海外勢上陸ラッシュで地位向上? 日本のハンバーガー業界に起こった歴史的な出来事

海外勢上陸ラッシュで地位向上? 日本のハンバーガー業界に起こった歴史的な出来事

2018.12.10

ターゲットを明確にしたカールスジュニアの出店戦略

グルメバーガーの地位向上を如実に示すブラザースの快挙

もはや「安物」ではない……ハンバーガーにパラダイムシフト

数年前、日本に相次いで上陸した外資系ハンバーガーレストラン。各店の“その後”を追跡中の“ハンバーガー探求家“松原好秀さんは、「カールスジュニア」(Carl's Jr.)の日本展開に「ローカライズ」の妙味を見出したそうだ。黒船バーガーが続々と来航したことで活気づいた本邦ハンバーガー業界では、日本勢による“歴史的な出来事”も起こったという。以下、松原さんからの報告だ。

あえて一等地を外した? カールスジュニアの独特な出店術

「シェイクシャック」(Shake Shack)と「ウマミバーガー」(UMAMI BURGER)の動向は前回の記事でお伝えしたとおりだが、今回は独特の奇妙な店舗展開を見せている米国カリフォルニア発のハンバーガーレストラン「カールスジュニア」に注目したい。

世界に194店のシェイクシャック、20店余のウマミバーガーとは桁違いの3,700店を展開する大手バーガーチェーン、それがカールスジュニアだ。日本上陸は2016年3月。その一風変わった出店場所が毎度話題を呼んでいる。

カールスジュニアは東京・秋葉原を日本上陸の地に選んだ。次いで神奈川県の「ららぽーと湘南平塚」に2号店、東京・自由が丘に3号店を続けてオープン。銀座、青山、六本木など、都内でも一等地の、ブランド力の高いエリアに1店目を出すのが海外企業の定石だが、カールスジュニアはそんな決まりごとなどお構いなしに、独自の打ち出し方をしてくる。まさに「我が道をゆく」ハンバーガーチェーンだ。

2016年3月4日にオープンしたカールスジュニア秋葉原店。中央通りに面した路面店で、AKB劇場まで徒歩1分。周囲にはフィギュアを売る店やメイドカフェなども多い

一見すると奇妙な1号店だが、しかし、近年の秋葉原はオタク文化の聖地にして、外国人観光客がこぞって訪ねる世界的な観光スポットでもある。銀座や青山などとはまた別種の情報・文化の発信地だ。そんな世界の“Akiba”への出店は狙い通りの成果を上げた。以降も「秋葉原は男性客」「平塚はファミリー」「自由が丘は女性客」と、それぞれ異なる層へ訴えかけて、いずれも確かな手ごたえをつかんでいる。「各店のターゲットは狙ったとおりになっている」とカールスジュニアジャパンのスーパーバイザー森一樹さんは自信をのぞかせる。

地域のイベントにも積極的に参加。オープン初年にはAKBグループのメンバー2名がカールスジュニアの「ブランド大使」に就任してPR活動をおこなった

そしてこの秋、カールスジュニアは立て続けに2店舗をオープンした。注目は神奈川県の横須賀市に出した4号店だ。都内に十分な店舗数がない中で、なぜまた神奈川なのか? そして横須賀だったのか?

横須賀店が日本攻略の海岸堡に?

横須賀は海上自衛隊と米海軍、2つの基地がある軍港の街である。米軍基地がある関係から「出店して欲しい」というリクエストは以前から多く、ゆえに「ずっと物件をチェックしていた」と森さん。2018年10月にオープンした横須賀中央店は「三笠ゲート」という米軍横須賀基地の通用口から徒歩3分の場所にある。オープン当初の客の実に9割以上が米国人だったそうだ。

看板メニュー「スーパースター」(税込み940円)。自慢の直火焼き100gパティを2枚重ねたダブルチーズバーガーだ

そして、横須賀市はここ10年、「ヨコスカネイビーバーガー」という観光事業に市を挙げて取り組んでいる。同事業は2008年11月、当時の在日米海軍司令官から横須賀市長へ、両者の「友好の象徴」としてハンバーガーの「レシピ」が贈呈されたことに始まる。以後10年、市内の飲食店、地元行政、米海軍が協力し合って活動を続け、今では首都圏において一定の知名度を得るブランドにまで成長した。カールスジュニアが出店したのは、そんな「ハンバーガーの街」なのである。ネイビーバーガーとカールスジュニアがどんな化学反応を引き起こすのか。今後が楽しみな出店だ。

ウマミバーガーやシェイクシャックと違い、カールスジュニアには日本限定の独自メニューは存在しないが、代わりに、店づくりに関する「ローカルな工夫」がさまざまに見られる。例えば、湘南平塚店は大型商業施設に入る店舗のため、施設側から「キッズスペースの確保」と「動線を大きくとって欲しい」という要望があり、それに対応している。

今度の横須賀中央店はドルでの支払いに対応している。しかし、いざフタを開けてみると、米国人客は現金よりも「クレジットカード」で支払うケースがほとんど。だから、レジには常に決済機が出してある状況だ。また、カウンター席には、さまざまな形状のソケットに対応可能なコンセントを設置している。

ドルが使える店は米海軍横須賀基地の周辺エリアに90店以上ある
カウンター席のコンセントは、さまざまな形状のソケットに対応している

横須賀店が日本展開のモデルケースに

さらに、この横須賀中央店そのものが、今後の国内展開を見越して「ローカライズ」された造りになっている点にも注目したい。

これまでの3店はどこも店舗面積40坪以上で、自由が丘店に至っては120席を誇る「大箱」だったが、今度の横須賀中央店は面積30坪、席数45席のコンパクトな造りだ。厨房機器も数を整理し、これまで米国製ばかりだった機器の調達を国内製に切り替えた。「この店舗のカタチを丸々そのまま増やしていける」という「ローカライズ」を、横須賀出店を機に実現した格好だ。

「さいか屋 横須賀店」となりにオープンしたカールスジュニア横須賀中央店。米軍基地のそばとあって、昼どきは米兵で大にぎわいだ

11月30日にはお台場に5号店がオープン。こちらは「ダイバーシティ東京 プラザ」内の800席からなる巨大フードコートの一角を占める店舗だ。ところ変われば客層も店構えも変わる。似たような店舗を重ねず、各店それぞれに異なる目標やターゲットを持たせた出店をカールスジュニアは心がけているように思われる。名より実をとった展開だ。

「ブラザーズ」がハンバーガー業界に起こした革命

最後に、米国からの上陸組ではなく、国内のハンバーガー専門店がこの秋に起こした、日本のハンバーガー史上における「大事件」について触れておこう。

日本橋人形町の「ブラザーズ」(BROZERS')のことを知っている人も多いだろう。まだ都内にハンバーガー専門店が数えるほどしかなかった2000年、グルメバーガーの草創期にオープンした店である。人形町にレストランとデリバリー店の計2店、銀座の新富町に1店、江東区の東雲に1店と、これまで計4店を展開。また、ハンバーガーの優秀な人材を多数輩出していることでも知られ、ブラザーズでの就業経験をいかして独立したハンバーガー店の例が全国に20以上もある。カールスジュニアジャパンの森さんも実はブラザーズの出身だ。

そんなブラザーズがさる9月25日、5店目となる店舗を「日本橋高島屋 S.C.」新館7階のレストラン街にオープンした。これはすごい事件だ。日本を代表する百貨店のレストランフロアに「ハンバーガー」の専門店が入ったのである。それも大企業の経営でなく、個人経営からスタートした町場の小さな店が、ついに一流百貨店に店を構えるまでになったのだ。

2018年9月25日、日本橋高島屋S.C.グランドオープンに合わせて、S.C.新館7階にブラザーズ日本橋店がオープンした
店内は人形町本店と同じ、高貴でビビッドな「赤」で統一。本店と同じ全35品のバーガーメニューが本店と同じ値段で食べられる

「人形町今半」「すきやばし次郎」「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン」「帝国ホテル」など、そうそうたる店が名を連ねる中に「ハンバーガー」が並んでいることの意味。ついこの間まで1個100円の「おやつ」程度にしか思われていなかった「ハンバーガー」が、高級料理と肩を並べるに至ったこの事態は、まさに時代の変わり目、ものの価値観と既成概念が大きく変わった歴史的な瞬間である。

「高島屋」出店でハンバーガーは別次元に

高島屋ブラザーズの入り口にあるショーケースをのぞいてみると、「チーズバーガー」が1,300円(税抜き)、看板メニューの「ロットバーガー」は1,850円(同)とある。これは人形町の本店と全く同じ値段で、高島屋だからと言って特別高くしているワケではないのだが、いずれにせよ、こうした専門店のハンバーガーを一度も食べたことがない人からすると、ビックリするような値段に違いない。そこで、「高島屋」という名前が効いてくる……高島屋が選んだ店のハンバーガーなのだ、これぐらいの値段がするのはむしろ当たり前のことなのだ、と。

ショーケースにはブラザーズのハンバーガーを忠実に再現した食品サンプルが並ぶ

「高島屋」という名前が持つ信用と信頼が、その値付けの正しさを保証してくれる。1個千数百円するハンバーガーの存在を肯定してくれる。後押ししてくれる。そういうステージに、ハンバーガーとブラザーズはついに上がったのである。

フード、ドリンクを通じて唯一の日本橋店限定メニューである「バーガーサイド」(税抜き750円)はジンベースのオリジナルカクテルだ

今まで「高い」と思われていたものが、そう思われなくなる瞬間。今まで「安物」と思われていたものが、そうばかりではないと認識された瞬間。2018年の9月25日に起きたのは、そういう歴史的な出来事だった。これを機に、日本におけるハンバーガーの存在と位置は、今後ますます幅のあるものとなり、そして真の意味で、普段の生活や食事の中に浸み込んでいくだろう。日本のハンバーガーが、ブームから定着へと確実に向かっていることを示す出来事だと思う。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。