その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

2018.12.07

ソフトバンクの携帯電話サービスに全国規模の通信障害が発生

原因はエリクソン製の交換機と発表、世界11カ国で同様の被害

同様の「重大事故」は他社でも起こる可能性、自衛も必要か

ソフトバンクの携帯電話サービスで全国規模の障害が発生した。12月6日13時39分頃発生した障害は全国に影響し、同日18時4分頃まで、4時間30分に及んだ。原因と、残された課題を探る。

交換機の不具合で通信障害が発生?

今回の障害は、LTEに関わる交換機の不具合によるものという。この不具合は、コアネットワーク(基幹通信網)内のSGSN-MME(Serving GPRS Support Node-Mobility Management Entity)という2つのノードで発生した。問題の交換機を製造したのはエリクソンで、現時点では「交換機のソフトウェア証明書のバージョン齟齬」が不具合の原因だったと発表されている。

スウェーデンに本拠を置くエリクソンは、グローバル市場にコアネットワーク向け製品を提供していたことから、イギリス大手のO2をはじめ、世界11カ国の携帯電話キャリアでソフトバンクと同様の障害が発生した。

音声・データ通信ともにつながらない状態が続いた

この交換機の不具合により、ソフトバンクの4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともにまったくつながらない(圏外になる)、またはつながりにくい状況になった。その影響で、3G網には通信が集中して輻輳が発生したため、スマートフォンでの通信がまったく行えない、というユーザーが全国で発生した。

同様に固定電話サービス「おうちのでんわ」、自宅用無線LANサービスの「SoftBank Air」もまったく使えない、または使いづらい状況に陥った。サブブランドのY!mobileも同様で、さらにはMVNOでソフトバンク回線を使うLINEモバイルなどにも影響した。

交換機のソフトウェアのバージョンを古いものに戻して復旧を図った結果、同日18時4分頃には障害が解消。当初は通信集中による輻輳も見られたが、翌7日の14時時点では、それも解消して通常通りの利用ができている、という。

「重大事故」に強い是正義務

電気通信事業法では、119番などの緊急通報を行う音声サービスの障害が1時間以上継続し、影響が3万人以上に及んだ場合に「重大事故」として、総務省への速やかな報告を求めている。現時点で、ソフトバンクは影響人数を「調査中」としているが、全国で発生した障害のため、重大事故に該当するのは間違いなく、今後30日以内に原因などを明確に報告する義務がある。

今のところ、これまで9カ月間にわたって使ってきたソフトウェアが、なぜこのタイミングで障害を起こしたのかは分かっていない。証明書の期限が切れたから、という可能性もあるが、現時点ではソフトバンクは「調査中」としている。

とにかく、コアネットワーク内の装置のソフトウェア的な問題による障害だった、ということは明らかになっている。キャリアは、災害時の通信をバックアップするために重要施設を分散化して二重化するなどの対策を取っているが、今回の障害では、ソフトバンクが東京・大阪に置くすべての重要な設備が障害を起こした結果、全国規模での障害となってしまった。

LTE化も影響拡大の背景、他社は他人事ではない

影響が大きくなった背景には、LTE網への移行が進んでいる点も挙げられる。有限の周波数を使っている関係上、キャリアはより効率的なLTEへの移行を推進してきた。3G網で利用する周波数を減らしてLTEに移行した結果、3Gで通信できる容量が限られてしまうため、LTEの障害で3Gしかつなげられなくなったときに、接続できないユーザーが大量に発生したのだ。

音声通話でもLTEを使ったVoLTEが一般化しており、4G LTEが全て影響を受けたため、音声通話にも影響が及び、問題が拡大した。

これに関してはドコモもKDDIも同様で、同じように障害が発生した場合に、「逃げ場」がなくなるという問題がある。とはいえ、3Gはもはや終了を前提としており、バックアップのためだけに残すには無駄が多すぎる。

昨今の通信網はネットワーク構成が複雑化し、どのような障害が発生して、どこまで通信に影響するか分かりづらくなっている。冗長化によってマルチベンダー化することも一つの手段だろうが、重要設備であるため、そのコストも馬鹿にならない。ユーザーの通信料削減のためのコスト削減が求められている現在のキャリアにその余力はないだろう。

もともと、これまでも各社は「重大事故」を起こして対策を整えてきており、災害における対策も重点的に取り組んできた。今回の詳細な原因が明らかになっていないため、キャリア側の対策と今後の取り組みはまだ判断がつけられないが、同じことが起きないような対策が望まれる。

対策の一つとなりうるキャリアの設置する公衆無線LANサービスは、回線に携帯網を使っている例もあり、こうした障害時に使えなくなる危険性もある。キャリアは固定回線化を進めることも必要だろう。

無線LANを使って音声通話を行うWi-Fi Callingという仕組みもあるが、日本のキャリアはサービス提供に及び腰だ。とはいえ、こうした場合の対策としては有効でもあるため、これもキャリアの対応を促したいところだ。

事業者の責任は重いが、ユーザーも自衛すべきか

これに対して、ユーザー側に取れる対策はあるだろうか。今回は、公衆電話を使ったというネットの声もあったが、これも一つの手ではある。とはいえ、急激に数を減らす公衆電話は、いざという時に見つけられるかは分からない。

前述のキャリアの公衆無線LANサービスも利用できる。LINEなどのSNSサービスでの音声通話なら無線LAN環境でも利用できる場合もあるため、ある程度の代替にはなる。キャリア以外の有料の公衆無線LANサービスもあるので、いざという時には一時的な契約もありだろう。サービス間のローミングの仕組みもあれば、追加料金を支払わずに済むので、サービス提供者同士の連携があっても良さそうだ。

筆者は複数キャリアの回線を所有しているが、こうしたバックアップは万人に勧められるものではない。とはいえ、最近のMVNOは、プリペイドカードからすぐに利用開始できるので、こうしたSIMカードを買っておくというのもいいかもしれない。

iPhone Xsのように、eSIMを採用した端末も有効だろう。無線LAN環境があれば、通信プランをインターネット経由で購入してすぐに利用開始できるため、一時的な障害時に購入して使うことができる。物理的なSIMカードのように事前に購入しておく必要がないというのもメリットだ。ただ、国内キャリアが提供していないと、いざという時のバックアップにならないので、各社の対応を期待したい。

障害時にキャリア間でローミングをする仕組みも考えられるが、現状の仕組みではさすがに難しいだろう。複雑化したネットワークは、安易な対策ではカバーしきれなくなっているため、完全に障害を発生させないことは難しい。

ソフトバンクとエリクソンのさらなる究明・対策の公表が待たれるところだが、他のキャリアも他山の石として、設備の検証や対策の検討は必要だろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu