アパレルがなぜ、ハンバーガー店を仕掛けるのか - UMAMI BURGER上陸の背景に迫る

アパレルがなぜ、ハンバーガー店を仕掛けるのか - UMAMI BURGER上陸の背景に迫る

2016.07.26

海外勢の上陸が相次ぎ、盛り上がりをみせる日本のハンバーガー市場に、新たなプレイヤーが参入を表明した。“旨み”を前面に打ち出すロサンゼルス生まれのバーガーショップ、その名も「UMAMI BURGER(ウマミバーガー)」だ。日本展開に取り組むのは、アイウェアや下着の輸入・販売を本業とするメディロスホールディングス。一見すると結びつかない両者だが、なぜ手を組むことになったのだろうか。

ブレイク確信で日本上陸を提案

ウマミバーガーは2009年にカリフォルニア州ロサンゼルスで1店舗目をオープン。これまでに5つの州で計24店舗を展開している米国のハンバーガーレストランだ。創業者のアダム・フライシュマン氏は、甘味、酸味、塩味、苦味に続く5つめの味として日本の科学者が提唱した「旨み」に着目し、こだわりの食材と調理法でウマミバーガーを作り出した。

牛肉、チーズ、トマト、マッシュルームといった食材と、昆布、醤油、ホイセン(海鮮醤)、干しキノコなどを調合した調味料を使用し、旨みを引き出して作り上げるウマミバーガー。米国版GQの「2010年のベストバーガーオブザイヤー」や、タイム誌の「史上、最も影響力のある17のバーガー」などに選出されている

「日本で確実にブレイクすると思った」。メディロスホールディングス代表取締役のスティーブン・メディロス氏は、ロサンゼルスで初めてウマミバーガーを食べた当時をこう振り返る。米国人の父親と日本人の母親の元で育った同氏は、「日米双方の良さ」(以下、発言はメディロス氏)を兼ね備えたウマミバーガーに惚れ込み、約2年前に日本展開を持ちかけた。

日本への“凱旋”は創業者の悲願

ウマミバーガーには他国からも引き合いがあったようだが、「旨み」のルーツである日本への“凱旋”を望んでいた創業者のフライシュマン氏は、同社初の海外展開先として日本を選んだ。旨みの本場に挑戦する今回の出店については「(米国のウマミバーガーもメディロスホールディングスも)絶対に成功させたいと考えている」という。

日本1号店は2016年秋~冬にオープンの予定。店舗の立地については関東圏とだけ発表されており、詳しい場所については「楽しみにしておいて」とのことだった。その後の計画としては、2020年までに10店舗を出店する方針。「(日本の)皆に食べてもらいたい」との言葉から考えると、2店目以降の出店場所は首都圏に限らないようだ。出店形態も様々な形を選択肢に入れて検討している模様。

アイウェア、下着、ジュエリーなどの輸入・販売を手掛けるスティーブン・メディロス氏。ウマミバーガーに可能性を感じ、初挑戦となる飲食業への参入を決めた

世の中にあるハンバーガーは多種多様だが、なかなか予想外の味には出会えないもの。こう考えていたメディロス氏も、ウマミバーガーを食べたときには「(従来のハンバーガーとは)全然違う」との感想を抱いた。6オンス(約170グラム)もあるビーフパテであっても、食べたときに「軽く感じた」という同氏は、初来店でハンバーガー2個を平らげたという。この味を日本に持ってくるにあたり、現在は各方面の準備を進めているところだ。

ステーキ店レベルの牛肉も手配完了!

ウマミバーガーがパテに使用するのは、「ハイエンドで、ステーキハウスで(出されて)も不思議ではないような」米国産ブランド牛だ。複数の部位をブロックで仕入れ、店舗でミンチにする。メディロス氏が「軽く感じた」と表現したようなフワッとした食感は、上質な肉を店舗で挽くことで生まれるのかもしれない。

パテに使う牛肉のなかには、人気が高く、ほとんどが米国内で消費されてしまう部位も存在する。日本での出店で気になるのは仕入れ面だが、メディロス氏は「(食材のなかで)日本に合うもの、合わないものは考えるが、(パテに使う牛肉の輸入も含めて)ベースとなるものは全て手配できた」と自信を示した。ハンバーガーの肝となるパテを再現する体制は整ったとみてよいだろう。

日本でウマミバーガーの美味しさを再現するには、調理スタッフの確保も重要な要素となる。メディロス氏は日本からシェフを米国のウマミバーガーに派遣し、2カ月半に及ぶトレーニングを受けさせる方針だ。この期間中、米国ではウマミバーガーのシカゴ店がオープンするが、派遣するシェフには同店の開業にも立ち合わせて経験を積ませるという。同氏によると、これだけの期間をシェフの訓練に充てるのは、外資系レストランの日本進出案件であっても異例とのことだ。

日本の“肉市場”を取り込めるか

ウマミバーガーの味に惚れ込み、この味を日本に広める準備に余念のないメディロス氏だが、外資系バーガーショップの上陸が相次ぎ、「ハンバーガー戦争」とでも表現したいような状況にある日本市場で勝負することについてはどのような考えを抱いているのだろうか。「グルメバーガーブームはチャンス」と語る同氏は、既存バーガーチェーンや新興グルメバーガー勢は競合相手だと認めつつ、勝負を仕掛けるのはもっと広い市場だという認識を示した。競い合う相手は“肉”にこだわる全てのレストランだ。

ウマミバーガーではクラフトビールやカクテルなどのアルコールも提供しているが、肉の美味しさもあってか、米国ではワインを飲みながらハンバーガーを食べる客も多いという(画像はオークランド店。奥にバーカウンターが見える)

創業者のフライシュマン氏がウマミバーガーを開店したのはリーマンショック後のロサンゼルス。不況のなかで、ウマミバーガーは高級ステーキハウスの代替としても顧客を惹きつけた。つまり、ウマミバーガーは開店当初から、肉にこだわるステーキハウスとの競合を経て発展してきたバーガーショップなのだ。“旨み”を前面に打ち出すビーフパテは、美味しい肉を求める日本人のニーズにも響く可能性がある。

出店場所によって表情を変えるウマミバーガー

「(ハンバーガー好きのみならず)全ての“肉好き”な人」に来店して欲しいというウマミバーガーだが、ファンを獲得するには味以外の部分、例えば店舗の雰囲気なども重要な要素となる。

「様々なシーンに合う」。メディロス氏が語るとおり、ウマミバーガーは立地や顧客の利用シーンなどに合わせて店舗の雰囲気を変える。米国の既存店も、各店が異なるテーマを打ち出して、来店者に独特の体験を提供している。例えばラスベガスの高級ホテルではフルダイニングのラグジュアリーな店舗を運営している一方、ショッピングモールではファミリー向けの大型店を展開しているといった具合だ。

店舗によってはDJブースやビリヤード台などを設置する遊び心もウマミバーガーの特徴。カリフォルニア州アーバインではクラブの隣接地に出店し、内装を含めナイトシーンを意識した店作りを行っている。ウマミバーガーは場所によっても時間帯によっても表情を変えるバーガーショップなのだ。

店舗によって異なる表情を見せるウマミバーガー。ファストフードと違うのは、席についてから注文するスタイルを取り入れているところだ。ワイン片手にゆっくり過ごしてもよし、ハンバーガーだけを味わいに訪れるもよしといった店作りが特徴といえる(画像はアーバイン店)

日本1号店のテーマ設定については、「物件次第で、そこに合ったコンセプトで作り上げる」とのこと。場所柄によってカラーを変えるウマミバーガーだけに、日本上陸の場所については詳細な検討を行っていることだろう。日本1号店の場所は9月頃に発表する予定だという。

日本展開に生かす異業種ならではの目線

日本でブレイクするとの直感のもと、ウマミバーガーの日本展開に乗りだしたメディロス氏だが、同氏が手掛けてきたビジネスは、アイウェア、下着、ジュエリーなどのファッションブランドを日本に広めること。初めて飲食業に参入することに不安はないか聞いてみると、今回の案件には既存事業で培ったノウハウが活用できるとの答えが返ってきた。

ファッションブランドであろうが飲食店であろうが、日本に持ってくる際に活用できるブランディングのノウハウには共通する点が多い。メディロスホールディングスの関連会社では、アイウェアなどの店舗を運営しているため、顧客に「場を楽しんでもらう」接客術にも知見がある。米国のウマミバーガーで行っている「フレンドリーな接客」を日本でも展開できないか、メディロス氏は考えを巡らせているところ。接客面で日米双方の良さが融合すれば、日本の店舗では、本国とは違った独特の雰囲気が育っていくかもしれない。その雰囲気が、米国からやってくるウマミバーガーファンを惹きつける可能性も十分にありそうだ。

異業種から飲食業に挑戦することにはメリットもあるとメディロス氏は指摘する。衛生面を含む品質管理に、エンドユーザーとしての視点を持ち込むことができるからだ。ウマミバーガーで提供するのは、「自分が安心して食べられるもの」だと同氏は強調する。

品質の高い肉、旨みを引き出す独特の調理法、雰囲気のある店舗…。様々な要素からなる「UMAMAZING(旨みとアメイジングを掛け合わせた造語)な体験」を日本でも広めたいとメディロス氏は語る。ますます競争の激しくなる日本の外食市場だが、バーガーファンのみならず“肉好き”をも取り込みたいとするウマミバーガーが、どれだけの存在感を示せるか。試金石となる日本1号店の評判に注目したい。

携帯キャリアの概念を覆す― 「遅れた挑戦者」楽天が見出す勝機

携帯キャリアの概念を覆す― 「遅れた挑戦者」楽天が見出す勝機

2019.02.22

第4のキャリア・楽天の携帯インフラの全貌が見えてきた

三木谷社長は「これまでの携帯キャリアを根底から覆す」と強気

レガシーにとらわれない技術が後発の強みか

楽天は今年10月の携帯キャリア事業サービス開始に向け、着々と歩を進めている。2018年11月にはKDDIとローミングで提携し、2019年1月には関東などで4G無線局の包括免許を取得。2月に入ってからは「完全仮想化」したというネットワークの全貌が明らかになってきた。

2019年10月に楽天は携帯キャリア事業に参入する

大手キャリアから帯域を借りるだけのMVNOとは異なり、携帯キャリア事業では日本全国のネットワークを楽天が自ら構築する必要がある。無謀な挑戦との声もある中で、楽天が勝機を見出した根拠を探っていく。

後発の強みを活かし、クラウドや仮想化技術を全面活用

楽天が構築を進める携帯インフラの全貌が明らかになってきた。2月3日には二子玉川で実証実験を成功させ、2月20日には都内に試験施設「楽天クラウドネットワークラボ」を設立。2月25日に始まるモバイル業界最大の展示会「MWC 19 Barcelona」にも出展するなど、動きが加速している。

その中でも、楽天が特に強調しているのが「世界初」をうたう完全仮想化ネットワークだ。楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長は、「これまでの携帯キャリアの概念を根底から覆す」と豪語する。

楽天が設立したラボについて語る三木谷浩史社長

どこが革新的なのか。それは、従来の携帯キャリアが高価な専用ハードウェアを使ってきたのに対して、楽天が専用ハードウェアの機能をソフトウェアで実現し、安価な汎用ハードウェアで動作させる方式を全面採用した点にある。

高価な専用ハードの機能をソフトウェアで実現

また、この手法にはコスト面以外にも、ソフトウェアの更新による機能追加が容易になり、性能向上のためにスケールさせやすいなどのメリットがある。IT企業では当たり前のように使われてきた技術だが、携帯キャリアでは構造的、技術的な問題で難しかったと三木谷氏は説明する。

今、大手キャリアは5G対応を視野に入れ、クラウドや仮想化技術を積極的に採り入れている。だが、3Gや4Gのために構築してきたレガシーインフラも大量に存在しており、改修のためには多大な設備投資が必要だ。

これに対して携帯キャリアをゼロから立ち上げる楽天は、5G時代を前提にインフラを構築し、そこに現行の4Gを載せる形を採っている。過去のしがらみにとらわれず最新技術だけを惜しみなく投入できることが「後発の強み」というわけだ。

迅速な機能改善で「長時間の通信障害」とは無縁?

楽天が構築したネットワークの特徴は、新たに設立した「クラウドイノベーションラボ」にも現れている。まず、雑居ビルの1フロア程度の広さのラボに入って驚いたのは、「使われているハードウェアがシンプル」という点だ。

携帯キャリアを実現するための機能はソフトウェア化されており、目には見えない。一方のハードウェアは普通のデータセンターで使われる汎用品で構成されており、その大半を占めるインテル製のCPUを搭載したサーバーは、技術的には家庭用PCの延長にあるものだ。

PCサーバーやイーサネットスイッチなど汎用ハードウェアを活用

ラボ内には携帯キャリアのすべての機能を再現しており、基地局設備も用意されていた。これらも仮想化技術によってシンプルな構造で小型化されており、他キャリアのアンテナよりもビルの屋上などに設置しやすいという。

基地局設備は他キャリアよりもシンプルで設置しやすいとする

もう一つの特徴が「テストの自動化」だ。シスコなどの機器ベンダーの海外拠点と直結し、できあがった新機能を自動的にテストして運用環境に提供できる体制を整えた。これはIT企業が採り入れる最新の開発手法を、携帯キャリアのインフラに持ち込んだものといえる。

IT企業のソフトウェア開発手法を採り入れたテスト自動化も

消費者にとってのメリットはどこにあるのか。楽天の説明では、他キャリアで発生したような長時間の通信障害は起きないという。問題が起きた場合にはすぐに対策済みのソフトウェアをテストし、アップデートにより問題を解決できるというのがその根拠だ。

また、すべてがソフトウェアで動いていることから、ユーザーが求める新機能をタイムリーに提供できることもメリットだという。5Gが主流になる数年後までには他キャリアも追いついてくることは間違いないが、しばらくは楽天に優位性がありそうだ。

世界初の試みが多いだけに、実際にうまくいくのか不安を感じる部分はあるものの、挑戦者である楽天が他のキャリアの真似をしても勝ち目は薄い。過去のしがらみにとらわれない最新技術で固めた携帯キャリアとして、10月のサービス開始が楽しみになってきた。

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中小企業の「後継者問題」は深刻、M&A仲介のストライクがビズリーチと新サービス

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2019.02.22

M&A仲介のストライクと人材サービスのビズリーチが連携

買収企業の経営幹部採用支援を目指す

「団塊世代」の退職に伴い、M&Aは年々拡大している

労働需給がひっ迫が、企業買収の世界でも課題になることが増えている。企業を買収しようとしても、その企業を運営していく人材を確保できずに買収を断念するというケースが目立つのだ。

そこで新たな取り組みとして、M&A(合併・買収)仲介サービスのストライクと人材サービスのビズリーチが連携し、買い手企業に対して、買収した会社の経営者や経営幹部の採用を支援するサービスを開始した。両社はM&Aと人材サービスの相乗効果により、より円滑な企業買収を促す。

ストライクは後継者不在に悩み引き取り手を探す企業経営者と、規模の拡大を目指し事業を獲得したい企業をマッチングするM&A仲介サービスを展開している。ビズリーチは経営幹部などハイクラス層に特化した人材サービスを手掛ける。両社の連携により、買い手企業は、その獲得事業の運営に必要な経営幹部を効率的に採用できる。

中小企業で深刻化する後継者不足問題に一石

両社の取り組みの背景には、中小企業の後継者不足問題がある。

経営者が親族に事業を引き継いでもらいたくても、子供は都会で会社勤めをしており、実家に戻って家業を継ぐ気がないといったケースは多い。今後本格化する、第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊世代」の大量退職も問題に拍車をかける。複数の要因が重なってしまう結果、中小企業では事業をどう次世代に伝えていくかが喫緊の課題となってしまっている。

経済産業省・中小企業庁らによれば、中小企業の経営者の年齢分布で最も多い層は2015年時のデータで66歳だ。これは20年前の47歳から大幅に上昇した。今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人が後継者未定とされている。

日本の企業数は約400万社といわれるので、127万人というのは実に全体の3分の1相当の企業が後継者問題を抱えることになるという計算だ。ある調査によれば、仮に現状を放置すると、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるともいわれる。

なお、ストライクが中小企業経営者の妻100人に「将来残されて困る資産」を調査したところ、最も多かった解答は「経営する会社の自社株」で、その解答割合は38%にものぼったという。近年はM&Aが中小企業の後継者不在問題の解決に向けた選択肢の1つになりつつあり、同市場は毎年2~3割拡大している。

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