことだ。これが低価格品の販売台数が増加しても、利益率の確保につながっている。大量部材調達、大量生産のメリットが生かせる構造を敷いていたことが、日本の家電メーカーとの違いだったといえる。

実は、ハイアールや美的集団が、1社で生産する白物家電製品の年間生産台数は、日本の年間市場規模全体を遥かに凌ぐ規模になっている。これらの企業は、それだけの規模でビジネスをしており、それが競争力のベースとなっているのだ。

これに対して、日本の家電メーカー各社は、家電が普及しつくした日本市場を対象にビジネスを行ってきただけに、数量の成長は限定的とならざるを得ない。しかも、他国に比べて家電メーカーが多い国でもある。エアコンを例に取れば、日立、パナソニック、東芝、三菱電機、シャープの5社のほかに、ダイキン、富士通ゼネラルという専業メーカーも加わる。これらの企業が、飽和状態となっている国内市場でのパイを取り合っているという構図だ。

海外市場の変化がポイント

だが、これは決してマイナス面だけに作用するものではない。

最も品質や機能性に対する要望が高い日本市場で鍛えられた日本の家電メーカーは、高い品質と付加価値を持った製品開発では先行し、プレミアム家電と呼ばれる市場も作り上げた。

日本から優れた家電製品が数多く登場している点は、紛れもない事実である。これをさらに生かしていくことが、日本の家電復活のポイントになるはずだ。市場が成熟すれば、次に求められるのは付加価値である。中長期的にみれば、日本の家電メーカーが活躍できる場は決して少なくない。そのためには、次の時代に向けたグローバル展開を行える体制づくりを、いまから行っておく必要があるだろう。その点では、海外資本参加に入った、シャープ、東芝も絶好のポジションを得られる可能性があるといえる。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。