ワイモバイルが採用した「Android One」は日本市場に何をもたらすか

ワイモバイルが採用した「Android One」は日本市場に何をもたらすか

2016.07.25

ワイモバイルが7月5日、「Android One」を搭載したスマートフォン「507SH」を発売することを発表した。元々新興国向けのプログラムだったAndroid Oneを、ワイモバイルが採用して端末開発するにまで至った理由は、一体どこにあるのだろうか。そしてAndroid Oneの導入で、スマートフォンの価格は大きく変わるのだろうか。

そもそもAndroid Oneとは?

1GBのデータ通信と、10分間限定の音声通話300回分が付いて、月額2,980円から利用できる「スマホプランS」や、iPhone 5sの販売などによって、ここ最近急速に人気を高めているのが、ソフトバンクがサブブランドで展開しているワイモバイルだ。

ワイモバイルは分かりやすい料金に加え、音声通話に強みを持つこと、そして全国にワイモバイルショップを構えている安心感などもあって、ワイモバイルは価格とサービス品質にこだわるフィーチャーフォンからの乗り換えユーザーなどを獲得。1,000円を切る価格でサービスを提供するMVNOが急増する中にありながらも強みを発揮している。

そのワイモバイルが7月5日に新戦略として打ち出したのが、グーグルが提供する「Android One」を採用したことである。実際ワイモバイルは、Android Oneを採用した日本初のスマートフォン「507SH」を、グーグル、シャープと共に開発。7月29日に発売するとしている。

Android Oneを採用したシャープ製のスマートフォン「507SH」

だがそもそも、日本ではそもそもAndroid One自体に馴染みが薄く、OSとしての「Android」と何が違うのか、わからない人も多いのではないだろうか。そこでまずは、Android Oneについて簡単に解説しておこう。

Android Oneは、グーグルがさまざまなスマートフォンメーカーと協力し、最新のAndroid OSが利用できるスマートフォンを開発するためのプログラムである。それゆえAndroid Oneを採用したスマートフォンは、発売より18カ月間、最低1回はAndroidのメジャーアップデートが保証されているほか、セキュリティに関するアップデートも毎月実施されるという。

Android Oneは、18カ月間のOSメジャーアップデートが保証されるなど、最新のAndroidが利用できることを重視したプログラムとなっている

Android OneとNexusシリーズとの違いは、グーグルが関与する度合いの違いにある。NexusシリーズはOSからソフト、さらにはハードに至るまで、あらゆる部分でグーグルが大きく関与して開発されている。だがAndroid OneはOSのアップデート保証など条件はあるものの、それさえ守っていればハードやアプリなどでメーカー独自の機能を追加することも可能であるなど、メーカーの独自性を打ち出す余地がやや大きい。

実際507SHも、防水・防塵性能が備わっているほか、ワンセグも利用できるようになっているなど、いわゆる“日本仕様”のいくつかが搭載されている。おサイフケータイだけは、OSのアップデートを保証する上での技術的理由から搭載できなかったとのことだが、Nexusシリーズにはない独自性が打ち出されていることが分かる。

507SHはワンセグにも対応するなど、Nexusシリーズにはない独自機能がいくつか備わっている

ワイモバイルはなぜAndroid Oneを採用したのか

そもそもAndroid Oneが生まれた背景には、最近グーグルを悩ませている、OSの分断化の問題があったといえるだろう。

AndroidはiOSと異なり、グーグルはOSを提供するのみで、実際のハードを開発するのはサムスン電子やソニーモバイルコミュニケーションズなどの端末メーカーである。そうした水平分業化が多彩なハードを生み出したとともに、新興国のユーザーも購入できる低価格スマートフォンを増やし、スマートフォンの大衆化を進めた大きな要因となり、Androidの強みの1つとなっているのは確かだ。

だが一方で、グーグルがハードに関与する度合いが小さいことから、iOSのようにOSのアップデートを管理しきれず、新しいOSにアップデートできないAndroidスマートフォンや、それを利用し続けるユーザーが増加。結果的に最新OSの普及が進まず、セキュリティ面で問題を引き起こしたり、新OSの利用を前提とした新しいサービスが広まらなかったりするなど、さまざまな問題をもたらしている。

特に低価格のスマートフォンは、最低限のハード性能で開発されることが多いため、発売時点のOSのバージョンで使い続けることを前提に設計されていたりすることも多かった。そうしたことからグーグルは、主として新興国向けの低価格端末を開発するメーカーに向け、最初からOSのアップデートを保証するAndroid Oneのプログラムを提供することになったわけだ。

Android Oneは元々、特に低価格スマートフォンのOSアップデートに関する問題を解消するため、グーグルが始めたプログラムでもある

その新興国のメーカー向けプログラムであるAndroid Oneを、ワイモバイルがあえて日本で採用した理由は2つあると考えられる。1つはやはり、OSの分断化に対処する狙いだ。

実は日本で発売される、日本メーカー製Androidスマートフォンの多くも、OSのアップデートがあまりなされないことが多い。その理由はハード性能ではなく、主にメーカーが独自に搭載している機能やアプリの動作を、新しいバージョンのOSで検証するのに時間や手間がかかってしまうため。日本ではキャリアが中心となってハード・ソフト両面で独自の機能を追加することが多く、それがOSアップデートの妨げとなってしまっているのだ。

そうしたことからワイモバイルは、ある程度日本で必要とされる機能を搭載しながらも、OSのアップデートを可能にし、長期的に利用できる端末を開発・提供するため、Android Oneを取り入れたと考えられる。ワイモバイルは今後も継続的にAndroid One端末を投入するとのことで、今後Android One搭載端末の投入を主軸としていくことが分かる。

Android Oneを採用しても端末は安くならない

そしてもう1つの理由はブランディングだ。実際、ソフトバンクの執行役員で、ワイモバイル事業推進本部本部長である寺尾洋幸氏は、「Android OneをiPhoneに並ぶ主力ブランドに育てていきたい」と話しており、Android Oneをブランドとしても活用していく考えを示している。

ワイモバイルはAndroid Oneを、iPhoneに並ぶ主力ブランドとして展開する考えを示している

実はソフトバンク、ひいてはワイモバイルとグーグルの関係は意外と深い。2013年にワイモバイルの前身の1つであるイー・モバイル(イー・アクセス)が、グーグルの「Nexus 5」を販売し、これがヒットして以降、歴代のNexusシリーズのスマートフォンをワイモバイルやソフトバンクで販売するなど、協力関係にある。

ワイモバイル事業を担当するソフトバンクの寺尾洋幸氏(左)と、グーグルのカーラ・ベイリー氏(右)。ワイモバイルとグーグルはNexusシリーズなどで協力関係にある

そうしたことからソフトバンクとグーグルとの関係の強さを打ち出すべく、あえてAndroid Oneを前面に出す戦略に出たといえよう。Android Oneのブランドを前面に押し出すことで、ソフトバンクとグーグルという大きな企業が関わっている安心感を打ち出すのが大きな狙いとなっているわけだ。

一方で、これまで新興国向けであったAndroid Oneを採用したからといって、端末価格が劇的に安くなるわけではない。507SHはボディデザインやスペックを見る限り、auの「AQUOS U」をベースに開発されたミドルクラスの端末となるが、価格は一括で51,840円、MNPで12,960円。総務省の施策の影響で実質0円での販売ができないとはいえ、日本仕様を取り入れていることなどもあってか、劇的に安いわけではないことが分かる。

507SHはauのAQUOS Uと共通している部分が多く、それが低コスト化につながっている部分もあるが、Android Oneを採用したからといって劇的に安いわけではない

それだけに、最近増えている海外メーカーのSIMフリースマートフォンなどと比べると、価格面での競争力はあまり高いとはいえない。それでもなお、ワイモバイルがAndroid Oneを採用したのには、価格を重視することよりも、防水やワンセグなど馴染みのある機能を備え、なおかつOSのアップデートにも対応する、安心感をユーザーに与える狙いが大きかったといえるだろう。

MVNOのサービスやSIMフリースマートフォンは、価格は安いもののサポート面などが弱く、安心感の面ではいまいちだという声も多い。また先に触れた通り、ワイモバイルの人気には、適度な価格で安心感のあるサービスやサポートを提供していることが大きく影響している。それだけにワイモバイルはAndroid Oneの導入で安心感を追求し、MVNO同士の価格競争とは一線を画したい考えがあるといえそうだ。

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

2019.03.22

Googleマップが壊れた? 3月21日以降、表示がおかしい

地図のダウンロード機能でゼンリンと決裂したか?

新しい地図は機械学習で地図データ生成という指摘も

Googleマップの表示がおかしい。3月21日頃から、Googleマップの不具合を訴える声が各所で相次いでいる。道路の表示や建物の位置が正確でなかったり、地形すら間違っている場所もある。Googleマップにいったい何が起こったのか。

地図データの提供元がゼンリンではない?

Googleマップの日本地図データはこれまで、地図データで国内大手のゼンリンから提供を受けていた。両社の契約状況は公開されていないが、少なくとも不具合が発生している現在のGoogleマップ上からは、以前までは記載されていたゼンリン社の権利表記が消え、「地図データ (C)2019 Google」へと変更されている。

Googleマップからゼンリン社の権利表記が消えた

Google社は今月のはじめ、今後「数週間以内」に、日本のGoogleマップをアップデートすると予告していた。このアップデートでは、特にダウンロード可能なオフラインマップを追加することに注目が集まっていた。オフライン環境でもダウンロード済みの地図を利用できる便利な機能だが、地図データの契約上の課題があり、日本のGoogleマップでは制限されていた機能だからだ。結局、両社は契約の課題を解決できず、ゼンリンが地図データ提供から降りてしまったことが、今回の不具合の原因と見られる。

新しい地図は使い物になるのか?

現在のGoogleマップは、Googleが新規開発した自社製の地図データを利用しているようだが、いまだに不具合が報告され続けている状態状態であり、混乱が収束する目途は見えていない。

なお、この新しい地図は、航空写真で山脈の陰部分が湖になっていたり、並木の多い道路が公園になっていたりする間違いや、ほかにも交差点に面したコンビニエンスストアの駐車場が道路と語認識されていたりすることから、航空写真をもとにした機械学習や、スマホ位置情報の移動軌跡から地図データを生成しているのではないかと指摘されている。

航空写真では山の陰になっている部分が、川と湖になってしまっている
地図では鎌倉街道から大栗橋公園を抜ける道があるが、実態はただの公園広場だ。スマホ位置情報の移動実績をもとに道と認識したか?

新しい地図の仕組みや改善の見込みについては、Google側のアナウンスを待つほかないわけだが、GoogleマップはAndroidの標準地図として利用されており、影響を受けるユーザーがあまりにも多い。他の地図サービスを駆逐して大きな影響力を持っているのだから、責任も伴うはずだ。

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2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

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