PC業界から東芝ブランドが消滅、低迷市場で新生「Dynabook」は復活劇を描けるか

PC業界から東芝ブランドが消滅、低迷市場で新生「Dynabook」は復活劇を描けるか

2018.12.19

東芝クライアントソリューションが「Dynabook」に社名変更

PC業界で歴史を持つ東芝ブランドが消滅する

新生Dynabookは「シャープ流」を採り入れ、ブランドの世界展開へ

PC業界で長い歴史を持つ東芝ブランドが消滅した――。

シャープが株式の80.1%を取得したことから、今後の動きが注目されていた東芝クライアントソリューション(TCS)。同社は事業戦略の転換に踏み切り、2019年1月より社名を「Dynabook株式会社」に変更すると発表し、「シャープ流」を採り入れることで事業拡大を図る姿勢を示した。

低迷の続くPC市場において、新生Dynabookは復活劇を見せられるのだろうか。

シャープ傘下の「Dynabook株式会社」として再出発する

「dynabook」ブランドを世界に展開

東芝PCの歴史は長い。1985年に世界初のラップトップ型「T1100」を、1989年には初代dynabookとなる「DynaBook J-3100」を発表した。パーソナルコンピュータの父とも呼ばれる科学者のアラン・ケイ氏が提唱した「ダイナブック」のビジョンに共感した東芝が、製品ブランドとして採用したのが始まりだ。

1989年発表の「DynaBook J-3100」

だが2019年1月にはTCSがDynabookに社名を変更(ブランド表記はdynabookを継続)し、PCから東芝のブランドは消えることになる。家電製品では中国の美的集団傘下の「東芝ライフスタイル」として東芝の名前が残ったのに対し、シャープは東芝の名前ではなくdynabookを存続させることを決断した形になった。

このdynabookブランドを、新会社は海外にも展開していく構えだ。TCSはPC事業の売上海外比率を2018年度の22%から2020年度には42%まで高める目標を掲げた。特に有望な地域としてアジアを挙げており、これはシャープを傘下に収めた鴻海のチャネルを活用できるためだという。

シャープや鴻海とのシナジーで海外展開を加速

だが、海外展開には大きな課題もある。TCSはdynabookを日本国内向けのブランドとして展開しており、海外ではほとんど知られていないからだ。主要な市場において商標の問題はクリアしているとのことだが、認知度を高めていくにはしばらく時間がかかりそうだ。

その先駆けとなったのが、2018年9月にベルリンで開催された見本市「IFA 2018」だ。シャープが出展したブースにはTCSのノートPCが並び、世界に向けてdynabookブランドをアピールしており、2019年からの新体制を見据えた布石になっていた。

世界に向けて「dynabook」ブランドをアピール(IFA 2018のシャープブース)

シャープのAIoTと組み合わせたソリューションが鍵に

当面の間、TCSの主力商品になるとみられるPCだが、世界のPC市場は低迷している。2018年第3四半期のPC出荷台数は米Gartner調べで前年比0.1%増、米IDC調べでは0.9%減となった。

特に個人向けPCは引き続き減少傾向にあるとされており、「リテールは非常に厳しいビジネスだ。売上は増えても利益は増えない。そこに勝算なく突っ込んでいくことはしない」とシャープ副社長の石田佳久氏は語っている。

一方、法人向けPCはWindows 10への買い替え需要が続く2020年までは比較的堅調とみられており、TCSもまずはB2Bを中心に展開するという。この点ではシャープがすでに持っているビジネスソリューションの販売チャネルを活用し、一定の売れ行きは見込めるようだ。

だが、その先を見据える上で重要になってくるのが、PC以外への製品ラインアップの拡大だ。すでにTCSはクラウドや教育向けなどさまざまなソリューションを展開しており、業務用デバイスとしては通信機能を搭載したドライブレコーダーなどを製造している。今後は、ここにシャープのAIやIoT技術を組み合わせていくというわけだ。

TCSによる損保会社向けドライブレコーダー製品

たとえばシャープは8Kの映像技術を活用したエコシステムを提唱している。8Kカメラと画像処理技術を組み合わせ、内視鏡や防犯、保守に活用できるという。カメラやセンサといったハードウェアに、クラウドやAIといったソフトウェアを組み合わせたソリューションの需要は世界中で高まっており、有望な分野といえる。

シャープの技術を組み合わせ事業領域を拡大

またTCSは、シャープによるAIを利用したサービス群「COCORO+(ココロプラス)」と連携したサービスの海外展開も目指すという。今後のスマート家電は単にネットにつながるだけでなく、人間に寄り添い支援する機能が期待されるだけに、日本のおもてなしやホスピタリティへの理解も相まって注目度は高い。

単純なハードウェアの開発競争では、スケールメリットを活かした中国メーカーの優位が続いている。Dynabookの生き残りには、シャープの技術を加えたソリューションを世界にアピールしていけるかどうかが鍵になりそうだ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu