ブランドではなく“ブランディング”に焦点を当てたアワードとは

ブランドではなく“ブランディング”に焦点を当てたアワードとは

2018.11.28

日本初となるブランディングを評価するアワード授賞式

ブランディングの取り組みを外部から見極める難しさ

受賞した企業がどのようなブランディング活動を行ったのか

インターブランドジャパンが、ブランドの価値ではなく「ブランディング活動」にスポットを当てた「Japan Branding Awards 2018」の結果発表を行った。

日本で初めてとなるブランディングのアワード

これまで同社は「財務力」「ブランドが購買意思決定に与える影響力」「ブランドによる将来収益の確かさ」を指標化し、ブランドの価値を金額に換算。それを「Best Global Brands」と銘打ってランキング形式で発表してきた。ちなみに2018年10月に発表されたランキング上位5は、1位:Apple(214,480 US $ million)、2位:Google(155,506)、3位:Amazon(100,764)、4位:Microsoft(92,725)、5位:Coca-Cola(66,341)だった。気になる日本企業のトップは7位:Toyota(53,404)で、全世界のクルマメーカーでトップの座を死守した(資料が掲示されている2010年からクルマメーカーのトップ)。

では、Japan Branding Awardsの評価基準はどこにあるのか。それは「ブランド力を育てる手法」にある。前述の金額換算によるランキングでは“グローバルに展開する”“資本力が強い”“多くの消費者に認知されている”といったことがランキングに直結し、AppleやGoogle、Amazonといった超大企業が常に上位を独占してきた。

だが、そうした大企業ではなくても、優れたブランドを有する企業はあまたある。そこで、企業のブランディング手法に焦点を当て、アワードというカタチで評価しようというのがJapan Branding Awardsで、日本では初の試みとなる。

このアワードの難しいところは、指標化されたデータをもとに単にランキングを作成するのではなく、企業がどういう姿勢でブランディングを行っているのか見極めなければならないこと。このアワードの受賞対象を決めるにあたり、インターブランドは各企業が有する技術力、サービス、商品力はもちろんのこと、ブランドの価値をいかに構築するかの手法に注視したそうだ。

では、第1回となるJapan Branding Awards 2018の受賞企業をチェックしてみよう。ちなみにこのアワードは、賞の内容に理解を示した応募企業から選出される。Japan Branding Awardsは、特徴的な活動で成果を出した取り組みに贈られる「Rizing Stars」、応募企業の中で優れた取り組みに贈られる「Winners」、受賞企業の中で特に優れた取り組みに贈られる「Best of the Best」からなる。

まずはRizing Stars受賞企業について。受賞は2社で「B.LEAGUE」(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボール」と「一風堂」(力の源ホールディングス)だった。B.LEAGUEは、2リーグ分裂、国際バスケットボール連盟からの国際資格停止処分という難局を乗り越え、ブランディング活動に注力したことが評価された。一風堂は、ラーメン店にありがちな創業者気質から離れ、グローバル化を目的としたブランディングが着目された。

Winnersは「BANDAI NAMCO Enterteinment」(バンダイナムコエンターテインメント)、「Daiwa House Groupe」(大和ハウス工業)、「Yamaha Moter」(ヤマハ発動機)、「YOKOGAWA」(横河電機)の4社が受賞。バンダイナムコはバンダイとナムコの統合以降、企業理念が希薄だった。それを解消するためと認知向上のため、ブランディングに取り組んだ。大和ハウスは、グループ企業という強みを生かせず個々の事業にバラバラ感があった。それをひとつにし、強い経営体制を築くためにブランディングを加速させた。ヤマハ発動機は、2012年から取り組んでいる「Global Executive Committee」で、ブランドを主要テーマとした。その価値が向上しているかどうか、測定・定量化して、それを各事業にフィードバックしている。YOKOGAWAは、2015年に創立100周年を迎えたのを機に、事業を取り巻く環境の変化に対応するべく、ブランド再構築プロジェクトを開始した。

Rizing Starsを受賞した一風堂の戦略解説スライド
受賞者にはクリスタルのトロフィーが手渡される(写真はWinnersに授与されたトロフィー)

そしてBest of the Bestに選ばれたのが「茅乃舎」(久原本家)、「matsukiyo」(マツモトキヨシホールディングス)、「Panasonic」(パナソニック)、「Suntory」(サントリーホールディングス)の4社。茅乃舎は、グローバル展開に向けて社員が急増。社員増による自社のアイデンティティを失わないためにブランディングを強化した。マツモトキヨシは、2005年からスタートしたオリジナルブランドの認知度向上のため、ブランディングに注力してきた。Panasonicは、2013年から“BtoC”から“BtoB”領域に舵を切ったが、BtoB領域での認知向上を早めるためにブランディングに邁進した。Suntoryは、海外に広がるグループ企業に対しプレゼンスを強化することが課題になり、ブランディングを活用した。

茅乃舎ブランドでBest of the Bestを受賞した久原本家
オリジナルブランド、matsukiyoのブランディングが評価されたマツモトキヨシ

このなかから、受賞者の弁を紹介しよう。茅乃舎がなぜブランディングに注力したか。久原本家グループ本社 代表取締役 河邉 哲司氏は、「弊社は125年続く老舗ではあるが、本業である醤油製造だけでは、大きな成長どころか今後の継続も危惧される。そこで着目したのがブランドの育成。醤油以外の製品開発にも力を入れて、総合食品メーカーとしての認知を得た。福岡県の田舎の企業がブランドで活力を得る事例があれば、ほかの地方企業にもよい影響があるのではないかと思う」と話した。

また、審査にあたった一橋大学ビジネススクール 国際企業戦略専攻教授 阿久津聡氏は、「ブランド価値そのものは、一瞬で崩壊することがある。だが、ブランドを形づくるブランディング能力は社内で継承され、再活用が可能だ」と、ブランディングの重要性について語った。

最後に、このアワードの主催者であるインターブランドジャパン 代表取締役社長兼CEOの並木将仁氏は、「クリエイティブそのものを評価するのは簡単だが、企業のなかでブランディングがどのように進められているのか、見極めが難しい。だが、今回のアワードをとおして『チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ』という言葉が思い浮かんだ」と、本田宗一郎氏の言を借りて授賞式を締めくくった。

本田宗一郎氏の格言で式を閉めたインターブランドジャパンの並木将仁CEO
左から並木CEOとBest of the Bestの受賞者(左2人目から4人)、そして審査員の2人
NewsInsight 更新終了のお知らせ

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2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu