セーラームーン20周年がビジネスで成功した理由

セーラームーン20周年がビジネスで成功した理由

2016.07.27

90年代に社会現象にまでなった「美少女戦士セーラームーン」。20年以上たってブームが再燃。先日まで開催されたセーラームーン展は30万人が訪れた。セーラームーン20周年プロジェクトはなぜ成功し続けているのか。

来場者数30万人を突破したセーラームーン展

6月14日(火)、開場前のチケット売り場は、すでに100人以上の人で埋め尽くされていた。多くは大人の女性客で、中には3世代で来ているグループ、外国人グループなども見られ、今か今かとはやる気持ちを抑えながらチケット購入の順番を待っていた。

6月14日午前9時50分ごろ

「武内先生が六本木でやりたいというこだわりをお持ちだったので」と打ち明けるのは、講談社の小佐野文雄氏。小佐野氏は連載当初から美少女戦士セーラームーンの編集者として漫画家・武内直子氏と二人三脚で作品作りに携わってきた。20周年プロジェクトの中心人物の1人だ。

セーラームーン20周年プロジェクトの中心人物の1人、講談社の小佐野文雄氏

少女の“DNA”に刷り込まれたセーラームーン

セーラームーン20周年プロジェクトは、当初2つのターゲットに向けた戦略を描いていた。セーラームーン連載時に少女だった現在20代後半から30代前半の女性と、当時一定数いた男性「オタク」層の2つだ。当時の「なかよし」は約200万部売り上げていたが、そのうち約10万部は男性読者だった。今40~50代くらいになった男性層については、20年経って帰ってこなかったそうだ。しかし一方で女性層の反応は予想以上だった。

小佐野氏によると、今回のセーラームーン展の来場者層を見ていて、女性層の中で最もセーラームーンが受けているのは、アニメやマンガに常日頃から親しんでいるコアな層ではなく、もっとライトな層だったことが分かったという。ライト層とは、ファッションや映画などと同じくらい興味があるものの中にマンガ、アニメが入ってくる層、そして大人になってマンガやアニメを観なくなった層。この2層がセーラームーンに帰ってきているのだという。小佐野氏は「当時少女だった女性達は小さいころに身につけていたというか、DNAに刷り込まれていたという感じを受けるくらい」と。“DNAレベル”、その世代のアイデンティティへの刷り込みをこう表現した。

ライト層が帰ってきているとの実感は、グッズの売れ行きに顕著に出ている。セーラームーン展のグッズ売り場には、限定グッズに加え、会場外でも買えるものもそろえているが、そういったものの売れ行きがよく、興味の1つとして認識しているライト層が、展示をきっかけにグッズの存在に気づいたのだとみているという。

6月14日午前11時半ごろ。グッズ売り場に入るための列

美少女戦士セーラームーンとは

1992年のマンガ連載開始とほぼ同じ時期にアニメ化された「美少女戦士セーラームーン」。5年間にわたるマンガの連載で全18巻の総発行部数は1200万部、連載していた当時には、「なかよし」の発行部数を史上最高の205万部に押し上げる人気の高さを誇った。その後ミュージカルにもなり、キャラクターグッズでは1000億円以上も売り上げたという。人気は国内にとどまらず、17言語以上に翻訳され、翻訳版のマンガは700万部以上売り上げた。アニメについては今までに50カ国以上で放映されている。マンガからアニメ、実写、ミュージカルとメディアミックス成功の先駆けとなった作品だ。

伝説はここから

1991年12月、「なかよし」で連載が始まり、その直後にテレビ朝日系でアニメの放映が始まったセーラームーン。原作が1年以上続いた後にアニメ化されるのが通例となる中、異例の展開だった。1991年6月に「なかよし」別冊の「るんるん」に掲載された武内直子氏の読みきりマンガ『コードネームはセーラーV』を読んだプロデューサーからオファーがあったことからアニメが誕生した。

原作の1話をカラーにして展示している部屋。美少女戦士セーラームーン展

後に5年間も放映されることになったセーラームーンだが、当時は読みきり1本しかなく連載用のストーリーも決まっていない状態。翌年3月にスタートするアニメは、9月にはプロジェクトがスタートしないと間に合わない。このため、9月までに恋愛要素などを追加してストーリー作りを間に合わせた。しかし、キャラクターが固まったのはさらに後で、最終的に原稿があがったのが11月の終わりだったという。

セーラームーンチーム再集結の理由

セーラームーンは90年代、原作の講談社、アニメの東映動画(現 東映アニメーション)、玩具のバンダイと3社がチームになって動いたという。アニメ化するとそれにあわせてグッズを出すが、セーラームーンに関しては、原作とアニメがほぼ同時だったこともあり、どんなグッズを出すかということを見越して原作のアイテムを考えたり、一緒に作ることができたりしたのだそうだ。これが効を奏し、変身グッズなどがヒット、総額1000億円もの売り上げにつながった。

「20周年の1年前の2011年くらいからなにかやりたいという声が方々から出てきた」という20周年プロジェクト。前述の3社に加え、音楽はキングレコード、ネット配信にはドワンゴの5社体制でスタートさせた。

「世代も変わっているので、準備に1年かかり、始動したときにはすでに1年ずれてしまっていた」と手探りでスタートしたプロジェクト。商品化を皮切りにミュージカル、新作アニメと次々にプロジェクトを始動させた。

特にセーラームーンの復活を印象付けたのは玩具を模したフェイスパウダーだったという。少女から大人の女性になった世代に向けて化粧品にしようと作ったコンパクト。大人でも納得する品質のものをと有名な化粧品ブランドと同じメーカーで中身を作るなど、品質にもこだわった商品となった。バンダイがネット通販限定で販売を開始すると、当初の計画の10倍を売り上げだという。

2013年に発売し爆発的に売れた「ミラクルロマンス シャイニングムーンパウダー」※すでに販売終了。(c)武内直子・PNP・東映アニメーション

さまざまな企業とのコラボレーションを実現しているセーラームーン20周年プロジェクト。今までに多くの企業とグッズなどでコラボレーションしているという。実は、ここに面白い現象が起きている。

広がる企業とのコラボ

コラボレーションについては、商品化や新作アニメがスタートしてから問い合わせが多くくるようになったという。「企画を持ってきてくださるのは大体セーラームーン世代の女性社員の方です。各企業にセーラームーンをみて成長してきた女性が、戦力として育っている。ありがたいことです。そういう方々はどんなに自分がセーラームーンを好きかという思いを込めてくれるので、『この人に任せれば大丈夫』って」。ちなみにプロジェクト本体にもセーラームーン世代の女性が多く、彼女たちのアイデアがグッズなどに生かされているという。これほどまでに“好き”という熱量でできる事業はそうないだろう。「DNAに刷り込まれている」といった小佐野氏の言葉も頷ける。

大成功のまま走り続けているようにみえるセーラームーンプロジェクトだが、小佐野氏によると今までに読み違いもあったという。「最初の頃は過去のデータがなかったので、失敗も多かったのです。今だとデータが積み上がってきているのである程度わかるようになりましたが、それでも読み違えは起きますよ」と。“ファンの乙女心をいかに読み解くか”がこのプロジェクトのキモといえよう。

「これからもずっと愛されるキャラクターにすることが目標」と小佐野氏。20周年の記念本の出版が予定されている。マンガ、アニメ、ミュージカル、商品化、そして今回のセーラームーン展の内容などを盛り込んだまさにメモリアルブックとなる予定。さらに来年には25周年を迎えるため、海外でのイベントなども検討中とのことだが、詳細はまだ言えないという。ますます目が離せない。

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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