成長を続ける中国ファーウェイ、快進撃を支えるのは日本的品質の高さ?

成長を続ける中国ファーウェイ、快進撃を支えるのは日本的品質の高さ?

2018.12.04

中国ファーウェイが高級スマートフォンの新型を日本投入

コストパフォーマンスではなく、技術力・高品質にシフト

世界で急成長、日本市場でもアップルの牙城に挑戦へ

11月30日、中国ファーウェイの最新型スマートフォン「HUAWEI Mate 20 Pro」が日本市場に向けて発売された。それに先立つ28日にはメディア向けの発表会も行われたが、受付に長蛇の列ができるほど多くの記者が訪れていた。会場は結婚式場として有名な白銀台の八芳園。庭園の一部を貸し切って、実際にMate 20 Proを使った体験撮影会が行われるなど、同社日本法人のファーウェイ・ジャパンも力が入っていた。

Mate 20 Proの発表会にて。左から、安田美沙子さん、呉波さん(ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョン プレジデント)、皆藤愛子さん

これほどの注目を集めるのも無理からぬところではないか。2018年、ファーウェイのスマートフォン端末はグローバル市場、日本市場とも躍進を続けている。

・世界2位 世界スマートフォン市場 2018年第2・第3四半期
・日本1位 日本スマートフォン市場アンドロイド部門6~10月期(BCN調べ、キャリア・SIMフリーの類型)
・日本1位 日本スマートフォン市場前年同期比成長率(MM総研調べ、上位5社を対象にキャリア・SIMフリーの類型)

発表会の冒頭、ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏は、胸を張りつつ、この輝かしい数字を発表した。

アップル、サムスンの牙城を崩した中国スマートフォン

世界のスマートフォン市場ではファーウェイをはじめ、中国勢の快進撃が続いている。出荷台数上位10社のうち7社は中国企業だ。しかし、これまでは1位サムスン、2位アップルの二強は地位を守り続けてきた。今年、四半期ベースとはいえ、ファーウェイがアップルを抜き、2位となったことは“事件”と言える。2019年には年間ベースでも2位になる可能性が高い。

日本市場での成長はそれ以上の勢いだ。2017年はトップ5にすら入っていなかったにもかかわらず、今年はアップルに次ぐ存在感を示している。その原動力となったのがキャリア携帯の発売だ。ファーウェイは2017年時点でSIMフリー市場ではトップの座についていたが、携帯電話市場全体に占めるSIMフリーの比率は10%弱に過ぎない。飛躍のためにはキャリア携帯に採用されることが不可欠だった。

そして今年、ドコモがP20 Pro、ソフトバンクがMate 10 Pro、auがP20 liteとファーウェイ携帯を採用。これによりファーウェイは日本市場でも飛躍的に成長した。今回発表されたMate 20 Proは、その状況下におけるファーウェイの最新フラッグシップモデルだけに、注目を集めたのだ。

同機種は海外では一足先に販売されている。10月26日に発売となった中国では、予約開始からわずか8秒で1億元(約16億3,000万円)の売り上げを記録したという。ファーウェイのコンシューマー向け端末事業グループを率いる余承東氏は、中国メディアの取材に対し、Mate 20シリーズの出荷台数は2,000万台を超え過去最高を狙っていると話している。

コストパフォーマンスから技術力・高品質にシフト

ファーウェイの勢いを支えるのは技術力の高さだ。同社の基本方針を定めた「ファーウェイ基本法」では売上高の10%以上を研究開発投資にあてると規定していて、2017年は売上高の14.9%に相当する896億9,000万元(約1兆4,600億円)を拠出した。米コンサルティング企業Strategy&が出している企業研究開発費ランキング「Global Innovation 1000 study」を参考にすると、ファーウェイは非上場企業のためリストに掲載されていないが、2017年実績はインテルを上回り、マイクロソフトに次ぐ6位に相当する。ファーウェイの研究開発費はコンシューマーデバイスだけではなく、通信基地局設備や企業向け製品をも含んだものではあるが、アップルを上回る資金を開発に投じていることになる。

中国企業のスマートフォンはコストパフォーマンスが売りだが、その一方で初期不良率や故障率の高さなど品質面にはまだ課題も残る。ファーウェイはその弱点を、故障しても速やかに交換するといった割り切りで乗りきってきた。筆者にも印象深い実体験がある。中国の通販でスマートフォンを購入した時のこと、箱から出して携帯を手に取ると、カラコロと音がする。中の部品が固定されていないという、なんともお粗末な初期不良だ。クレームの電話を入れると、向こうも慣れた様子ですぐに対応してくれ、翌日には代わりの製品が届けられた。とんでもない初期不良という残念さと、急速なリカバリーとの双方を見せつけられた。

この「中国あるあるエピソード」だが、ことファーウェイは初期不良率が低いとの印象がある。現時点で初期不良率などのデータが出回っているわけではないが、クオリティ的に安心できるというイメージは確実にひろがっており、他の中国企業と比べればやや高い金額でも売れる要因となっているとみられる。

筆者は今年4月、広東省東莞市松山湖近隣にあるファーウェイのスマートフォン製造工場を訪問した。完璧に整理され高度に自動化された生産ラインもさることながら、それ以上に印象的だったのは壁に張り出されたQCサークルの活動報告だ。部品の置く位置を変える、棚の高さを変えるといった、ラインで働く作業員からの提案を取りあげ、現場の改善を進める活動だが、これまでの中国では見たことがない、まるで日本の工場のようなレベルで徹底されていた。毎月、日本から専門家を招き、QCサークルを含めた現場の改善の指導を仰いでいるという。

また余承東氏は2016年に日本メディアの取材に答え、同社のハイエンド・スマートフォンの部品は50~60%が日本企業から調達したものだとも明かしている。コストパフォーマンスは高いが荒さが目立つ中国流に対し、ファーウェイは日本的な品質の高さが売りというわけだ。

日本市場でもアップル対抗の急先鋒に?

今回発表されたMate 20 Proはそのファーウェイの集大成だ。前世代から75%ものパフォーマンス向上を果たした新型SoC「Kirin 980」が搭載されたほか、スマートフォンから他のデバイスに充電できるワイヤレス充電というユニークな機能も搭載した。

Mate 20 Pro

 

新機能で特に筆者が強く印象づけられたのは、超広角レンズとAI機能の進化だ。前モデルのMate 10 Proと同様、ライカブランドのトリプルカメラを搭載しているが、モノクロレンズが廃止され、代わりに2000万画素の超広角レンズ(16mm)が搭載された。ユーザーから強いニーズがあったために搭載したとの話だったが、標準の広角レンズと比べるとその差は歴然。他のスマートフォンとは違う写真が撮影できる。

左の写真は超広角レンズ、右は広角レンズで同じ場所から撮影。近距離でも石塔の全体が撮影できる

AI機能はできることが大幅に増えた。ユニークなのが画像認識機能だ。カメラで観光地を捉えるとその名称を表示する、食品を識別するとカロリーなど栄養成分を表示する機能がある。また、動画撮影時に被写体の人物だけが彩色され背景は白黒になるAIカラーなどシネマモードも搭載された(発売時には非対応。アップデートにより機能追加される)。これはリアルタイムで動画を処理できる強力なNPU(ニューロ・プロセッシング・ユニット)を搭載したことによるものだ。NPU自体はMate 10 Proから搭載されていたが、対応アプリが少なくその恩恵を感じられる機会は少なかったが、今回は活用の幅が大きく広がっている。

AIポートレートカラービデオのデモ

Mate 20 ProはSIMフリー機が主要MVNO、大手家電量販店で販売されるほか、キャリアではソフトバンクが取り扱う(12月7日午前10時予約開始)。SIMフリー版はトワイライト、ミッドナイトブルーの2色。ソフトバンク版はブラック、ミッドナイトブルーの2色というカラーバリエーションだ。なおソフトバンク版はプレインストールアプリが異なるほか、デュアルSIMに対応していないなど仕様の違いがある。

前述のとおり、2019年には年間ベースの出荷台数でアップル超えを実現する可能性が高い。「量」に続いて求められるのは「単価」の向上だ。高価格のハイエンド機ではアップルの独壇場が続いている。10万円を超える価格帯でもユーザーの支持を取り付けられるのか。Mate 20 Proは今後のファーウェイの戦略を担う機種と言えそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu