なぜLINEに日米同時上場が必要だったのか

なぜLINEに日米同時上場が必要だったのか

2016.07.27

LINEは15日、東京証券取引所市場第一部に上場した。米国時間14日には、ニューヨーク証券取引所にも上場しており、日米同時上場を果たした。今回の件は大きな話題を集めたが、そこには1つの素朴な疑問が残る。アジアの重点国に注力しているLINEがなぜ米国で上場する必要があったのかだ。

LINEの重点地域

LINEが目下、注力しているのは、日本、タイ、台湾、インドネシアだ。全世界の月間アクティブユーザー2億1800万人(2016年3月時点)のうち、この主要4カ国だけでMAUは1億5200万人と全体の約7割を占める。日本、台湾、タイではMAUが1位、インドネシアは1位ではないものの、上位に位置づけられている。

主要4カ国で月間アクティブユーザー(MAU)は全体の約7割を占める

LINEは全世界をターゲットにユーザー獲得にまい進していた時期もあったが、世界各国でシェアナンバーワンを狙う陣取り合戦はほぼ終わりを迎えており、2015年あたりを境に戦略を転換。選択と集中を進め、主要4カ国でのユーザー数を伸ばし、マネタイズを図った。あるひとつの国・地域において、ナンバーワンのユーザー数、もしくは上位を保つことが最重要なのがメッセージングサービスの世界だ。友達が友達を呼び、ビジネス基盤は強化される。逆に人がいなければ、マネタイズはおろか、使われないサービスとなってしまうというわけだ。

LINEは上場後も、今後もこの主要4カ国に力を入れていく。上場により得た資金をもとにターゲット市場でのユーザー獲得とマネタイズを進めていく。主要4カ国の合計人口は約5億人であり、そのうちの70%以上80%くらいまではユーザーを伸ばせるという見立てだ。その後は、主要4カ国以外の東南アジア各国、中東などの地域を狙っていく。

主要4カ国でのユーザーの獲得とエンゲージメントの強化、サービスの拡充とマネタイズを進め、タイミングを見計らってその他の国を狙っていく

さて、こうしたLINEの戦略を踏まえたうえでひとつ大きな疑問が残る。それは、なぜ米国で上場したのかだ。日本はLINE発祥の国とされ、ユーザー数も多く、売上も多い。資金調達を考えた場合に、東京証券取引所が選択肢あがるのは自然な流れだ。

しかし、先にも説明したように、LINEは米国を直近のターゲットエリアとしていない。メッセンジャーアプリの王者、フェイスブックの牙城を崩すために米国で上場したというのであれば納得できるが、米国市場はそもそも狙っていないのだ。

米国でのプレゼンス

「米国でのプレゼンス向上が目的」と出澤代表

その理由について、上場記者会見に臨んだ出澤剛社長は「世界のユーザーにLINEを知ってもらう。その決意の表れ。プレゼンス(存在感)を上げるのが重要だと思っている」と話す。

プレゼンスの向上が目的――。これは納得できそうで、理解できない回答だ。米国での存在感向上と直近のLINEの戦略を結びつけることはできないからだ。LINEは主要4カ国(日本、台湾、タイ、インドネシア)へのユーザー獲得とマネタイズ化を進めており、中期的に見ても、米国への進出については何も明言していない。

その点について出澤氏は次のように説明する。「アジアはグローバルで熱い視線を浴びている。特にインドネシアはどの会社もフォーカスしている国だ。USマーケットでも様々な情報が流通している。そして、今後の投資先はアジアだけではない。データやAI技術を考えた場合に世界中の会社がパートナーになる。その点において、最先端の米国で接することは重要だ。さらに我々の競合はITジャイアントのフェイスブックやグーグル。こうした会社と同じ競争環境のなかで戦っていくことは重要だと思っている」(出澤氏)。

同氏の発言で重要なのは、後者の技術に関する下りだろう。メッセンジャーアプリはこれまで人と人のコミュニケーションツールに過ぎなかった。それが、今や最先端技術を取り込み、あらゆるサービスを展開しようとしているからだ。LINE自身、これまで人と人を結びつけるコミュニケーションツールの提供を行ってきたが、今では、人と人だけではなく人とモノをつなげる「Closing the distance」という標語を掲げているくらいだ。

メッセンジャーアプリのトレンド

人とモノを結びつけるメッセンジャー。それが今後のトレンドになっていく。メッセンジャーアプリは多くの人が日々、接する存在であり、スマートフォンにおけるポータル的存在になりうるものだ。メッセンジャーがポータルになるならば、そこでユーザーの望みを解決してあげたらいい。そこにビジネスの種があるわけで、フェイスブックも同じことを考えている。

そうしたユーザーの願望を高精度で解決しうるのがAIである。AIを取り込むことで、データをもとにしてピンポイントの回答、ピンポイントの広告やサービスの提示が期待できる。天気や気温といった情報を取得したり、個人の趣味嗜好にあった商品の販売やサービスを提供したりすることを目指している。

フェイスブックの開発者会議ではメッセンジャーアプリでの買い物支援について言及された

今やメッセンジャーアプリとAIは切り離すことはできない。それはLINEも同じである。こうした流れからすれば、出澤氏が「データやAI技術を考えた場合に世界中の会社がパートナー」になるとコメントしているように、米国の上場はAI分野における事業提携や企業買収なども十分にあることを示す強いメッセージと捉えてよさそうだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。