煽り受けども強気のソフトバンク、4割値下げより「4割人員削減」

煽り受けども強気のソフトバンク、4割値下げより「4割人員削減」

2018.11.06

ソフトバンクが2018年第2四半期決算を実施

渦中のサウジ問題ファンドは現状維持「まずは真相究明から」

通信料は「すでに値下げ済み」、4割減らすのは”人員”

11月5日、ソフトバンクグループが開いた2018年度第2四半期決算の説明会では、サウジアラビア情勢とそれに伴うビジョン・ファンドの行方、携帯料金の値下げ議論などに多くの関心が集まる中、孫社長が熱弁を振るった。

ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏

サウジ情勢などを背景に株価は下落傾向にある一方、営業利益は前年同期比で62% 増を達成。決算説明会に登壇した孫社長は、「来年には日本経済が体験したことのないレベルの営業利益を出せるのではないかと、内心思っている」と強気の姿勢を見せた。

すでに通信事業を上回った投資事業

孫社長は、冒頭でサウジアラビアでのジャーナリスト殺害事件に言及。「決してあってはならない大変な事件だ。強い遺憾の意を示したい」。

一方、サウジ側が約半分を出資する10兆円規模のビジョン・ファンドについて、「サウジ国民から資金を預かって運用しており、投げ出すわけにはいかない。今後の新たなものをどうするかは真相究明の後に考えたい」とも語った。世界が注目する中、「現状路線を維持する」と慎重な言い回しで切り抜けた印象だ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先は67社規模に

その中で孫社長は記者が殺害されたことから「ジャーナリズムや言論の自由への問題も提起した」と語り、会場に集まった記者たちの心情を代弁する一方、「話は大きく変わるが」と前置きしてソフトバンクホークスの優勝に言及。場の空気を変え、好決算に目を向けさせようとする話術が目立った。

NTTドコモやKDDIが通信以外の収入源を模索する中で、ソフトバンクが注力するのがビジョン・ファンドによる新規事業への投資だ。同社はAIを主体に多くの新興企業に投資する「AI群戦略」を進めており、すでにファンド事業による営業利益の合計額は通信事業を上回っている。

営業利益の内訳でビジョン・ファンドがソフトバンク(通信事業)を上回った

「4割値下げ」には「4割人員削減」で対策

2018年8月の菅義偉官房長官による「携帯料金は4割程度の値下げ余地がある」発言や、ドコモの「通信料を2〜4割程度値下げする」という発表で盛り上がる携帯値下げ議論には、「9月にSoftBankブランドで導入した分離プランで25〜30% 値下げ済みだ」と主張。Y!mobileブランドでも2019年上期に分離プランを導入し、1〜2割の値下げを見込むという。

ドコモが4000億円規模とした還元額に孫社長は触れなかったが、こうした還元を「減益の言い訳にはしたくない」と語り、ドコモを牽制。顧客還元を続けながら増益を狙うため、モバイル事業の人員を4割削減するとの方針を打ち出した。

背景には業務のロボット化がある。ソフトバンクモバイルの社内ではソフトウェア操作を自動化するRPAの導入により、事務作業の自動化を進めることで、これから2~3年をかけて通信事業の人員を4割削減し、ビジョン・ファンドが出資する新規事業に配置転換していくという。

通信事業の人員の4割を新規事業に配置転換

来たる「iPhoneが売れない時代」に向けて

携帯料金について孫社長は、「ギガ単価」の安さをアピールした。月間50GBの「ウルトラギガモンスター+」は、家族割引時に1GBあたりのデータ料金が80円にまで下がっており、「他社の半分か3分の1で、米国や欧州と比べても、世界でもっとも安い」と主張する。

ギガ単価は80円にまで低下しており、「動画SNS放題」でさらに4割安いという

ドコモやKDDIは提供していない、動画やSNSのパケットを無料化するサービスにも触れ、「無料の対象はトラフィックの43% を占めている。ギガ単価はさらに4割引きで比較されるべき」(孫社長)として、「実質4割値下げのインパクトがある」と語った。

一方、消費者からは通信料金が下がっても、分離プランでは端末の割引が受けられず、総支払額は変わらないとの声もあるが、「これまで高い端末を中心に販売してきたが、分離プランなら安いSIMフリー端末を含めて選択肢が広がる。実質的なコストダウンを図りやすくなる」(孫社長)とメリットを挙げた。

端末と回線を分離したプランをY!mobileも導入へ

分離プランでは端末が売れにくくなるが、もともと端末販売に利益はなく、減収となっても減益にはならないと孫社長は説明する。この影響を大きく受けそうなのが、ソフトバンクがこれまで売ってきた高い端末であるiPhoneだ。

かつてのiPhoneはソフトバンクが独占的に取り扱っており、ドコモとKDDIに対する挑戦者としてのソフトバンクを象徴する商品だった。だが、最近では「Pixel 3」の販売やAndroid One端末の展開でグーグルに接近している。もしかすると孫社長の目には、iPhone一強時代の終焉が見えているのかもしれない。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。