日本の未来を漠然と描いた「創造社会」に思うこと

カレー沢薫の時流漂流 第18回

日本の未来を漠然と描いた「創造社会」に思うこと

2018.12.03

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第18回は、経団連が発表した「創造社会」行動計画について

何かデカいことを成し遂げたい「第5の社会」

経団連は、日本の社会が目指すあるべき姿を「創造社会」と名付け、その実現に向けた行動計画をまとめたそうだ。(編集注:経団連発表の資料内13Pに「創造社会」の記載あり

まず「創造社会」というネーミングから新しい臭いがまったくしないとゲンナリするかもしれないが、これを「そうぞうしゃかい」と読んだ奴はセンスがない。これは「創造社会」と書いて「Society5.0」と読むのだ。まさに人名ですら字面通り読めなくなっている現代日本にふさわしい方針である。

ではわが日本が目指す「創造社会(Society5.0)」とは何かと言うと、私が前に連載していたコラムで1回取り上げたことがあるのだが、もちろん忘れているので今一度読み返してみたところ「Society5.0のことをまったく理解できないまま書いたんだろうな」ということだけはわかった。

私の理解力が低いこともあるが、Society5.0というのは概要を見ても「イマイチ何をするのか良く分からない」のである。いろいろやろうとしているのはわかるが、具体的に何をするかわからない。総じて「何かデカいことをやろうとしている大学生」感がある。

まずSociety5.0の名前の由来だが、今まで日本は狩猟、農耕、工業、情報と4段階の社会の変遷を経験してきた。これらに続く5番目の社会が「創造社会」というわけである。

狩猟や農耕に比べて創造というのはあまりにも漠然としているので、その内容がうすらぼんやりしているのも致し方なし、と言ったところであり、実際具体的に何をするかは「今後発表」だそうだ。

何をするか決まってから発表した方が良かったのではないかとも思うが、同人誌だって「新刊出します」と発表することで後に引けなくなって新刊が出たりするのだから、「まずデカいことを言う」のは大事なことである。

ともかく「AI」とか「IoT」とかデジタル技術は大きく革新しているので、それをどう生かしていくかという人々の「創造力」が、いま日本にある課題を解決する鍵になるということらしい。

だが、そこに出てくる具体的な例が「3Dプリンター」など、「若干情報が古い」もしくは「既出」なため、この創造社会に対し世間は「期待薄」という反応のようだ。

カレー沢薫、創造の前に「想像」する

このように、創造社会それ自体が「これから創造します」という感じなので、こちらもあやふやなコメントしかできないのだが、人様が考えたことについて「そんなのフォトショップで描いた餅ですよ」と文句をつけるのは、意識の高い小学5年生でもできる。

貴様の住んでいる日本のことなのだから、ダメ出しするだけではなく、お前も「創造しろよ」という話だろう。そういうわけで、今後日本のために個人として何ができるか、創造の前に想像してみることにした。

今の日本が抱えているのは、何をおいても「少子高齢化による労働力不足」である。それに対する解決策として「AI」や「ロボット」には大きな期待が寄せられ、実用化もされているようだが、ロボットなど未だに「二足歩行で拍手喝采」の域なので、これから需要がさらに増えるであろう「介護」などをAIやロボットが完全に行うのはまだ先だろう。

また介護ロボットが実現化しても、何せロボットなので、ご老人の顔に機械的にウエットティッシュを押し付け続けているという事故も起りかねない。つまり人の手は必ず必要なのだ。

その「人の力」が最小限で済むようにAIの活用が肝になるのは確かだが、AI技術の開発に自分が何か役に立てるかというと、AIの基盤組み立て工場で働く以上は無理な気がするし、それすら今はAIがやっているのかもしれない。ともかく、技術開発はできる人に任せておくのが無難だろう。

また、ロボットやAIが進化するまでの間、人間の労働力は必要になるが、人はすぐに増えない。今の日本は出産・育児が大変であり、「増やしやすい環境」とは言えないので、少子化もすぐに解決するとはとても思えない。よって「外国人労働力」はすでに不可欠なものとなっている。

そこでまず、「英語を勉強する」というのはどうだろうか。バカバカしいことを言っているかもしれないが、日本語が不自由な店員に「日本語が喋れないなら日本に来るな」と罵倒する日本人もいるという。しかし、今の日本は外国人に来てもらわないと社会が回らなくなりつつあるのだから、逆にこっちが一番使用頻度が高いであろう英語を覚えるぐらいの姿勢を取った方がいいのではないだろうか。全世界で通じる言語を網羅したいという人は、「ボディランゲージの精度をキレキレにする」というのもある。

外国人労働力の受け入れに関しては、文化の違いなどによるトラブルや治安の悪化が懸念されているが、意志の疎通さえできれば、それも減るはずである。

しかし、私は今ひきこもりで人とまったく喋らないので日本語すら忘れつつあるし、それでなくても生活に精一杯でそんな余裕はない、という人も多いだろう。

もっと、金も頭も時間もないボンクラでも、日本のためにできることはないだろうか。それが一つだけある。「不便を許す」ことだ。

今の日本は、コンビニが24時間開いていて、amazonでポチった商品が次の日に届く便利な世の中である。その便利さを維持する労働力がもうないと言うなら、それに対して何もできない人間は「不便を受け入れる」しかない。

「コンビニは20時に閉めます」と言われても文句を言うのではなく、「よしわかった仕方ない」と言うのが、無力な自分にできる唯一の日本への貢献だ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
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